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花という名の無法地帯
二律背反の君を説くV(阿部視点)


おお振り異世界パラレル
(第三者視点から概観する)
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二律背反の君を説くV


ウチは他よりも一癖や二癖もある奴が揃っていると思う。いや、一癖二癖と表現するのは多少語弊があるかもしれない。正しく言うなら面倒臭い、或いは触れてはならない過去を持っている奴が少なからず居るということだ。(水谷みたいなアホは別であるし、新規配属も数名は居るから一概には言えないのだが)
そもそも、この『西浦』自体が異質に違いなかった。新しく開発された中立特区である此処には、埼玉ブロックの内外からそこそこ腕の立つ奴らが何人か集められることになったのだ。こんな御時世であるから別の地区で戦っていた者同士で新たにチームを組み直すというのは危ない賭けであると俺は思ったのだが(数日前まで互いの命の取り合っていた奴らだ。実際に俺は花井を戦場で見掛けたことがあった)、中央の指令であるならそれも致し方ない。そもそも前の守護地区が壊滅してしまった俺にとっては、此処に身を寄せる以外の選択肢は残されていなかったのだけれど。(この『壊滅』の項目に対しては箝口令下であるため深く語ることはしない)
それに俺の予想に反して、なんだかんだ上手くやっているのだ。此処は。

そういえば最近、田島が花井に付き纏っている姿をよく見掛ける。
生まれたてのひよこみたいにピヨピヨピヨピヨ、構って欲しいって花井の後を付いて回っている。ガーディアンの地位を取り合うことになったせいか、花井は田島のことをそれほど快く思っていないような感があったけれど(これはあくまで俺の推測の域を出ない話であったが)、最近はそれなりに話したり構ったりしてやっているようだった。
花井は元来、面倒見の良い性格であるようだから、それが言葉を飲み込んでいる姿であるのか、それとも諦観に目を伏せた姿であるのかはわからないのだけれど、田島が閉口するほど嬉しそうであるから離れてやれとも言うことができない。
まあそろそろバディを決める時期であるから、チームメイト同士の仲が良いのは決して悪いことではないし、それに田島と花井は端から見ていれば存外に良い組み合わせだと思うのだ。例えば今、目の前で繰り広げられている光景が良い証拠だろう。
「たーじーまー!服着ろ服!」
「やーだーよ!だってあっちーじゃん!」
「自分のことより人様の迷惑を考えろって言ってんだ!」
「花井のイジワルー!」
風呂上がりなのだろうか、パンツ一丁で逃げ回る田島を花井が追い掛けている。まるで親子のような様子は見ていて微笑ましいと言えなくもないのだけれど、花井の心労は増えるばかりであるだろう。頑張れキャプテン。
「あっ、あべ、くん」
「お、何だよ三橋」
「阿部くんのカタナ、な、治ったっ、て!」
「もう?二本とも?」
「うっ、うん!篠岡さん、頑張ったって、言ってた!あと、いずみくんが、あべくん、診察に来ないって怒って、た」
「あー…」
うっかりしていた。これは手酷い叱責を受けるに違いない。ウチの軍医は腕は確かだが、非常に厳しい(寧ろ気が短い)で有名なのだ。
「早く、行ったほうがいい、よ」
「だな…」
俺の言葉に三橋が笑う。この三橋も前に居たチームでは余り良い思いをしていなかったらしい。そういう奴にとっては此処は確かに救われる場所であるのだろう、癖があるといっても良い奴らばかりであるのは確かだから。

まだ『西浦』は始まったばかりのチームで、これがどういう風に纏まるのかはそれこそわからないのだけれど、此処が永住の地になれば良いと思うのは、もしかしたら心が訴えているのかもしれない。どうか再び追い遣られることの無いように俺は祈るばかりだった。


(あの頃、確かに手に入れられるはずだった未来のカタチを、今も俺は捜している)



Fin
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ちなみに設定として、各地区の構造はほぼ一緒です。
第一層(地上)がチームメンバー居住区(基地)+通常居住区(普通の市街地)。
第二層(地下1階)が農産物・牧畜用のプラント施設。
第三層(地下2階)が緊急避難用プラント(特別居住区)です。

あと『ガーディアン』は野球でいう4番をイメージして下さると助かります。チーム内で一番強い人のことを言います。

このパラレルは何で早く仕上がるんだろうと考えたのですが、余りモノを考えずに書いているようです。趣味に走っているって恐ろしい。


感想お待ちしてます!




2010*0518 玖瑠璃

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