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大学生と講師のシリーズ
昼前の二人(4年9月) 1

 昼までは、そう、長い時間ではなかった。
 素早くチェックポイントをまわって、時間を残して遊ぶ、という点において、二人の考えは一致していた。美加も早智子も、携帯電話のネットをうまく使って、ロスのないようにあちこちを見て回る。

「次は?」

 尋ねる美加の声に、早智子は携帯電話を開いて、時間を確認する。なんとか日程の半分をこなしていた。

「んー……」

 早智子は、うん、と勢いをつけてから話し出す。

「昼には早いかも……でも、次の場所見てから昼なのもキツイかな」

 美加が鞄の肩紐をかけ直し、呟く。

「昼かー……」

 それから、美加は不意に笑った。

「……ねえ、もうさすがに離れてるよね」

 ひどく楽しそうな、揶揄する声音で美加が言う。

「え?」
「松下」

 じわりと頬が熱を持つのを、早智子は感じた。

「ああ……うん、そうだね……」

 迎えに、と言ってから、二時間近くが経っている。中村がグループと合流出来ていておかしくはない時間だった。

「だからさー、呼んでみない?」
「……え?」
「昼飯ぐらい一緒に食えって、彼女権限で呼び出してみようって」
「……よくそう色々考え付くね、美加」

 早智子はふふ、と、笑う。美加は呆れたように肩を竦める。

「あんたは考えなさすぎなのよ」
「えー?」

 半ば苛ついた声で美加が言い捨てる。早智子は苦笑した。

「電話するよ、いい?」

 美加は本気らしかった。早智子は苦笑したまま首を振る。

「かけないでよ」
「何で」

 美加の問いかけに、小さく首を傾げ、早智子は何の根拠もない直感を口にする。

「多分……あの子まだ、一緒にいるよ」
「は!?」
「勘だけどね」

 根拠も、証拠もない。
 けれど朝の出来事全てがはじめから計算されていたことだとしたら。

(そんなに簡単に、)
(離れるわけ、ない)

 実際には、どこまでが計算されていたことなのかはわからない。
 けれど、美加に事情を聞く限り、携帯電話も財布もない彼女を、松下は放っては置けない。
 中村が携帯電話を持っていなければ、グループの側から連絡が来ない限り合流は出来ない。
 他力本願である限り、中村に落ち度はないことになる。

「多分あのグループの子たちは、松下に連絡なんてしないわよ」

 あの、にやついた笑いを思い出す度、それは確信に近付いていく。

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