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空(助けられた猫のお話)
Celestial CatZC




「…ずっと、祈っていてくれただろう?」



絶えず、絶えず。


幸せになること。

幸せであること。


朝も昼も夜も、ずっと。


他の誰でもなく、

どこかで生まれ変わるだろう、

俺のために。



聞こえていたんだ、ずっと。



イタチは目を伏せる。
そして、言葉を続けた。



「ただ、お前は少し思い違いをしているようだ」
「…?」
「俺の幸せは生まれ変わることなんかじゃない」


イタチは一度ふっと息を吐くと、ただ真っ直ぐに鬼鮫を見つめる。



「俺の幸せは、」



お前の傍にいることだ。



イタチは瞳を細めて、桃色の唇に弧を描いた。
その凛とした紅は煌めくような想いをはらんで、鮮やかに輝いている。
鬼鮫はその美しさに息を詰めた。



苦しい。

嬉しいのに、

言いたいことがたくさんあって、

声にもならない。



「もう、何処にも…」
「…行かない」


絞り出された鬼鮫の言葉は、情けないほど掠れていた。
けれど、そのぽつりと落ちた想いを拾い上げるようにイタチは彼の頬を撫でる。



「お前が望む限りは」



少し悪戯な響きを含ませて、イタチは微笑んだ。
再び彼女を引き寄せた鬼鮫は困ったように笑うと、高い位置にあるイタチの耳元に囁く。


「それでは…もう、他の誰かのところへは行けませんよ?」
「…いい」



それで、いい。



うっすらと頬を染めて答えたイタチは言葉にならないくらいに綺麗だった。
それを見た鬼鮫は沸き上がる衝動を抑えるように、そっとイタチの額に唇を寄せる。



もう、この人を離さない。


もう二度と、

離したりはしない。



絶対に、だ。



唇を離した鬼鮫は、自身の腕の中に収まっているイタチを見て、柔らかに目を細めた。


言い忘れていた、
大切な言の葉を紡ごう。



「おかえりなさい、イタチさん」



その言葉にイタチは少し驚いたようにその鮮やかな瞳を見開く。


そして、数瞬の後、

冷たい冬を越えた花の蕾が、
待ち侘びた春の日向に羽根を伸ばすように。


ただただ、
幸せそうに微笑んだ。








Fin
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はい、遂に、
完結いたしました!


長かった、激しく長かった。

6月に思い立って、
現在は9月ですからね。

…完結して良かった、本当に。


とにかく幸せなエンディングを目指してみたんですが、できてるかは微妙です。(コラ

違うよ!
幸せはこの後ふたりで築いていくんだよ!(いいこと言った!←


個人的には、ちゃんとイタチさんが帰ってきたので満足です。


本当に長い期間かかってしまいましたが、ここまで付き合って下さった皆さま、本当にありがとうございました!大好きです!!←


感想お待ちしています!




2008*0907 玖瑠璃

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