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◆月の籠◆



加護を受けながら自ら堕ちていったのは奴等なのに。
あんな下衆な輩の為に貴方が涙を零す事はない…そう言いたい。
けれどそれを口にすれば余計に雛を悲しませる事となる。
だから言えない…。


「─心…っ」
「!?…雛、さま…」


視線が絡んだと同時に雛は腕を伸ばし、そのまま首に絡んだ細い腕が満剣を抱き寄せた。


「…ころ…っ、俺…っ、ぇ…」


耳元で呼ばれる名前。
耳朶に触れる熱い吐息が理性を溶かしてしまいそうだ。


「……っ。大、丈夫です。私が…貴方をお守りしますから…」


泣かないで下さい…と優しく頭を撫で続け、ようやく雛は落ち着きを取り戻し満剣から体を離した。
不謹慎にもそれを名残惜しいと思いつつ満剣はハンカチで雛の涙を拭う。


「…ごめん…取り乱して…」
「いいえ。お気になさらずに…」


元々華奢な雛の肩が醜態を晒してしまった事で萎縮し更にそれを際出させる。


「戻りましょうか」
「うん…、ぁ…」


雛が頷いたと同時に始業を知らせる鐘が鳴り響いた。



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あきゅろす。
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