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大学生と講師のシリーズ
いつかを待つパートナー(4年7月) 4

 美加は一瞬探るような瞳を早智子に向けたものの、何かを訊くことを、躊躇ってやめたようだった。
 美加は応援する、とも、頑張って、とも言わなかった。どうして言わなかったの、とも。
 美加の、その馬鹿正直さが好きだ、と早智子は思う。

(見られたのが美加で、)
(よかった)

 早智子は美加にかすかに笑いかける。

「……付き合ってる、よ」
「えっ……?!」

 早智子の方を見たままだった美加は、信号が青になったことに気付かなかった。パアッと後続車からクラクションが鳴らされ、美加は慌てて車をスタートさせた。

「え、でも、なんで……、」

 前を向いたまま、美加が呟く。早智子はくすりと笑った。

「だって訊きたかったんでしょ?」
「あー……うん、そりゃもう。え、何、見え見え?」
「うんもう丸見え。スケスケ」
「スケスケってあんた……」

 くくく、と美加が笑う。早智子もつられて笑った。
 互いにひとしきり笑ったあとで、信号でまたとまると、お互いに顔を見合わせた。
 早智子はしずかに、口を開いた。

「……いつから黙ってたの」
「テストの前日。……私がそんなに我慢できるわけないじゃん」
「……そうね、テスト入ってから初めて会ったのよね、今日……」

 少しだけ呆れたように苦笑してから、早智子は続けた。

「……、ちゃんと、話すよ」
「うん、」
「なるべく、近いうちにさ」
「うん、気長に待ってるけど」

 信号が青になる。今度は見逃すことなく美加が車をスタートさせた。

「で、いつから、付き合ってんの?」
「……」
「どこまでやったの?」
「……美加?」
「どっちが言ったの?」
「……全然気長じゃないし……」

 くくく、とまた、美加が笑う。早智子も笑った。気持ちが、良かった。

(先生、)
(わたしね、……)

 言えるときが来たら、美加には言うつもりではいた。
 それを待たずに美加に告げてしまった自分は浅墓だったかもしれない。けれど。

(ひとりじゃなく、待ちたい)

 いつかを待つなら、ひとりではなく、一緒に指折り数えてくれる人がいたのなら。

(だから、)
(ゆるしてね)

 美加となら、それができそうな気がした。
 静かに、美加からの問いかけに回答をつくりだしながら、早智子はそんな風に思った。



091124
旅先で何をしてるのかと自分で思いながら更新しています…(笑)




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