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66 キレイ事では済まされない









よく知っていると、自分勝手に思っていたのかもしれない。





それは慌しい学園の一日が漸く終わった、放課後。
生徒達はそれぞれ部活の活動を行うために、校内を駆け歩いていく。
ざわめく教室内、ルルーシュはいつも通り生徒会に顔を出すため、着々と帰り支度をしていた。
彼の斜め後ろの席に位置するスザクも、その様子を見て自分も急いで支度を進めていた。
彼が席を立ったら声をかけて一緒に生徒会室へ行こうと思っていたのだ。

支度に夢中になっていたスザクには、彼の一瞬の様子の変化には、気づかなかった。

「ルルーシュ!」

鞄を片手に持ち、教室を出ようとした彼に声をかける。慌てていてうまく閉まらなかったのか、スザクの鞄は歩くたびに口についた金具がかちかちと鳴っていた。
彼の肩に軽く手を乗せて、振り向かせる。

「あ、ああ。スザク」

そこにはいつもの綺麗なアメジストの瞳。
いつ見てもその眼に吸い込まれそうになる。

「一緒に生徒会へ行こう」

そう、言って彼と歩調を合わせた。

「いや、俺は先に済ませなければならない用事があるから…スザク、先に行っててくれ」

こつこつと廊下に二人分の靴音が響く。それはほぼ同じタイミングで。

「そ、わかった。…またさぼらないでよ?」
「わかってるよ。仕事が山積みにされているだろうからな」

彼は少し疲れ気味に笑って溜息を吐いた。生徒会長の事を思い出したのだろうか。
スザクはルルーシュを信用してそれ以上は念を押さず、そのまま歩いて昇降口へ向かった。

「ん?ルルーシュ。外に出るの?」

また危ない賭け事なのだろうか?
スザクは靴箱へ向かうルルーシュの背中に声をかけた。

「ああ、…遠くに行くわけじゃないよ、スザク」

スザクの真意を汲み取ったルルーシュが靴を取りながら答える。
その言葉に何故か少しドキッとして、スザクはそれ以上聞き込む事が出来なくなってしまった。

「うん、じゃ、気をつけて」
「ああ」

スザクは、夕焼けに染まる外へ出て行くルルーシュを最後まで見送らず、すぐに背を向けて歩き出した。







何時の間に仕掛けられたのか。そんなことをいちいち考えていてもしょうがない。
学校内に己の事がばれるようなものなど一切残していないし、私物が漁られようが盗まれようが正直、どうでもいいことなのである。
下手な趣味を持つ雑魚たちを相手している暇なんてない。

しかしまた、鞄の中に入れられていた、一枚の紙。

溜息を吐く気分にもならなかった。これは自分が望んだ事で、ただ自分が我慢を覚えればいいだけである。

望む世界を創り上げるため。
望む世界に二人の人間と一緒に生きるため。

でもまだ大きなきっかけが足りなかった。しかしルルーシュは気づく。
これは、今日の彼にとって願ってもいない最高の機会だと。
このタイミング、この状況を利用せずにいられるわけがない。

ルルーシュは静かに鞄の中から携帯電話を取り出し、制服のポケットへ忍ばせた。






生徒会室に着いたスザクは、久々の顔出しとあって、ミレイやリヴァルに散々どやされた後、断れない性格を早くも知ってか、大量の仕事を押し付けられた。
しかも面倒な計算をする、予算関連の書類の整理。
あまりの量の多さにさすがのスザクも苦笑したが、それでもすぐに仕事に打ち込み、着々と片づけ始めた。

「そういやスザクー、ルルーシュは?」

向かいの席でパソコンを打ちながらリヴァルがスザクに声をかけた。
山積みの書類の間から顔を覗かせ、スザクは淡々と答える。

「何か先に用事があったみたいで」
「来ないの?」
「うーん、用事が済んだら来るかもしれない」

スザクは、遠くに行くわけではない、というルルーシュの事を思い出していた。
彼は一体何処に行ったのだろうか。一体何をしているのだろうか。

もやもやとした気持ちが心を曇らせた。

「まーたあのサボり魔がぁー。ったく、スザクはルルーシュの事、信頼しすぎじゃない?」
「え?」

この気持ちの正体をスザクは知っていた。けれどそれを何かにつけて押さえ込んでいる自分がいた。

信頼という絆を勝手な理由にして。


「だってさぁーあいつそう言ってまたサボる気だよ。もうちょっと疑って食って掛からなきゃ」
「突き詰めた方がよかったの、かな」
「そうだよー、どうせまた賭け事だろ?最近は俺も誘わないで一人でやっちゃってるみたいだしぃ…」

そう言うリヴァルは少し残念そうに項垂れた。
書類の山の陰に隠れてスザクはきゅ、と口を結んだ。



太陽の光が届かない校舎の裏。あまり手入れの行き届いていない庭が広がっていた。
生い茂る背の高い草が自分らの身を隠すのには確かに丁度良い。

「本当にまた来たのかよ!!ハッ、イメージと違って案外プライド低いんだな」

罵声を浴びせる声は甲高く、少し濁っていて、己の耳を汚していくようだった。
だんだんと酷くなるような頭痛を感じない振りをして、ルルーシュは身を強張らせた。

「…約束の物は?」

静かに、相手の顔を見据えて短く問うた。目の前にいる二人の男はその視線を見て不気味に微笑みながら、制服のポケットから分厚い封筒を取り出した。

「もちろん用意しているさ。ウチの親も相当な馬鹿だからな!」
「俺も、ホラよ。お前が提示した金額通りだぜ?文句なんてないよなぁ?」

二人の手から放り投げられたその封筒を受け取り、中身を確認するとすぐに制服のズボンのポケットに入れた。
そして相手にしっかり見えるように美しく微笑みを浮かべると、ゆっくりと片方の男に近づいた。

「ああ、文句はない。…好きにしろ」

するりと首に手を回し、その細身を男に預けた。





「スザクはさぁ、ルルーシュと結局どういう関係なわけ?」

パソコンを叩きながらまたリヴァルはスザクに質問をぶつけた。
書き物をしていたスザクは一瞬動きを止めた。

「友達、かな」
「何、その…かな、っていうのは……おいおい…」

何気なくまた作業を進めながらふと背中に夕日が当たり、熱くなっているのを感じていた。

「その、よくわからなくて」
「ルルーシュが?」

熱くなった身体を少し冷まそうと、スザクは首元をきつく締め上げる襟のホックとYシャツのボタンをはずした。
ひとつ溜息を吐いて、頭に子供の頃のルルーシュの顔を思い浮かべた。

「ううん、自分が」
「じぶんが?」

一体彼は今、何をしているのだろうか。
そんなことを考えるようになった。




自分から服を脱ぎ、相手のも脱がした。
と言ってもルルーシュは上着の前をはずし、シャツのボタンも半分まではずした程度で、相手の男もズボンの前だけを寛がしているだけだった。
ルルーシュは校舎の壁に立ってもたれかかる男の前に跪き、無我夢中でその男の性器を口に頬張り、奉仕をした。
顔が男の先走りでどろどろになっているのもお構いなしに、ただただ男の制止の声がかかるまで続けていた。
背後にはもう一人の男が回り、むき出しになっている胸の突起を弄びながら後腔をジェルでほぐした。

「ぁふ……っ」

否応なしに与えられた快楽に従順に身体がびくびくと痙攣し、口を塞がれている息苦しさに目には生理的な涙が滲んだ。

「おうおう、中々上手いじゃねぇか…ランペルージ…っ、もう出すぞ」

そう言って男はルルーシュの頭を思いきり引き寄せ、無理やりに精液を飲ませた。
突然入ってきたどろりとした異物に喉が悲鳴を上げ、咄嗟に咽ようとしたが男はそれを許さなかった。
脳が痺れるような苦さを覚えながらもルルーシュはその衝撃に必死に耐えた。

「う、がはっ……!!」

しばらくすると男は満足したらしくルルーシュの頭から手を離した。
口から萎えた性器がずるりと抜け落ち、肺に新鮮な空気が雪崩れ込んで、ルルーシュは大きく咳き込んだ。

「オイ、こっちも集中しろよな」

しかし、息つく間もなく、突如背後にいた男が後腔に埋めていた指を激しく抜き差しし、ルルーシュを苦しめた。
荒々しく中をかき回され、びくりと身体が震えた。

「あ、は…ぁ…!」

顔を仰け反らせると、口の端を伝っていた男の先走りと精液が芝生に飛び散った。
男は巧みに前立腺を刺激し、ルルーシュは望まない快楽を受ける。

「こっちはもうどろっどろだぜ?俺、もう挿れちまおー…」
「おい待てよ、ずりぃぞお前!」
「何言ってんだよ!おめぇはフェラさして一回出しただろうが!」
「いいから掘っちまおうぜ!」

無様に言い争う男達の声を、ルルーシュはぼんやりと地面に伏せながら聞いていた。
そして男達に見えない事をいいことに、その美しい顔に黒い笑みを浮かべた。

そろそろいい頃合か。と心の中で策略を入念に復習しながら。

「や…も、挿れ…て、くれ…」

言い争う男達を止めたのは、ルルーシュのか細い声だった。
熱に浮かされ、快楽に溺れた淫乱な男を装って。

「ああ?」

その声に気づいた男が振り向く。
地面に伏せたままのルルーシュの顔はもちろん二人に向けられている。
精液と土で、どろどろに濡れそぼった淫らな顔を。

「おねが…もう、苦し… は、スザ…ク…」

朦朧とする意識の中、一緒に生きたい、男のその名を呼んで。









勇気がどうというわけではない。
あるにしろないにしろ、何も変わりはしない。

ただ、その罪は心に寄生していて。

この心を打ち明けたら、彼はどのような顔をするのだろう。


これは、伝えてはいけない想い。





ズボンのポケットの中に入れていた携帯電話が震えたのは、ちょうど仕事がひと段落ついた頃だった。
大量の仕事の量に同じく苦戦していたリヴァルは先ほどから机に伏し、夢の中にいる。
あまりにも気持ちよさそうに眠っていたので、起こさずそのままにしてそばにあった毛布を背中に掛けてあげた。

そして仕事の続きをやろうとした瞬間、静かな生徒会室に振動音が響いた。

すぐに取り出しディスプレイを見ると、そこに書かれていたのはルルーシュの名。
慌ててスザクは通話ボタンを押し、慣れた動作で耳に当てた。

「ルルーシュ?どうし…」
『よぅ、イレブンの恋人さん』

聞こえてきたのは見知らぬ男のしゃがれた声。スザクはくっ、と眉をしかめ、ルルーシュの置かれている状況を理解しようとした。
怒りが込み上げてきたが、男を下手に刺激するわけにもいかず、とにかく状況を把握しようと冷静に相手をしようとした。

「誰の事で」
『ハッ、とぼけんじゃねぇよ!枢木スザク!元イレブンのくせに生意気なんだよ!』

既に聞きなれてしまった言葉。静かに頭痛と眩暈が襲ってきたが、それを感じている間もないほどスザクは
相手への対処法を幾通りも考え、集中していた。

「これは、誰の携帯で?」
『だからー!お前の恋人だっつーの』

周りに車や、人の声はしない。しかし室内であればもう少し声が篭る。
どこか静かな屋外ではないかとスザクは考えた。
しかしそれより、ルルーシュの安否が気になる。
何か大変な目に会ってしまっているのではないか。

「どういう意味ですか。これはルルーシュの…………」

そこでスザクの言葉は途切れた。
聞こえてきた音を耳が受け入れて、危険信号を発するかのように心臓が鼓動を早めた。

『くぁ…あ…っ』

突如聞こえてきたのはまぎれもなくルルーシュの、悲鳴のような喘ぎ声。
目は開いたまま動かなくなっていた。

『ほぉら、お前の恋人のルルたんが大変な目に会っちゃってるよ〜。どうするのかな、枢木クン』
「お前ら…ルルーシュに何を…っ!」

怒りで脳が沸騰しそうだった。血が滲むほど拳を握り締め、今にも駆け出そうとする。
しかし彼らの居場所が掴めなければどうする事も出来ない事を知り、自分の無力さにさらに苛立ちを覚えた。

『早く恋人を助けに来いよ!チキンばかりのクソイレブンが!』

圧倒的に優位に立っている男らが高らかに笑う。あらゆる怒りの中にスザクはいた。
ルルーシュは遠くには行かないと言っていたが、それもどこまでだかはわからない。

どうしてあの時、もっと彼を問い詰めなかったのだろうか。
どうしてあの時、彼を引き止めなかったのか。

後悔が怒りとなって押し寄せる。

『ぁ、は…く、あぁっ………!』

さらに男たちがスザクを煽るように、電話越しにルルーシュの声を聞かせてきた。
初めて聞く、苦しげな彼の声。
ルルーシュが見知らぬ男達に襲われている。その事実がありありと伝わってきていた。
酷く気持ちが悪かった。背筋にゾクゾクと悪寒が走る。

この悪寒の正体を、スザクは知っているはずだった。

「ルルーシュ!!」
『あ、…やめ…っ、聞くな…!スザク…!!』

苦しげに漏らすルルーシュの声、自分を必死に拒絶しようとしていた。
しかしスザクは何もする事など出来ない。

少しでも何か情報を得ようと携帯をきつく握り締め、窓の外を見た。
しかし、生徒会室の外には何も変化がない。
そして改めて携帯の画面を見た、その時だった。

「これ、は…」

次の瞬間、スザクは途轍もないスピードで生徒会室を飛び出していた。





「お前も馬鹿だったんだなぁ!ランペルージ!うっかり恋人の名前言っちまうなんてよ!」
「おまけに携帯のナンバーの一番上に登録しているとか…熱々でよろしいこった!」

男達はさらにルルーシュを貪りながら罵声を浴びせる。
全裸に近い状態まで服を剥がれたルルーシュはもはや抵抗もせず、言われるがままに犯されていた。
後腔では一人の男根を銜え込み、口腔でもまた銜え込む。
あまりにも屈辱的な状況。

けれどすべてこれも計算通り。

ルルーシュはまた心の中で笑みを浮かべた。
もうすぐでチェックだ。と、心の中で囁いた。








変わってしまった彼に驚きを隠せなかった。
けれどこの想いは捨てられない。

彼は自分に必要な人間だから。

だから、このまま……








ゴッ、と。骨が砕ける鈍い音がした。

そして同時に、目の前に居た男が一瞬にして姿を消した。さらにもう数瞬後には後ろの男も。
ルルーシュは当たり前のようにその光景を見送っていた。

「スザク……」

突如ものすごいスピードで現れた人間に、驚き呆気にとられる振りをしてその名を呼んだ。
声が震え、掠れているのも計画の内だった。

ふと見ると、遠くで男の一人は腕をありえない方向に曲げて、草むらに突っ伏し、反対方向に飛ばされたもう一人は、鼻と耳から血を出し、仰向けに倒れていた。

一瞬にして校舎裏が静けさを取り戻した。

そしてルルーシュに背を向けていたスザクがゆっくりと振り向いた。
そこには予想通り、怒りに打ち震えて逆に酷く冷たい表情になっているスザクがいた。
蒼い視線に射抜かれ、快楽を貪られた身体がゾクッと震え上がるのを感じた。
怯えた表情を浮かべながら、もうほとんど着ている意味がないYシャツの裾を握り締めた。

「ス、ざ…」

今のルルーシュは己の醜態を友人に見られてしまい、羞恥に苛まれているという演技をしなければいけない。
決して目を合わさず、おぼつかない足取りで立ち上がり、散らかされた服を拾い上げようとした。
もちろん、制服のポケットに忍ばせた封筒はスザクにわからないように。

「君、は…」

漸くスザクが口を開いた。しかしそれを待っていたかのようにルルーシュが言葉を切り返す。

「は…情けない、よ。こんなときに、お前の力でしか…」

自分の無力さなど微塵も感じてなどいなかった。
これは己の策略で、スザクのための最低最悪の罠だ。

「だから、GPSを?」
「ああ」

スザクの携帯にもルルーシュの携帯にも、GPS機能がついていた。
ルルーシュは生徒らと話す前、そのGPS機能をオンにしておき、制服のすぐわかるポケットの中に忍ばせておいた。
自分がうっかりスザクの名を口走るという振りをして相手を挑発し、スザクに電話をかけさせるよう仕向けたのだ。
もちろん、スザクの電話番号を一番かけやすい機能に登録しておいて。

いくら明るく、人当たりのいいスザクと言えど、学園内で彼の携帯番号を知るものは少ない。
ましてやイレブンを下衆と罵っていた生徒らがスザクの番号を知るようなこともしないであろうし、スザクのは仕事用の携帯電話で、番号を知られることを最小限に抑えているのも知っての上で。

「どうし、て」
「でも、お前は助けに来てくれた」

それは事実。

「ル…」
「スザク」

顔にかけられた男達の精液は、既に乾いてしまっていて、美しく聡明な顔は見るも無残だっただろう。
身体を震わせて、目を伏せる。

「ル、」
「お前が、洗って、くれないか…」

これは本心。


さあ、噛み付いて来い。スザク。
そう心で叫んで瞳を閉じた。





知りたいなどと、そんな甘い考えを。
本当は知りたいんじゃなく、欲しかったんだ。

噛み付き、抉り、吸い上げるように激しく、激しく。

本能を塞ぎ込んだら見えなくなっていた。
ルルーシュも、自分も。








絡みついた舌は酷く熱く、一度引いた熱を取り戻すのには十分だった。
場所をルルーシュの家のシャワールームに移動し、二人とも全裸になって頭から湯を浴びながらひたすらキスに没頭した。
スザクの動きは些か乱暴だったが、ルルーシュは一切抵抗はしなかった。
むしろ自分から積極的に身体を押し付け、スザクを煽った。

止めてくれないか、という顔をスザクはしたが、ルルーシュは止めなかった。

洗い落とされていく先刻の情事の名残。
激しいキスを繰り返しながら、互いの身体で身体を洗っていく。

「ん…ふ…」

時折漏れる喘ぎ声は、シャワーの水音とスザクの唇に吸い取られていった。
互いに夢中でその唇を追いかけていた。

「ルルーシュ……」

しばらく続いていたキスを終え、熱っぽくスザクが名を呼ぶ。
そして向き合っていたルルーシュの身体を反転させ、バスルームの壁に押し付けると、そっと手を背中に這わせ、やがて指をゆっくりと後腔に差し込んだ。

「ひっ……」

咄嗟に拒絶反応を示したルルーシュをやんわりと押さえつけ、スザクはルルーシュの中に放たれた男子生徒らの精液を掻き出し始めた。
つつ、と太股を垂れ落ちる液体の感触が嫌にリアルに感じた。

「何回、出されたの」

ふとスザクがルルーシュに問いかけた。
低く、掠れた男の声で。

「ぁ…わから、な…」

熱を上げられたルルーシュはそれに答える事もままならず、ぎりとタイルに爪を立ててスザクの指の動きに身を強張らせた。

シャワーの水音ともうひとつ、不自然に響く粘性の高い水音。
身体の中で轟くスザクの指。引きずり出される、汚れた精液。

ああ、これが欲しかったのかと、甘くスザクの指を締め付けた。

「…くっ」
「ひぃ、っ……!!!」

しかし次の瞬間、スザクの指がルルーシュの後腔内のある一点をかすめた。
瞬間的に身体が悲鳴を上げ、びくりと大きく震え、勃ち上がり始めた性器にとろりと半透明な先走りが滲んだ。

「大丈夫」
「あ、は…ぁ…や…」

優しく声をかけられながらも、指の動きは止まらない。
次々に掻き出されていく精液と、どんどんと上がる体の熱。
敏感な内壁を擦りあげるスザクの指。

そのすべてがルルーシュを絶頂へと誘った。

「ルルーシュ…?」
「あ、あぁ…あっ!」
 
ほんの少し、前立腺に触れたその刺激だけでルルーシュは達した。
首を仰け反らして、濡れた黒髪を散らす。
立ったまま絶頂を向かえ、がくんと崩れる身体を慌ててスザクがキャッチし、そのまま横に抱えた。
ちゅ、と軽く額にキスをすると、いいよ、と囁いた。
シャワーの水音でその声を聞き取る事は出来なかったが、ぼんやりと滲んだ彼の口の動きで理解は出来た。
そのまま本能に誘われるがままに瞼を下ろしていく。





スザクが好きだった。
未来を創り上げると決めた自分の隣にいて欲しかったのはスザクで。

けれど彼が自分の父を殺したという事実、ランスロットのパイロットだったという事実。
そしてユーフェミアの騎士になったという、事実。

いつの間にか彼の存在を渇望している自分が居た。
それを自覚していて、スザクの想いも理解しているつもりで、策を練っていた。

どす黒いこの執着心を、浄化してくれる。





目を覚ますと、隣にはスザクがいた。
のそりと気だるい身体を起こすと、少しずつ状況を理解しようとした。
スザクはまだ寝ていて、自分達は部屋のベットに寝ていて、服はいつも着ているパジャマで。
例の封筒は昨夜、彼と風呂に入る前に隠した。

そうしていると、自分の体温と、足元に感じるスザクの体温が一層リアルになった。
徐々に覚醒していく意識を並べ替えて、眠るスザクを見下ろす。

スザク、お前のことがずっと好きだった。
俺はお前とナナリーのために、世界を作る。


だって俺は、ゼロだから。


朝日が眩しかった。









>>イレブンは携帯電話持っちゃいけないらしいです^^すみませんこれ書いた時点では知りませんでしたorz
甘く見てやってください…
11000リク「暴走ズザクと女王ルル」でした。ミル様ありがとうございました。
07.4.21 踏桜
07.7.7 加筆修正




あきゅろす。
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