◆月の籠◆ 弐 「…明日も…学校がありますし…今日はもうお休みになって下さい」 「……」 壊れ物を扱うかの様にそっと襦袢を肩に掛けられ、手櫛で梳かれた髪がはらりと流れ落ちた。 それは昼間とは全く異なる色…。 5歳から伸ばせと言われた髪は既に雛の膝近くまで伸びていた。 『髪には霊力が宿ります。初代龍神の神子であった雛菊様も、怪我や病を癒やす力をお持ちだったそうですよ』 ひいおばあ様がよく口にする言葉だ…。 体を清められる間、雛はそう思い出していた。 「雛様…御水を…。喉、乾かれたでしょう…?」 杯の様な入れ物に張られた水に自らの顔が映り、雛は顔を歪める。 紫の瞳は金色へ、白銀であった雛の髪は青銀へと色を変えていた。 ───気持ち悪い…。 『雛、綺麗』 耳の奥に残っている透夜の台詞…。 思い出すと胸が痛む。 「…雛様…?」 訝しげに呼び掛ける満剣の声にはっとし、雛は一気に水を呷った。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |