花という名の無法地帯
Innocent HeartU(タケ準)
引鉄をひいた瞬間、
稲妻にも似た一筋の閃光。
砕け散った鮮血色の海が、
俺の任務の成功を告げていた。
Innocent HeartU
-side t-
「…タ、ケ」
扉を開いた準太はひどく無防備な姿だった。
シャワーを浴びた直後だったんだろう、艶やかな漆黒の髪からはぽたぽたと水滴が滴っているし、頬は淡い桃色に染まっている。
軽く見開かれた大きな瞳は少し驚いたような、それでいて妙に納得したような色を孕んで俺を映していた。
「…酷いことでもしに来た?」
「…どうだろうな」
そう言って、少し身体を横にずらして俺を部屋に招き入れた準太をそっと抱きしめた。
ドアの閉まる音がどこか遠くに聞こえる。
抱きしめた準太の身体は少し汗ばんでいて、甘い匂いがした。
「…タケ」
「…」
「…お疲れ」
小さく笑った気配と、
背中を軽く叩く手のひら。
準太の溜息混じりの労いに、俺はその身体を強く抱いた。
痛ぇよ、と準太は小さく呟いたが特に振り払うようなこともせず、俺の背中に腕を回す。
「………タケ、…」
少しの間を置いて、準太が小さく俺の名を呼んだ。
けれど、それ以上は何も言わず、俺の胸に額を押し付けて何やら迷っているようだ。
「…なんだ」
「…タケは…俺の…こと、…」
やっと顔を上げた準太は妙にばつが悪そうで、顰まった眉が可愛いなんて言ったら怒られそうだ。
「さぁな」
言うが早いか、俺は準太を抱き上げた。
簡単に持ち上がってしまった華奢な身体にもっと食えと言いたくなる、が。
今は好都合だ。
ベッドの上に転がした準太に覆いかぶさる。
準太の烏羽玉色の髪が真っ白なシーツに映えて、怖いくらいに綺麗だ。
俺を見上げた準太は数回瞬くと、不機嫌そうに目を細めた。
「さぁなってさ…」
うっすらと色付く目元、
少しだけ掠れた声。
「…タケは、誰にでもこういうことすんの?」
そう言って、俺を見つめる準太の瞳はビー玉に闇を溶かしたような鮮やかな黒の色。
はぐらかすことなんて、
どうして出来るだろう。
「しねぇな」
「………あ、そ」
聞いたら聞いたで、
顔を紅くする準太を愛しいと思った。
それでいて、
何も言わずに伏せられた準太の瞳を苦しいと思った。
いつのことだったか、
大切な人がいるんだ、
きっともう会えないけど。
そう言った準太の、
硝子細工のように脆い笑顔、
哀しいくらい穏やかな声音が忘れられない。
忘れようとも思わない。
叶わない想いだと知っている。
だから、
伝えるつもりなんてなかった。
けれど、零れてしまった本音は、もうどうしたって取り返せないから。
だから、今日だけは。
どうか我が儘を聞いて欲しい。
もう、絶対に、
お前の重荷になるようなことはしないから。
俺は準太の二の腕を押さえて、その薄い桃色の唇に噛み付いた。
瞬間、強張ったように感じた肩の力はまるで諦めたようにぱたりと抜ける。
唇を割って、歯の並びを舐めて、口のなかを犯しても、準太に拒まれることはなかった。
Fin
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タケのことは恋愛対象としては見てないけど、こういうことされても何だか嫌じゃない準さん。
うちのタケ準は何だか不思議な感じです。
イメージ的には動物同士の触れ合いというか、なんというか(何だ
何となくタケに申し訳ないような気がします、すみません。←
感想お待ちしてます!
2008*1022 玖瑠璃
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