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27 冒涜的行為





今思いおこせば、今朝から少し僕はおかしかった。
ここ最近は寝つきが悪く、寝れたとしても恐ろしい悪夢を見るようになった。
あのマオ、というナナリーをさらった男を捕まえたその日から。
消える事のない僕の罪を、まるで嘲笑うかのように、形なき人が僕を取り囲んでくる。
黒い、黒い暗黒の中、僕はただ無我夢中に一筋の光を探していた。

いつもなら闇雲に探すだけで、夢は終わる。もがいて汗だくになって目が覚める。
けれど今朝は違っていた。僕は夢の中で彼を、見つけた。
何故か声が出せない僕は、心の中で必死に彼の名を呼んで、走って近づいた。
抱きしめたくて、この腕に抱きたくて、僕は手を伸ばした。
けど、もう少しで彼に触れられる、その時。
彼は口を開いた。 その瞬間、僕は凍りついたように身体が動かなくなった。

「スザク、お前は偽善者だ」

伸ばしたままの手は、硬直し、自分だけ、時が止まってしまったかのようだった。
けれど、彼の言葉はぬるりと耳に入り込んでくる。

「人を救いたい、殺したくないと言いながら、だが実際は人を殺すために任務を全うしている」

ルルーシュ…?

「そしてお前は俺が知らないところで、過去にまた人を殺しているじゃないか」

どうして……僕は…!

「どうしてそんなお前がゼロに対してあんなことが言えるんだ?」

止めてくれ…止めろルルーシュ!

「スザク、お前はこの世界を変えるべき人間じゃない。お前は、ここで」

漆黒に溶け込む彼は、不思議とそのアメジストの瞳だけが輝き、僕を射抜いて。

そして銃口を向けた。

「……ルッ……!!!」

「さようならスザク。俺はもうお前を愛せない」



銃声が、暗黒の空間に響いた。








目が覚めたスザクはいつも以上に汗をかいていることにまず不快感を覚えた。
そしてぼんやりと顔を横に向けると、もがいた所為なのか、掛けていた布団は全てベットの下に落ちているのが見えた。
息はあがり、心臓が激しく脈を打っている。
ぼんやりとそのまま時計を見ると、もう起きなければならない時間だった。
気だるい身体をゆっくりと起こし、スザクは洗面所へ向かった。


学校でのルルーシュは、いつも通りだった。
朝は少し言葉を交わし、一緒に授業を受け、放課後は生徒会で仕事をこなす。
もちろん、今朝見た夢のことはスザクは誰にも話はしなかった。
寝不足で身体が酷く疲れていても、表情には出さないようにした。
クラスメイトにも、生徒会の人々にも、感づかれはしなかった。
けれどやはり体力面と精神面で重圧がかかった身体は参ってしまっていて、ふとした瞬間に小さくスザクは溜息を漏らしていた。
誰も居ないところでは額に手を当てて、身体が少し熱くなっていることを知った。
もしかしたら少し微熱が出たかもしれない。

そして放課後。
生徒会の仕事も終わり、今日は軍の仕事もなく、まっすぐ帰ろうとした。その時。

「スザク?」

凛として、透き通る声が耳に入った。
あの時も同じだったと、思い出してすぐにその考えに栓をした。
もちろんその主が誰なのかはわかる。スザクは、疲労した身体を立て直して彼に向かった。

「ん、何?」

何気なく返事をしたつもりだった。 しかし、彼は呆れた、とばかりに溜息を一つ吐いてスザクに歩み寄った。
その行動にスザクは一瞬驚き、少したじろいだ。けれど彼は優しい声色で。

「大丈夫か?お前、今日何だか顔色悪いぞ」
「え、」

彼は少し不安げな顔つきで、スザクの頬に手を添えた。そのまま手の甲で耳の下辺りを触り、さらに額に手を当てた。

「体調、悪いのか」

彼は優しくスザクに声を掛けた。彼は本当に心配そうな顔でスザクの返答を待っていた。
スザクは彼の優しさに内心安堵していた。緊張していた心がほぐれていくのを感じる。

優しい、いつものルルーシュ。
そう、僕が大好きな…。



「んん。大丈夫だよ」

スザクは思わずそう答えてしまった。

「そうか」

その返答に彼も少し安心したのか、体温を確かめるために額に当てられていた手を離した。
彼の手のぬくもりが恋しくなって、その手を掴んで止めようとした。
しかし、その次の瞬間に、心が凍りつき動きを止めた。

離れた掌、そして背けられた瞳。

先刻まで自分を映していた綺麗なその瞳は、一瞬下方を見ると、一つ瞬きをした。
瞼を上げた時、見えたその瞳は、残酷なほど冷たかった。

スザクはその変化を見た途端はっとした。
そして一瞬しにして遠くに行ってしまったような彼をどうにか食い止めようと考えをめぐられた。
頭痛が襲う。そして身体の底から熱い何かがふつふつと湧き上がる。

考えても、考えても

「ルルーシュ」

想うのは彼ばかり、で。

スザクも一つ瞬きをした。

「スザク?」

スザクに背を向けて歩き出そうとした彼が振り向く。その行動で舞う黒髪の美しいこと。
スザクは彼の目を捕まえた。

「抱かせて」

しかしその瞬間、彼の瞳が動揺を見せた。それを見てスザクはきゅ、と眉をしかめた。
湧き上がる何かは止まりそうにない。

「今日、は…」
「だめなの?」

スザクは、自分の声が驚くほど低く、掠れているといるのがわかった。
しかしその声が欲にまみれた男の声だということはわからなかった。
彼はスザクの声に少し怯えているようだった。そんな彼に何故か苛立つ。

「いや。俺の部屋、行こう」

そう言って二人は共に歩き出した。スザクが彼の腕を掴んで催促する。
誰も居ない廊下に、間隔の短い靴音が響いた。



ああそう。わかっている。
いつだって僕は君の事を考えている。想っている。
身が焦げてしまうののではないか、という程。
けれど、いくら想ったって、君の身体を掻き抱いたって
僕は、君の心を見通すことなんてできないんだ。
君がそうやって時折冷たい眼を見せるから、君が独りでどこか出かけてしまうから、君が僕に秘密を持つから。
僕はどうにもできなくなってしまうんだ。


切ないよ、苦しいよ。でもどうすれば。
僕は不器用だから、その術を知らずに君を……。



日はまだ沈みきっていなかった。濃い橙色に街全体が染まる夕刻。
いつもなら月明かりで不思議に発光するルルーシュの身体は今日はオレンジ色に染まり、下腹部の窪みや薄く浮かぶ肋骨に綺麗な陰影を作っていた。
ルルーシュは自室のベットの上で大きく脚を開かされ、その間にスザクが割り込み、羞恥からか脚を閉じようとするルルーシュの行動を身体で阻止していた。

「濡らして」

スザクはルルーシュの顎を掴み、開かせ、半ば無理やりに自分の指を入れた。
口腔内をまさぐるように動かし、ざらざらとした舌の奥を刺激した。
すると、口腔内に唾液がじゅん、と溢れた。
ルルーシュの唾液腺が刺激され、生理現象を起こしたのだ。

「ふ…んぅ……」

くぐもったルルーシュの苦しげな声がスザクの耳を犯した。それをもっと、もっと聞きたいと思ってしまう。
ルルーシュは己の舌を動かし、スザクの指に唾液と共に絡めた。
舌と指の動きによって時折くちゅり、ひちゃりと卑猥な水音が口腔内から漏れる。
ルルーシュは眼を瞑り、ただただひたすらに唾液を絡めた。

やがて十分に指が濡れたことを確認すると、絡ませられた指をほどき、スザクは唾液の糸を引きながら
ルルーシュの口腔から引き抜いた。そしてそれが乾かない内にスザクはルルーシュの後腔に指を突き入れた。
人差し指と薬指で左右の肉を押し開き、一番長い中指を腫れぼった熱い内壁に挿入し、唾液を塗りつける。
入り口付近にはしっかりと塗り、どろどろになるまでほぐす。
そしてある程度粘膜がある腸の奥は指で撫で回し、緊張を解いていく。
スザクの指が内壁に触れる度、ルルーシュは腹筋と脚をぴくぴくと震わせた。

喘ぐ身体全体は綺麗な夕焼け色に染まっていた。

「ぁ…あ…ぁん…っ」

先ほど引き出された飲み込みきれない程の唾液がルルーシュの口端を伝い、シーツに垂れていた。
うつろなアメジストの瞳は焦点が合っていないようだった。
快楽に程よく彼が溺れたのを確認して、スザクは中指だけだった指を一気に三本に増やし、ばらばらに動かした。

「あ…っ、は…」

縦横無尽に動く指がやがてルルーシュの内壁のごく浅いところにある少し膨れた前立腺に触れると大きく開いた脚が宙をもがき、身体全体を震わせた。

「あ…ここだよね。ルルのかんじるところ…」
「あっ、あ…ひぁ…っ、スザ…ぅ…」
「いいよ、そんなにイイなら…もっといじってあげる…」

感じるルルーシュはあまりにも可愛い。いつものあの冷静で、寡黙で、少し近づきがたい彼とは違う、無防備な彼の本当の姿。
もっともっとその声が欲しくなり、スザクはルルーシュの脚と脚の間に挟んだ身体を屈ませてルルーシュの耳朶を食みながら重点的に人差し指で前立腺のしこりを突いた。
途端に泣き声のような嬌声がスザクの耳を間近で心地よく刺激した。

「あはっ…あ、あ、あぁー…っ」

やがてルルーシュが腸からの直接的な刺激に耐えられず精を吐き出すと、スザクは一気に挿入していた指を
抜き取り、後腔が口を閉じない内に己の性器を突き立てた。

「あぁ……あ、あ! い…待…ッ!!スザク……ッ!」

息が上がって 苦しそうなルルーシュを無視してスザクは性器をさらに奥へ奥へと挿入させた。

「ん…」
「はぁっ、は…ぁ…、息…苦し…っ…!」

次々に襲い来る快楽の波にルルーシュは苦しげに喘いだ。
目からは生理的な涙がぽろぽろと零れ落ち、唾液と共にシーツを濡らした。
スザクは両脇にあるルルーシュの細い脚を肩に担ぎ上げ、勢いをつけて律動を開始した。

「あっ、あーっ…!ひ…っ…!スザ…どうして…っ…!!」
「何」
「どうし…、そんな…、あっ…ん、激し…やめっ…!」

ルルーシュは喘ぎの間に精一杯訴えかけた。いつもと違う、と。
脚が担ぎ上げられ、腰が浮いた状態での情交。こんなにも荒々しく腰を打ちつけるようなスザクは初めてだった。いつもならどこか遠慮深く、慎重なスザクが。

「痛いの?」
「あ、痛くは…な、い。…こんな体位…どこで…」
「ちょっと前にネットでね」

スザクの声は低く、掠れていた。不安げに、どこか怯えて、けれど甘い欲情を秘めたいつものスザクとは
あまりにも違った。まるで今からルルーシュを本当に食わんとするかのような強烈な瞳がそこにあった。

「あ…、あっ、うぁ…、やめ……ろ…」
「気持ち、よくないの?」
「スザ…ク…?」
「僕、だから…?」

スザクは律動を止め、つぶやくようにルルーシュに話した。

「スザク、お前…」
「僕が、君を…好き、だから…?」

途端、スザクの身体が震えだした。




怖いんだ。ルルーシュがあまりにも綺麗だから。
あの時、抗えない僕の罪をルルーシュが知ったとき、
僕は自分がどれほど汚いものだかわかった気がするんだ。
隠し、隠されてきた己の罪が、君を見て。
僕はその罪にどう向き合うべきか、まだわからないんだ。

軍に入っても、学校に行っても、誰かを守ろうとしても。

ただ、荒れ狂う激情を身体で君にぶつけることしか。






「ごめん…っ」

スザクは泣いていた。
担ぎ上げていたルルーシュの脚をゆっくりと降ろし、己の手で顔を覆った。

「僕は…君を…っ」

かすかな嗚咽を漏らしながらスザクは必死に自分を探した。
日は、時の流れに沿い、落ちて部屋の中はすっかり暗くなっていた。
涙は堪えても堪えても溢れ出した。あらゆる感情がスザクを支配し、混乱させていた。

「ごめん…、こんな、こんな…っ」

胸に突き刺さるようにして襲ってきたのは罪悪感。そして直後、今度は孤独感がスザクを一気に包み込む。

「ごめん…っ、ルルーシュ…っ!」

あやまってもどうしようもないことなどわかっているつもりだった。
けれどもう、スザクはルルーシュの顔が見れなかった。ただただ彼の前で嗚咽を漏らすしか。


しばらくの沈黙。けれどそれを切り開いたのは彼だった。

「……好きだよ、スザク」

顔を覆った手に触れた柔らかい唇。スザクはおどろいて手を除けると、今度はその唇に触れた。

「好きだよ」

優しい声はスザクを浄化するかのように響いた。見ると、ルルーシュはスザクの顔の前で美しい笑みを浮かべていた。
神々しい、白い笑みだった。

「愛してる」

スザクの深緑の瞳からぽろぽろと涙が溢れ続けた。それを見て、ルルーシュはまるで子供をあやすように
額に軽くキスをし、ふわりとスザクを包み込むように抱きしめた。

「大丈夫だ。スザク」

ぽん、ぽんと背中を撫でるように叩かれる。
肌に感じるルルーシュの体温が心地よくて、スザクは一時泣くのを忘れそうになった。

「無理をするな。ゆっくりと休め。俺はここにいるから…」
「あ…」
「大丈夫」

スザクは、ルルーシュの首筋に顔を埋めながら、一気に眠気が襲って来るのを感じたが、それに抵抗をしなかった。
久々に心地よい眠りがスザクを包む。 ゆっくりとまぶたを閉じた。




ああ、ルルーシュ、君は。
どうしてそんなに美しく笑うのだろう。
僕はその笑顔にいつも泣きそうになるのに。

僕を離さないで。捕まえていて。

僕は君を捕まえられないから。


女神のような君愛す。その罪を、俺は。











>>ぐたぐだだねorz
2007.2.20 踏桜
2007.7.7 加筆修正




あきゅろす。
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