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42 溺愛レクイエム








この部屋でスザクと抱き合って、一体何回目になるだろうと、ふとルルーシュはベットに仰向けになりながら考えていた。
目の前いっぱいに広がるのは、栗毛に翠の瞳を持つ、少年のまだどこか幼さを残す顔。
しかしそんな彼の欲情の熱い視線は、ルルーシュの瞳を溶かしてしまいそうなほどで、たった数秒間見詰められただけなのに、一気に身体が「その気」になっているのがわかった。
反射のように唾液が口内に分泌され、甘く舌が舌を欲し、無意識にぺろりと唇を濡らし、ほんの少しだけ唇を尖らせた。
その間も視線は外さない。外させてはくれない。
ルルーシュのその行為に誘われるがまま、覆い被さっていたスザクはゆっくりと身体を屈め、その唇を合わせた。
互いに目を閉じ、まるで神聖な行為をするかのような、優しい、けれど熱い口づけ。
数秒もしない内に、互いにその行為に没頭しはじめた。

「っんふ…っ」

唇と唇を合わせる程度のキスをしながら、スザクはルルーシュの腕をベットに貼り付け、器用にその服を脱がせた。
左手はルルーシュの指をくりくりと弄りながら、右手でシャツのボタンを外していく。
ゆっくり、上から下へ、焦らすかのようにゆっくりと。
そして漸く全てが外し終わると、ずっと口づけたままだった唇を少し離し、一息つくと、今度は首筋に顔を埋めながら、露わになった白い胸板に触れた。
キスで熱くなった胸にスザクのひんやりとした手のひらが触れ、ルルーシュは身体をびくりと跳ね上がらせた。
声を上げようとしたがスザクの舌が喉仏を刺激した所為で、ひゅ、と息を吸い込むだけに終わった。
声を出せないもどかしさに眉をしかめると、今度は熱い溜め息混じりに頬に一瞬口づけをし、その後にまた唇を合わせてきた。
そして今度はちろちろと舌を絡める扇情的な口づけ。
唾液がさらに分泌され、舌と舌が擦れ合い響かせる淫らな音を聞き、ルルーシュは腰にじん、と快楽が芽生えるのを感じた。
唇を占領し、快楽を引き出すスザクの巧みな舌使いにルルーシュは翻弄された。

「(また、キスが巧くなってる…)」

次第に、舌と舌が激しく交互に絡み合い、さらにどんどん唾液を引き出していく。 
与えられてくる唾液と自らが分泌する唾液は飲み込み暇もなく、スザクが唇の角度を変えてくる度に、口の端からとろりと流れ落ちた。
息も絶え絶えのディープキスに、ルルーシュはスザクの熱を感じながら、溺れた。

「(や…ばい…)」

じん、と目頭が熱くなり、同時に己の性器がキスにより高められていくのを感じた。
けれど、その刺激はもどかしく、ルルーシュはキスをされながら身体を少し身じろがせた。
キスをされるのは嬉しいのだが、終わるきっかけが掴めないのは難点であった。
スザクに、早く欲しいなどと恥ずかしい言葉などルルーシュは発せるわけもないし、そんなことをしたらスザクをさらに煽るだけだともわかっている。

さりげなくそのキスから逃れようと、伸ばしていた脚を曲げようとしてみたが、スザクが身体にべったり乗っている所為で叶わない。
半身を翻そうにもスザクは己の唇を押し付け、上半身の動きを封じている。

「(ん…、く…そ…っ)」

内心舌打ちしながら、なおも続くスザクの濃厚なキスに、ルルーシュは従うしかなかった。
くちゅ、という小さな水音だけが広い室内に響く。 熱くなった唇は既にほぼ感覚がない。
スザクはルルーシュの口を無理やりこじ開け、舌を侵入させ、じっくりと歯列をなぞっている。

「ん……はぁ……っ」

なおも続くキスの合間に空気を取り入れようとも、なかなか上手く行かない。
ルルーシュの意識はだんだんと朦朧とし、最初こそ積極的に絡ませようとした舌も力をなくして引っ込めようとしたが、それを追いかけさらにスザクはキスを強請ってくる。

「(し…つこい…な…今日は…)」

もう既に何分口づけをしているのだろうか。そう考えながら、たったこんなキスだけで疲労困憊してしまったルルーシュは、くっと眉間に皺を寄せた。
スザクは目を閉じたまま没頭しているらしく、それに気づかない。
塞がれた口からは時折しか息が出来ず、酸欠になってしまいそうだった。
それでもスザクは舌を絡めようと、より強く唇を押し付けてくる。

スザクとの情交は嫌いではなかったが、気に入らないことはたくさんあった。
だいたい、性行を受ける側と攻める側では明らかに負担が違うというのに、どうして自分が受ける方に回ってしまったのだろうか。
……流されたとしか思えない。不覚にも自分はスザクのあの子犬のような瞳に流されてしまったのだ。
悔しい。こんなスザクに流されてしまう自分が。

流されて、流されて、それでもスザクを求めてしまう自分が、やっぱり悔しい。

「んは………ざ…ふ、い、いい、加減に……っ!」

そう言いながらルルーシュは張り付くスザクを身体全体で跳ね除けようとした。
肩を掴み、ぐ、っと押し返す。だが、キスに夢中になり、もっとと強請っているスザクにそれは意味を成さなかった。
やんわりとその手は除けられ、今度は指を絡ませて押さえ付けられた。

「ん、んー………!!」

流石にここまで強引にやられるとは思っていなかった。
今日は一体どうしたのだろうか、と聞かなければいけない、いけないと思っていてもとにかく今は自分が優先で、どうにかしてこの男を退けようと、ルルーシュも半ば自棄になっていた。

…スザクと抱き合って、何回目になるだろう。
何回こんなキスをしただろう。

何回自分はスザクに……

ルルーシュは最後の力を振り絞り、今度は頭を思いっきり持ち上げ、無理矢理額と額をかち合わせた。
ゴンッ、と鈍い音と共に唇が離れ、スザクが油断した隙に、今度は全身の力を持って彼を翻し、思いっきりベットの外へ投げてやった。

やっとスザクの唇から解放されたことにより、肺に新鮮な空気が雪崩れ込んだ。

「ぅあっ!イダッ!」

スザクはそのままベットから落ち、ドタッという音と共に、背中から床に叩きつけられた。
ルルーシュはふぅ、と一息吐いてベットに身を埋めて彼を見ようとはしなかった。
しばらくするとスザクは痛そうに腰のあたりをさすりながら起きあがり、少し高い位置で寝そべるルルーシュを見上げた。
視線を感じて、ルルーシュは顔を向けて、ベットの下のスザクに一喝した。

「いつまでキスしているつもりだお前…ッ!しつこいぞ!」
「え…。あ、ご、ごめん…」

本当は何かあったのか、と聞きたかったのに。ルルーシュは自分の素直じゃない性格に舌打ちをしそうになった。
怒ったルルーシュの姿を見てスザクは慌てて向き直り、正座をしてごめんと素直に謝った。

「ったく…」

まだ、言うタイミングは逃していないはずだ。そう思い、けれど何かが邪魔をして言葉を発することが出来ない。この正体をルルーシュはよくは知らない。

そっと視線を移して見ると、スザクはしょんぼりと頭を下げてしまっていた。
もしかしたら自分が彼を傷つけてしまったのだろうか、拒絶されたと思ったのだろうか。
今、何かをスザクに言わなければ、自分の立場は……

「ごめん。だって、ルルーシュの唇、気持ちいいから…」
「な…おまッ…そういうことを…」

しかし、そのルルーシュの悩みもよそにスザクは先にぽつりと言葉を漏らした。
本当に、何も隠すものがないような、素直で純粋な飾り気のない言葉。
思わずルルーシュは赤面してスザクから顔を背けた。
するとスザクは立ち上がり、再びベットに上がってルルーシュのもとに寄り、桃色に染まった頬に軽く口づけをした。

「苦しかった?……ごめんね、もうしないから」
「スザク……」

その言葉に、ルルーシュは胸がきゅ、と締め付けられるのを感じた。
違う、そんな事を言わせたかった訳じゃないのに。
ルルーシュはスザクの優しい口づけを受け、そっと顔をスザクの方へ戻した。
再び目の前に広がる、栗色と翠色。
スザクの顔は、悲しみなのか、それとも微笑みなのか、どちらとも言えないような表情だった。

「ん、ルルーシュ唇赤くなってるね……」

スザクはそんなルルーシュにそっと跨ると、ルルーシュの唇に指を這わせながら言った。
素直にさらりと恥ずかしい台詞を口にするので、ルルーシュはまた赤面してしまったが、言った本人は恥らうことなく、むしろ真剣な目で話していた。

「やっぱ嬉しくて…。 ルルーシュ見てると駄目なんだよなぁ」
「ふん…」

と、今度はふふふ、と笑いながら幸せそうに話すスザクにルルーシュは身体から力が抜けるのを感じた。

「やっぱ、変わったよ。お前」
「え?そうかな」

自分も、これくらいスザクに素直になれれば……
スザクは自分をもっと……

「続き、するからさ。ね?」
「勝手にしろ…」

そして再びスザクに見つめられ、ルルーシュは思わず目を逸らした。 
するとスザクは小さく笑いながらルルーシュの耳朶にキスをした。
ぴくん、と反応したルルーシュの身体をスザクは優しく抱きしめた。

「好きだよ……ルルーシュ。大好き……っ」

ルルーシュは言葉を返さず、静かにスザクの背中に縋りついた。









>>かなり加筆修正しました。

2006.12.04 踏桜
2007.7.03 大幅加筆修正。




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