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大好きなものは一人占め



同じ学年なのに貴方に接する機会が乏しいのは何故

学級が異なるから?

委員会が異なるから?

年齢が異なるから?

それなら

必然的に貴方との接点を作れば良いだけです



「喜八郎、お前前回の試験が0点とはどういう事だ?」

「実力」

「実力で0点を取るなんて1年は組くらいだぞ?この私が本気を出しても0点など取ることは有り得ないが、お前だって0点なんて故意に取ろうとしない限り有り得ないだろう?」


ああ、もう五月蝿いなぁ

学年一自惚れ屋の滝夜叉丸が頭ごなしに前回の試験の結果をぐだぐたと説教を垂らすのだが、当の私は右から左に受け流していた


「は組になりたいなぁ…」

「は組?っておい、喜八郎!どこに行くんだ、話の途中ではないか!」


私は自室から出て日課の蛸壷掘りへ出掛けた

同じクラスになれば、毎日貴方に会うことが出来る

煙硝倉の前から4年長屋に向かって穴を掘る

今日は何処に掘ろうか

貴方は明日何処に落ちてくれますか?

彼の為に私は毎日穴を掘る

最初は、自分の欲求の為、衝動のまま掘っていたけれど、彼が現れてからはその衝動の対象が変わった

さぁて、今日は何処に落ちたかな?


「痛ぁ…」

「おやまぁ…」


今日は惜しかったですね

彼が落ちたのは煙硝倉からあと50メートル手前の偽塹壕(ダミー)


「また落ちちゃった」

「大・成・功」


えへへと彼は鼻っ柱に土を付けながら笑った

滝や立花先輩に仕掛けたもんなら真っ先に怒鳴られるのだけれど、彼はへらへらと笑っていた

私はこの眺めが好きだ

いつもは見上げる側だけれどこの時だけは立場が逆転する


「タカ丸さぁーん」


ちっ

もう呼び出しが掛かったかと私は小さく舌を鳴らした


「綾部君、そろそろ引き上げてくれないかなぁ?火薬委員会に行かないと…」

「ダメです」

「そっかぁ、どうしよう…」


笑ってる貴方も好みだけれど、困ってる顔の貴方は更に好きだ


「タカ丸さーん、どこですかー?」


あの人の声が段々と近くなる


「ここだよー!へいすけくー…んぅ!?」


彼が私の最も嫌悪する言葉を口にしたから、私も蛸壷に降りて、彼の口を塞いだ


「んぅっ…、っはぁ、綾部く…ん」


彼の目が酔って来たところでようやく彼を解放してあげる


「ダメですよ、人を呼んだら」

「どうして?」


私は彼に優しく微笑んだ




大好きなものは一人占め




したいからです


もっと貴方を感じていたい


もっと貴方を補充させて


もっと貴方に酔わせて下さい


貴方の声で吐息で


唇で










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