はじめて知った
くく→タカ→優作
偶然通り掛かったら聞き慣れた声を耳に留めた
本当は彼の声が反射的に耳に入るように蓄音されているのかもしれないけれど
いつもの軟らかく安心するような彼の声を探るようにして私は辺りを見渡した
あ、いた
声がするということは独語でない限り誰か人と一緒にいるということで、声の主達は学園内ではあまり見かけない組み合わせだったりして内心驚いた
「秀ちゃんはさぁ」
「タカ丸君こそ」
愛称で呼び合うその二人は心底楽しそうな表情を浮かべている
そういえば、この二人は家が近所で幼なじみみたいなもんなのだという話を聞いたことがある
その情報網は残念ながら本人達からでないのが悔しいが
幼なじみということはお互いの色んな面を知っているんだろうな
幼い頃の斎藤はきっと可愛いらしいだろう
人懐っこい奴だからさぞ大人達には可愛がられただろうか
いや、もしかしたら意外と人見知りだったりして…そうしたら萌えるな
「ねぇ…、優ちゃんは、…元気?」
こんな脳内妄想をしていると一気に現実に戻されてしまった
優ちゃん?誰だ?
しかも、いつもの斎藤の雰囲気とは何か違う物腰で話しているのが妙に気にかかる
「ああ、兄ちゃんは元気だよ」
小松田さんの兄貴?
そうか、幼なじみの兄貴と仲良くなるのも珍しいことではないなと若干安堵したのは束の間だった
「そっかぁ、良かったぁ」
そのたった一言とほんのりと紅潮した表情で私は全てを悟ってしまった
あの表情は人を慕う時の顔と
心から人を恋い焦がれる時にみせる顔
先程の斎藤の表情が脳裏から離れてくれない
いつもなら斎藤の笑顔や声を聞くだけで満たされるのに、今はなぜか心がいたく切ない
ああ、そうか…
これが人を想うということか
はじめて知った
幼なじみの兄貴を恋慕うのも珍しいことではない
珍しいのは…
年上の後輩を年下の先輩が恋慕うこと
〆
最終的には久々知とタカ丸は付き合いますがタカ丸は最初優作さんが好きだといい
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