[携帯モード] [URL送信]

◆月の籠◆



「忘れてはいけません。これは『契約』です」


御簾の奥から響く、男なのか女なのか判別の出来ない透き通ったその声は、その場に居る全ての人間を魅了する。


「ち、誓います!」


脂ぎった中年の男はその声に我に返った様に慌てて答えた。



「ならば貴方に『龍神の加護』を…」


「ぁ、有難う御座います!有難う御座います!」

中年の男は床に額をぶつける勢いで何度も礼を述べる。




「…決して、忘れてはなりません。
貴方の心が欲に染まり、驕る様な事あらば、貴方は全てを失う…。

今より貴方は『契約』と云う名の薄い氷の上に立つのです」


ゴク…と男は息を飲んだ。


「笹山様…。『契約の儀式』は以上で終了です」


御簾の外に構えている青年に声を掛けられ、男は弾かれたように頭を上げた。


「姫様はお疲れです。申し訳ありませんが本日はお引き取り下さい」


「、わかりました。でわまた後日…」



男はへこへこと何度も頭を下げながら門を出た。

その門に表札はない。

だが政界に関わる者達に知らない者は居ない。


『綾神家』


それは『龍神』に愛される一族…。


.

[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!