notting
※typhlosis
攻受共にヤンデレ風味/暴力要素アリ注意/監禁/逃亡
「なんで、こうも上手く行かないかねぇ」
同情さえ滲ませる声は酷く冷涼でまるで温度さえ従えたように、降りてくる。
多分、口調と違ってその顔は酷く喜色を帯びているのだろう。
反射的に睨み付ければ、わざわざとその事実を確認するだけ。
ただ深く下を向いて、拒絶だけを表した。
こいつの暗く長い影が映る床だけを見て。
「まったく・・・・・お姫様のご機嫌とりは苦労するよ。」
近づく気配と鋭い痛み。
開ける視界に広がる男の顔。
やっぱりその顔は、愉快そうに歪んでいた。
状況を把握するには、慣れすぎた行為。わしづかまれた前髪が静かに悲鳴を上げる。
「顔も見たくないほど、ご機嫌斜めか、ねぇ。うちの姫様は」
―傷つくな、俺。
不釣り合いな表情と不釣り合いな口調でそう嘯く。
痛みを和らげたくて、両腕に力を入れれば更に上へと引っ張り上げらる。
「・・・・・・・ぃっ、っつ」
悲鳴なんかあげてやるもんかと思ったところで無意識に小さく上がる声。
「可愛い声。もっとちゃんと聞きたいんだけど。」
噛みしめた唇にちろりと這う舌先が、目の端にやけに赤く写る。
それは酷く熱く感じるのに。
「甘いなぁ、身体も、その可愛い頭も。そこも愛してんだけど。」
嘘つき
嘘つき
嘘つき
「お姫様に逃げられて傷心の俺、癒すの手伝ってよ。」
鮮やかで綺麗な瞳に宿るのは色のついた欲だけ。
それでも歓喜に震える自分の身体と心に、絶望さえあきらめた。
―そう、こいつは俺を愛してない。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
捕まる為に、逃げるだけ。
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