◆月の籠◆ 六 サワサワと木々を揺らす春の風が頬を通り抜けてゆく。 束ねた髪がフワリと揺れた…。 ふと、この四人が現れて一年が経つのだと思う。 一年前の入学式…とは言えこの明訪学園は中等部からの持ち上がりで、殆ど顔見知りなのだが…その中に見慣れない四人組が居た。 在校生、新入生が惚けたまま無意識に道を譲ってしまう程、この四人の容姿は秀でたものがあった。 その四人が何故か入学式の当日から雛に付き纏うようになって、最初は無視をし続けていたが一週間が経ち1ヶ月が過ぎる頃には、諦めにも似た感情で雛は折れたのだ。 どんなに無視しても、冷たくあしらっても、離れない…。 何故こんなにも面白味のない自分に好き好んで近付くのか、雛には全く理解できなかった。 「雛、これやるよ」 手のひらにフワリと置かれたのは、5センチ四方の小さな箱。 綺麗にラッピングされていて中身は見えないが恐らく飴か何かだろう。 彼が言うには四人で選んで一緒に買っているらしい。 燃えるような赤い髪に、炎を思わせる紅い瞳。 それがこの如月透夜と云う男の容貌だ。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |