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空(助けられた猫のお話)
Celestial CatUB




色素が抜け落ちてしまったような銀色の髪が、夕陽に眩しく輝いている。


「飛段、角都さんは?」
「ちょっと出掛けてるぜ。あーだこーだと…うるさい先方サマがいてさァ、で、何の用?」
「先日の謝礼と…角都さんの好きな酒が入ったので」


鬼鮫が提げていた紙袋をデスクの上に置くと、飛段は助かった、と苦笑した。


「今日、角都さ、帰って来たら絶対に機嫌悪いからさ。どーしようかと…」
「?」


不自然に止まった飛段の言葉に、鬼鮫は彼女の視線を追う。


その先には、自分に寄り添うように佇むイタチが居た。


「…、あ」


鬼鮫が紹介するより先に、飛段はイタチの両肩を掴んだ。
突然のことに目を瞬くイタチにはお構い無しで、その顔をじっと見つめる。


そして、
にやりと笑った。


「かわいーじゃん。お前、いつの間に嫁さん貰ったんだよ?」


鬼鮫は飛段の発言に、数度、目を瞬かせた。
その言葉を噛み砕いて、漸く理解する。


「なっ、ち…っ、違いますよ!イタチさんには店の手伝いをして頂いているだけで…っ」
「そうかァ?」


愉快そうに喉を鳴らした飛段は、急に真面目な顔を作ると、更にイタチに顔を寄せる。


そして、小さな声で囁いた。


「あんな無害そうなツラしてたってな。男は皆、狼なんだからよ。気を付けろよな………イタチ」


ぱっと飛段から離れたイタチの頬が朱かったのは、きっと夕焼けのせいだけではないだろう。


「ちょっと飛段、イタチさんに何言ったんですか!」


慌てる鬼鮫を横目に、飛段はあっけらかんと笑ってみせた。


「女同士の秘密、だよな!」
「………」


イタチは少し困ったように眉を顰めて俯いている。


「…っ、用事は済みましたから、失礼しますよ、飛段…っ」
「おう、また来いよ、鬼鮫。イタチもな!」


鬼鮫は半ば強引にイタチの手を引いて事務所から出て行く。
鬼鮫に引かれて小走りになりながらも、イタチはその背に付いて行った。

その二人の背を見送った飛段は、一人、ぽつりと呟く。


「手伝い、ねぇ」


そう言った彼女は、腹の底から滲んでくるような笑いを噛み殺したのだった。



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「その…すみませんでした」


車に向かう途中で、鬼鮫がぽつりと呟いた。
夕暮れ時の土手、夕陽を受けた川の流れがキラキラと輝いている。


「どうして謝るんだ?」
「…飛段に何か言われてたでしょう、それに…嫁だとか…嫌だったんじゃないかと思って」


申し訳なさそうに頭を垂れる鬼鮫を見て、少し考えた後、イタチは頭を横に振った。


「嫌じゃなかった」
「いや…でも」
「鬼鮫」


イタチは項垂れてさえ随分と高い位置にある鬼鮫の頭をそっと撫でる。
見た目よりも柔らかい彼の髪に触れながら、小さく呟いた。


「…やろうか?」
「え?」


イタチは聞き返してきた鬼鮫の襟首を掴んだ。
彼の身体を引き寄せて、その耳元にもう一度、そっと囁く。


「結婚、してやろうか?」
「………は、い?」


ぽかんと口を開けた鬼鮫を見て、イタチはぷっと吹き出した。
それを見た鬼鮫は、真っ赤になって小さく息を詰める。


「…っ、や、やめて下さいよ!」
「ふふ…」


鬼鮫の手から逃げるようにイタチは一歩前に出た。
後ろで纏めている黒髪が動きに合わせて、流れるように揺れる。
鬼鮫は妙に恥ずかしくなって口を開いた。


「もう!イタチさ…」


しかし、次の瞬間、
鬼鮫は言葉を失った。


指先ひとつ、
動かせない。


燃えるような深紅の夕暮れ。

それよりも鮮やかな瞳を細めたイタチが、それはそれは楽しそうに微笑むものだから。


その、イタチが存在している世界の美しさに、紡ぐはずの言葉さえ見失ってしまった。



胸が熱い。

どうしてか、
泣き出してしまいたいような。


そんな感情を、
確かに感じていた。



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いっそ、この黄昏を切り取って、
永遠にしてしまうことが出来れば良かったのに、などと。


そんな馬鹿なことを、
願ってしまうほどに。


確かにそれは、

私の中で、

小さく綻び始めていた。



芽吹いた蕾は、

確かに花を咲かせるけれど。



その芽にすら気が付かない。



この時は、まだ。







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はい自重!(いきなり

書きたいこと詰め込んでたら、
こんな惨事ですよ!

でも仕方ないって!
管理人、イタチさんもにょたも猫も大好(以下略


てか、
飛段のキャラを掴んでません。

どんな人だっけ?(またか



というわけで、
まだまだ続きます!


時間の許す限り、
お付き合い頂けると嬉しいです。





2008*0622 玖瑠璃

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