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THE BROKEN CONCERN







僕がルルーシュに出会ったのは、9歳の時だった。その時の記憶は今でも鮮明に残っている。黒いスーツを着た、何人もの大人に連れられやって来た少年。まるで日本人のような、否、日本人より美しいかもしれない黒髪と、白い肌を持ったとても綺麗な少年だったというのを覚えている。しかし僕は何より、連れてきた大人達に向けて子供とは思えないような怒りのこもった眼差しを向けた、警戒心むき出しな宝石のような美しい紫眼に、一瞬にして虜になってしまっていた。黒と白と紫の高貴なそのコントラストは、日本人にはありえない美しさ。僕は、広間に座って父と話をする彼を廊下からじっと見詰めていながら、いつの間にか目を離せなくなっていた。 やがてルルーシュがその視線に気づき、誰ですかと父に聞くと、父は僕を見て、あれがスザクだ、と答えた。その時まで僕は彼がどうしてこの屋敷に来たのか知らなかった。そして父はこう続けた。

今日から君らは兄弟だ。と。




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「っあ、あ、…スザク………あっ、……!」
おかしい、おかしい。これは禁忌だ。
兄弟という枠で括られた僕らの絶対的な関係は、今、僕らの感情で打ち砕かれてしまっている。つまりこれは離別だ。だが僕らは結局それをずっと望んでいるのかもしれない。この壁が払われること、打ち砕かれること。僕らの関係が終わることを。

互いが互いを求め合い、求めるがまま、求められるがまま縦横無尽に己がルルーシュの中を蹂躙している様は、その禁忌的な行為という状況も相まって、少なくとも僕らを酷く興奮させている。止まりそうにも、止まれそうになかった。いけないと知っていながら自分の欲望に勝てない自分が激しく腰を震う様は端から見たらどう映るのだろうか。。
「スザク……ああ、あ、あっ」
仰向けになり、白い素肌を僕の動きに合わされるがままゆらゆらと揺らすルルーシュは、ひたすら僕の名を呼び、もっとと請うている。下腹部からは断続的に厭らしい水音が響き、ルルーシュの全身も汗や白濁液や涙でどろどろに濡れて、揺れる度にとろとろとシーツに垂れては染みを広げていた。視界に入るルルーシュの全てが扇情的で、僕はまるでセックスを覚えたての少年のように、時々酔狂のように首を後ろに反らしながら、身体に感じる全ての快楽に溺れていた。
「スザ……も、お……ああっ!」
こり、とルルーシュの中に埋め込まれた性器が感じる場所を掠めると、彼は今宵もう何回目ともわからない絶頂を迎えた。身体と身体の間にあるルルーシュの性器からは薄く、さらさらとした精液が吐き出された。
「は…はぅ…。ん…、スザク……まだ…」
「うん……」
絶頂の余韻に身を震わせながら、ルルーシュは未だ僕が達していないことに気づいたらしい。すると、ふと一瞬微笑んだ後小さな声で「いい」と呟き、僕の背中に手を回して身体を引き寄せた。その言葉と行動の意味を理解した瞬間、僕の中で冷めさせようとしていた身体の熱が一気に上昇したのがわかった。僕はきゅ、と唇を噛み締めながら焼き切られた理性を繋げようともせず、今度は先程より激しく腰を使い、自分の絶頂を目指した。
「うぁ…あ!あ、はぁ……あ!」
絶頂の余韻の消えないルルーシュの身体がびくびくと大きく跳ねていた。僕は、激しく腰を打ち付けながら、震えるルルーシュの身体をぎゅ、と抱きしめた。細く、美しい身体。どくりと胸と下腹部が疼くのを感じる。一気に絶頂へと駆け上がろうと僕は彼の身体を掻き抱いた。どんどん間隔が短くなっていく水音、悲鳴のような啼き声。ルルーシュが大きく首を反らして叫んだその瞬間、僕は精液を彼の胎内に放ちながら耳元で呟いた。
「好き………っ、ルルーシュ…!」
こんな時でしか告白できない自分の愚かさに苛立ちを覚えながら。




+++++




「すきだよ……ルルーシュ…」
ルルーシュはついに意識を飛ばしてしまった。未だ僕の性器をくわえ込んだまま、シーツに青白くなった身体を埋めるルルーシュを冷静になって眺め、身体の熱が冷えていくのと同時に、激しい孤独感を感じていた。身体は繋がっているはずなのに。
「っ、だめだ……!」
僕は首を横に振り、心にざわついた思いをかき消した。

僕らは兄弟だった。あの日、初めて出会ったその時から。その時から僕とルルーシュは見えない鎖で縛られていた。同時に壁も存在していた。 鎖で縛られているのに決して縮めることが出来ない互いの距離。僕はルルーシュを守りたいと思っていたのに、彼に求められ浸入し、その壁を取り去ったと錯覚している自分が確かにいた。 ルルーシュに求められた時、僕の身体は少なからず歓喜に震えていたのだ。たとえ身体だけの関係でしかなれなくとも、僕はルルーシュを抱くことに悦びを感じていた。いけないとわかっていながら。

好きだ、と初めて言ったのは、ルルーシュを初めて抱いた日だった。今宵と同じように、二人が共に解け合う瞬間にそっと。…きっとルルーシュには聞こえていない。

浸入し続けていた性器を抜いた瞬間、涙が溢れた。これは孤独感に対する涙だった。何回も抱いたのに、何回も繋がったのに。離れることが寂しい。こんなにも恋しい。けれど僕らは兄弟だから。

ルルーシュと僕、ブリタニアと日本。ありえない。ありえない感情。

「スザク……」
掠れた、弱々しい声が沈黙を裂いた。じんと、痺れる頭を前に向けると、うっすらと目を開けているルルーシュが見えた。けれどそれもぼんやりとしていて、まるで本当に目の前に壁が間にあるように見えた。 名前を呼ばれても、僕の口が開くことはなかった。
「スザク……どうして」
泣いているんだ、と聞かれても、もう答えるつもりはなかった。答えてしまったら、それはルルーシュに自分の醜い欲望をぶつけるだけになるだろうから。 ルルーシュには、いっそ僕を押しつぶして欲しいと思った。
「……ちゃんと、言ってくれないんだ…」
けれど、ルルーシュの問いは僕の予想とはまったく違うものだった。僕は、思わず閉ざしていた口を僅かに開けて、え、とルルーシュに聞き返してしまった。逸らしていた目をルルーシュに向けると、ルルーシュは、痛々しいまでに涙で腫れた目を細め、形の良い唇をゆっくりと結び、微笑んでいた。
「ルルーシュ…?」
愛しいはずの人の名を呼んだ。声が震えていた。 ルルーシュは仰向けで寝ていた身体をゆっくりと起こし、ベットの上で僕の目の前に、同じように座ると、その白く細い腕をこちらに差し出してきた。僕は瞬間、子供の時に感じるような恐ろしい感覚を覚え、びくりと身体を震わせながら少し後ろに背を反らした。顔に近づいてくるルルーシュの手から逃れるように。
「ひっ……」
自分でもわからない、この恐怖感。目の前に居るのはルルーシュなはずなのに。怖い。目から涙が再びこぼれた。ますます醜いと思った。ついに耐えられず、僕はきゅ、と目を瞑った。けれどその瞬間に思い出した。これは、似ていると。

ふわり、と顔を優しい手で包まれ、僕は目を開けた。息も感じるほど近くに、ルルーシュがいた。
「俺も、スザクが好きだ」
さっきよりもずっとずっと、その距離は近くなっていた。


僕がルルーシュに恋心を抱いたのは、誓いを立てたとき。 まだ何もかも幼かったある日、ルルーシュと僕が街に買い物に出たときのことだった。ふと目を離した隙に、ルルーシュが僕の側から消えてしまった。慌てて来た道を戻ると、僕は山道で土まみれになってうずくまる、ルルーシュを見つけた。 ルルーシュはブリタニア人というだけで、日本人からは酷く差別を受けている。それを知っていて僕はルルーシュを護衛する意味で一緒に行動をしてきたのに、僕はルルーシュを守ることが出来なかった。ルルーシュは全身を殴打されたらしく、酷く苦しんでいた。それでもルルーシュはナナリーを心配させたくないから帰ってからも平然を装うと言い、僕に少し微笑みかけた。だから心配そうな声を出すな、と言いたかったのかもしれない。けれど僕にとってその笑顔はルルーシュにとってとても美しく、同時に儚く見えて。いつの間にか僕の心はルルーシュを守れなかったという後悔でいっぱいになっていた。悔しくて。悔しくて。そして彼をこの手で守ろうと心に誓ったのだ。…あの時の気持ちと涙は、ずっと僕の中の心の闇として残っている。

「だめだよ……」
罪人は自分だとわかっている。僕はルルーシュの優しい手を振り払った。どこまで自分は醜くなるのだろうと、心の闇の広がりを感じた。
「僕と君は…兄弟なんだ…なのに、僕は…」
それは紛れもない事実だった。けれど僕が言うにはあまりにもおかしすぎた。客観的に見る僕が僕を嗤っている。
「…俺がお前を唆したようなものじゃないか」
「ルルーシュ!!」
僕の声はわけのわからない怒りに震えた。どこに焦点を合わせればいいのかわからない怒りだった。ぎり、と拳を握りしめ、僕はルルーシュを見た。けれどルルーシュは相変わらず優しい笑みを浮かべていて、僕をそのアメジストの瞳の光で包んでいた。
「…兄弟なんて、やめればいい」
「…え?」

「俺たちの終わりで、始まりだよ、スザク」
そう言って今度はルルーシュが僕を押し倒した。

深まっていくキス。覆い被さり、上から積極的に絡められていく舌。密着してうねる身体。僕はぼんやりとその快楽に溺れていた。先程の情交とは正反対の、与えられる快楽に。 口内にルルーシュの唾液が流れ込み、自分のと混ざって溢れ、頬を伝った。何故かそれが理性を焼き切るきっかけとなり、僕はもっともっとルルーシュが欲しくなって、彼の頭をしっかり掴み、何度も角度を変えてはあらゆるものを貪るキスを繰り返した。
「ん、ん……は…」
キスの間に漏れる吐息すら飲み込みたい衝動に駆られ、さらに激しくキスをした。ルルーシュは一瞬身を引いたものの、すぐに僕の唇に吸い付いてきた。

長いキスが終わり、痺れる唇をゆっくりと離すと、そこには銀の糸がかかり、やがて途切れた。それを確認するとルルーシュは身体を起こし、少し後ろに下がってそのまま僕の猛った性器を受け入れようとした。けど僕はそれをもちろん制止し、変わりに唾液でよく濡らした己の指をゆっくりと挿入した。
「……ルルーシュ………」
「っ、ああ…はぁ……スザク……いい、いいから…」
挿入し、ルルーシュの内壁が少し傷ついていることが指先の感触でわかった。先程の情交が性急すぎたのかもしれない。そしてさらに胎内から精液がとろとろと溢れるのを感じ、再びしているこの禁忌的な行為に、ぞっと身が震え上がるのを感じた。そのまま挿入した指をゆっくり動かし、徐々にルルーシュの濡れた内壁を慣らしていった。
「ぁ……あ、スザク……も…」
「大丈夫?」
「ああ………早…くっ」
敢えてゆっくり時間をかけ、三本の指を飲み込めるまで慣らすと、ルルーシュから限界を訴えてきた。逸る気持ちを抑えつつ、僕の身体に跨るルルーシュの腰を掴み、そっと猛った性器を挿入していった。傷を付けた場所はなるべく擦らないようゆっくり、慎重に。
「はぁ……あ、ん……ふぁ…」
僕の身体の上でぴくぴくと跳ねる身体。アメジストの瞳は柔らかくとろけていて、僕は、もっとそれを近くで見たくなって、ゆっくりと身体を起こした。突然変わった体位にルルーシュは一瞬びくりと大きく身体を震わせたが、すぐに僕の肩にしがみついてきた。僕はルルーシュの顔を見つつ、ゆっくりと上下に律動をした。途端、背筋に走る快楽。
「あ、……はぁ!あん……あく……っ」
「ルルーシュ、好きだよ……好き」
ひっきりなしに上がる嬌声の中、僕はルルーシュに再び好きだと言った。
「あ、お……れも…スザク……」
返ってきた答えに、僕は何かが切れるのを感じた。

「ルルーシュ…!」
「はぁ、ああ……!っあ……」


こうして僕らは今日もまた罪を重ねていく。
壊された関係に酔いながら。












*ものすごくワケワカメでごめんなさい……当初の予定とずれすぎました。というかボツにしたものにかなり時間をかけすぎました。本当に消化遅くてすみません…。義兄弟難しかった…。でもこの禁忌的な関係ってすごくいいですね。燃えますね。 あづさ様、大変お待たせしておきながらこんな小説で…すみませんでした! 精進致します。では。
07.10.13 踏桜



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