空(助けられた猫のお話)
Celestial CatYC
「…そう、か」
デイダラはふっと息を吐くと、
ぱさりと翼をはためかせた。
美しい衣を翻して、踵を帰す。
そして、
最後にもう一度、鬼鮫を見た。
「―…」
デイダラは小さく唇を動かすと、小さな鳥の姿になって空へと飛び立った。
再び動き出した世界の中で、
いまだ泣き続ける空を見上げた鬼鮫は、確かに聞こえた彼女の言葉を反芻する。
『願いはカタチになる』
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そう、だから。
目に痛いほどの青空の下で、鬼鮫は穏やかに微笑んだ。
初夏の熱風が髪をさらって、身体を撫でるように吹き抜ける。
私は願い続けましょう。
いつも、いつでも、
あなたが、
幸せになれますようにと。
あなたが、
幸せでありますようにと。
あなたが私を、
忘れてしまっていたとしても。
それでも構わないから。
いつも、いつでも、
あなたを想って願い続ける。
それが、
私とあなたの最後の絆。
鬼鮫はふと視線を落とした。
ケースの中には、数ヶ月前に漸く完成した酒が入った瓶。
透明なそれは太陽の光にきらきらと輝いている。
「さて、そろそろ―…」
瞬間、鬼鮫の足元を何かが転がるように駆け抜けて行った。
黒い、影。
鬼鮫は息を呑んで、その物体を目で追う。
「…っ、!」
黒猫、だった。
「…た、ち…さ…!?」
驚くほどに掠れた声。
まるで壊れてしまったように高鳴る心臓の鼓動。
振り返った黒猫。
鬼鮫を見つめるその瞳は、
金色、だった。
その黒猫は尻尾を一度振ると、鳴き声ひとつ上げずに塀の向こうへと消えていった。
足元が、
崩れていくような、
そんな気がした。
鬼鮫は店の入口に寄り掛かって、そのままアスファルトの道路に腰をつく。
汗の滲んだ額に掌をあてると、震える唇をきつく噛み締めた。
嘘だ、本当は。
あなたが幸せなら、
それでいいなんて嘘だ。
本当に、自分は汚い。
わかってはいるけれど。
私は、あなたと一緒に、
この空を見上げていたかった。
私はずっと、あなたに、
傍に居て欲しかった。
ずっとずっと。
一緒に。
目頭が焼けるように熱い。
震える息を噛み殺しながら、鬼鮫は自分の膝頭に目を押し付けて、込み上げてくる感情のままに。
ただただ、泣いた。
Next→Z
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長いって!
本当!読んでて疲れちゃいますよね、てへ!(てへ、じゃないよ
はい、ほとんどの方がもうお気付きだと思いますが。
うちのデイちゃんは、
イタチさんが大好きです。
てか、基本的に、
うちのイタチさんは皆から愛されています。
ええ、自分、
イタチさん大好きですから!(何
物語も遂に次で終章です。
どうぞ、時間の許す限り、
お付き合い下さると嬉しいです。
2008*0814 玖瑠璃
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