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◆月の籠◆



「あ!じゃあさッ、夏になったら皆でお祭りに行こうよ!で海も行って!秋には〜…焼き芋!冬はクリスマスパーティーに年越しに〜…」
「待て待て!またお前は。人の意見を聞かずに…」


いつまで続くか分からない梓の猛進を止めたのはやはり悠真だった。


「え〜悠真のイケズぅ〜!」
「気持ち悪い!」


態とぶりぶりと体を揺らす梓を悠真は押し退ける。


「じゃさ、夏祭りは一緒に行こうよ!五人で!ね?」
「確か『龍神祭り』…でしたっけ?結構有名ですよね」
「寧、知ってんの?」


─龍神祭りとはこの地で開かれる龍神を崇める祭。
その名を聞いた途端、雛は僅かに指先を震わせた。


祭の夜は新月。
月の隠れる夜は雛にとって『綾神家』から解放される唯一の日。

その日だけは龍神の力が弱まり、雛の姿が変わらない日でもある。



…─明確な約束は出来ない。


けれど、


少しの思い出くらい…欲しい。



「ね!行こうよ雛!」

至近距離まで顔を寄せた梓に雛は戸惑いながらも小さく頷いた。

その瞬間、花が咲くように梓の表情が綻ぶ。



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あきゅろす。
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