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A Trick or treat


くく→タカ←綾


「久々知君!」

「あ?」

「とりっくおあとりーとめんと!」


突然現れた斎藤は何やらトンチンカンな台詞を吐きながら両手を差し延べた

「は?」

「ちょっとぉ、反応薄すぎだよ!」

「何なんだ、その鳥と面と…あと何だっけ?」

「全然ちがう!もう、南蛮のお祭りなんだってさ」

「南蛮の、祭?」

「もう一回言うからね?とりっくおあとりーとめんと」


にっこりと先程と同じ台詞を言われたが訳がわからない


「あー…、おめでとう?いや、ありがとうか?」

「んもー、違うってば」

違うと言われても祭の主旨がわからないのだから仕方ない

訳のわからないことにいつも巻き込まれては斎藤のペースのまま乗せられてしまうのだ


「久々知先輩は本当つまらない人ですね」

「何だと?」


そこに現れたのは、毎度のことながら斎藤と同級生である穴掘り小僧の異名を持つ厄介野郎だ


「タカ丸さんがおっしゃってるのは所謂今の季節で言う収穫祭のことですよ。タカ丸さんの台詞は『A Trick or treat』お菓子をくれないとイタズラしますと言う意味です」

「すごいね、綾ちゃん!」

「タカ丸さん、先程の台詞を私にも言ってくれませんか?」

「うん、もちろん。『トリックオアトリートメント!』」

「…………」

「あれ?」

「私は今お菓子を持っていないのでイタズラしてくれて結構です」

「えぇ?!」

「さぁ、どうぞ」

「じゃ、じゃあ!しちゃうからね!」


そう念を押して怖ず怖ずと斎藤が綾部の正面に立つ


「綾ちゃん、目瞑って?」


目を、瞑る、だとぉぉお!!

斎藤の奴何をする気なんだ!?私という者がありながら、ただの悪戯なんて可愛いもんじゃ済まないぞ。寧ろ私が斎藤に悪戯してやりたい!

止めろ、止めろ、斎藤、止めてくれ!

綾部が目を瞑ると斎藤が更に近寄る


「さっ…!」


斎藤!と寸止めしようとした矢先、斎藤がしようとしている悪戯が私の思ってるものとは違うことに気付いた


「はい、悪戯終わったよ」

「なんですか、これは?」

「うん?髪の気に悪戯したんだ」

「…タカ丸さんらしいですね」

「えへへ」


なんだ、このほんわかとしたほわほわした雰囲気は…と思うくらい斎藤と綾部の周りに花が咲いていた

普通、悪戯と言えば相手を困らせたり嫌がらせたりするものだが斎藤の悪戯はというと髪の毛を変な髪型に変えるくらいのもので可愛いものだった

綾部の言う通り斎藤らしい悪戯だ

悪戯した本人の満足そうな顔と言ったらもう可愛いの一言に尽きる

まぁ、流石に伝子さんの髪型は勘弁して欲しいけれど


「A Trick or treat」

「ふえ?」

「お菓子をくれなきゃ悪戯しますね?」

「えええ!?」


今度は綾部が斎藤に例の台詞を吐いてずいっと斎藤の前に体を差し出した

ちょっと待て、綾部の悪戯はただの悪戯では済まないぞ


「綾ちゃ…ち、近いよ」

「タカ丸さんがいけないんですよ?さぁ、目を瞑っていただけますか?」

「う…あ「ちょっと待ったぁぁあ!」


むぐぐ

私は斎藤と綾部の間に割って入り、一瞬の内に持って来た饅頭を綾部の口に突っ込んでやった


「綾部、惜しかったなぁ」


私は息を切らしながら綾部に勝ち誇ったように微笑んだ

綾部は眉間に皴を寄せながら顔色一つ変えず饅頭をもぐもぐと咀嚼してごくんと嚥下した


「…あはは、久々知君ありがとう」


私と綾部が静かにお互いを睨み合っているのを察した斎藤が言葉を発し、空気が元の整然さに戻った


「斎藤」
「タカ丸さん」

『A Trick or treat』



君に悪戯できるのは私だけ



Happy Halloween!





ハロウィン間に合わなかった






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