[携帯モード] [URL送信]

present for you
金の少女 1
!注意!
このお話は「銀の少年」の続編です



 ミィは少しずつ、泣かなくなった。

「セイちゃん!」

 笑って駆けてくるミィを見る度、可愛いと思う。
 もしかしてと期待すればするほど、愛おしくなる。

「ミィ」

 名前を呼ぶことがしあわせだと、思うのに。
 ミィがさりげなく差し出したてのひらに、気付かないふりをして、僕は手をポケットにしまいこむ。
 このつめたさを、知られることが怖かった。
 ぬくもることのないこのてのひらを。
 ミィは淋しそうに微笑んでその手を引っ込めた。
 しばらく黙って歩いてから、ミィは意を決したように僕を呼ぶ。

「セイちゃん」

 くりんとした大きな瞳で、ミィが僕を見上げる。

「なあに」

 僕はにっこりと笑った。

「セイちゃんと手えつなぎたい」

 まっすぐな瞳で、ミィが口にした。僕は少し惑う。
 知られたくない。
 このてのひらのつめたさを、
 このからだにぬくもりのないことを。
 ……だけど、触れたかった。

「――ミィ、ぼくは、」

 立ち止まって呟く。つられるようにミィも止まった。

「ぼくは……」

 何を言えばいいのだろう。
 僕は人間ではないと? このてのひらには、からだには、わずかのぬくもりもない、と?
 受け入れて貰える保証もないのに。

「セイちゃん……」

 まっすぐに僕を見上げるミィの瞳が悲しく濁る。
 期待しているぬくもりが降らない悲しさに、切なさに。

「――ミィ、ぼくは、」

 それだけは見たくなくて、思わず口を開いた。

「ぼくは、……きみがすきだよ」
「セイちゃん」
「でもぼくは……、ぼくの、手は」

 ポケットからとりだした僕の右手は、人間らしい、とても人間らしい、てのひらだった。
 けれどかすかなぬくもりさえない。

「――つめたいんだ。ぼくは……ぼくは、きみにあたたかさをあげることはできないんだよ」

 そのことが、ただ単純に、悲しかった。
 ミィは不思議そうに、僕の手を見つめる。
 触れてしまえば戻れない気がして、だから触れる前に、告げた。

「ぼくは、人間じゃない……」

 呟くように、告げた。
 ミィは呆然として、それをきいていた。
 僕は黙って、待つ。ずっと待つ。
 ミィの言葉を。
 決断を。

「セイちゃん?」

 心底不思議そうに、ミィは僕を呼んだ。
 僕はミィを見れなくて、手ばかりを見ていた。



[次へ#]

1/2ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!