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09.1月〜2月log
若林








どこでどうなったのか、そんな事すら思い出せない。


気がつけば、当然のように俺は岬を求めて・・・・・・・・―――


―――・・・・・・・岬は俺を受け入れた。




それはただの錯覚だと


心のどこかが、否定をし続ける。



それはただの淡い夢だと


頭のどこかが冷たく俺を見据える。




ぴちゃぴちゃと鼓膜を擽る水音が妙にリアルで、ただ行為に没頭する。


「ん・・・・」



行為に没頭すれば、自然と漏れる声がどこか遠く。少しでも埋まるように、もっとと求めればまた漏れる声。



深く、深く、陥る悪循環



それでも抜け出すすべも、意思もなく


飽くことなく追えば、僅かに力の入った口内に終了の合図を読み取った。



唇を舌でなぞって、名残惜しげに離せば応えるように僅かに妖しく光って赤みのを増した気さえするのに。


感触は生々しい程に現実で、触れる頬は暖かい。


なのに


胡乱な、まるで見えていないような目。



「・・・・・み、さき」


単語にすれば簡単な3文字が、まるでなにか喉に張り付いたように出てこない。


―――なにを見てる?


続く言葉はもう音にはならない。


ただ、回した腕の中の温もりだけが俺の全て。









□■□■□■□■□■








「飲むか?」

「コーヒー」

「ん、」

「ありがとう」


顔も上げず応える僕。

気にした風もなく、しばらくすれば漂うコーヒーの香り。

ソファーの隣が僅かに下がって、コトッとカップが置かれる音がした。





「・・・・・行ってくる」

「何曜日だ?」

「・・・・・・水曜日。」

「すまん、頼む。」


顔も上げずに応える君。

後ろ手に手だけ振る仕草を見ながら、僕は向かうのは浴室。

暫くして綺麗になった浴室から、優しい湯気が立ち込めた。




「岬」

「・・・・・・・・ちょうど、美味し。」

「良かった」

「皿出す?」

「青いやつ。」

「解ったよ。」


視線を交じ合わせた君と僕。


小匙に盛る君と口を開けるだけの僕。


美味しい料理が口に広がった瞬間、幸せだと感じるのは僕が君と共有する総て。






◆一番自然で、一番愛しい








□■□■□■□■□■








もし、サッカーに出会って居なかったら

それは多分とても幸福だったのかも知れない。



ただ、父の後ろをついて歩いて

短期間居ただけの転校生として

成人を迎えたら、ついて回った中の自分が気に入った場所で

カフェかなにか、そんな場所で働いて

常連の女の子と普通に恋に落ちて

時々届く父からの絵葉書を眺める


プレッシャーも、期待もなく

押し潰されそうになる希望や、もて余す絶望も知らず

焼けつくほどの羨望も、逃げたしたくなるほどの憧憬もなく


ただゆるゆると流れる時間に

ただ身を任せる


誰の心にも残る事もなく、誰かを心に残すこともなく


それはとても幸福だったんじゃないかと思う。



言葉遊びの戯れ言



ふと思い付いた事を口にすれば


「岬、意外と暇なのか?」

無表情でそんな答えが帰ってきた。


「どうだろう、忙しい自覚は少しはあるけど。」


笑って返せば、強引に抱き寄せられた。


「暇なんだよ、お前は。」
――それならもっとこまめに連絡しろ、会いに来い



囁かれたセリフは、行動くらい強引で

でも震えて小さく僕の鼓膜に消えた



その瞬間、愛しさで呼吸さえできなくなって。








◆それでも、僕は今を望む






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あきゅろす。
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