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notting
続続・王道じゃない!







「行こうよ、リクちゃーん。お願い、ね?ね?」


一撃必死の上目遣いに、ちょっと紅葉した目元と開いた制服から除くチラリズム。


完璧だよ、先輩。


可愛い女の子、もしくわ相手が男前の美形ならの話だけど・・・・・・・。



「なんでそんなしゃがんでんですか?」


隠そうともしない思いっきり不機嫌な声と表情の俺。

残念ながら、先輩は可愛い女の子でも、俺が男前の美形でもなく。

あまつさえ覗くチラリズムは谷間じゃなくて、なんかお洒落っぽいタトゥーだ。

これで上機嫌になるなら、俺は多分もう俺じゃない。


「定番の上目遣い?的な」

「嫌味にしか見えませんけど。」


小首を傾げて可愛らしさを演出する先輩はどうやら今日の気分は『可愛い攻め』らしい。


思いっきり腰を屈めるあたり、可愛さの欠片もないけどな。


とは言えバリエーションの豊富さに呆れつつも、残念感は否めない。

だって、ウザさといい、キモさといい、それを凌ぐ美形度といい。


攻めとしては本当に完璧なんだ。


なのに飽きもせず構い倒すのは俺。



「ちぇっ、可愛いさアピールなんだけど。」

「声でちぇって言う人、初めてみました。」

「おぉー!!初体験??リク、エロいねぇ、エロい。」

「小学生ですか、あんた」


言葉尻を掴まえて、下ネタに持っていくあたり、もう可愛い攻めでもないな、うん。

そんな事を思いつつ、今日何度目かのため息をつく。


「絶対、行きません。」


さっきから続くこのやり取り。

どうやらイシイ先輩は俺を溜まり場に連れて行きたいらしい。

シンゴがソウジ先輩に連れられて行くらしく、羨ましいと朝から何度も言われた。

チクショ、俺だって行きてぇよ、そんな王道イベント。

『本当にあの穏やかに笑ってる人は総長なのかっ?』とかどよめく下っぱを拝みてぇよ。



心配する親友ポジションでな!!


それなのに・・・・・・


「自慢したいよ〜。俺の可愛いリクちゃん。手出したらブチ殺す的な意味も含めて。」

「・・・・・・それ、普通に怖ぇよ、いろんな意味で。」



なんで副総長の嫁ポジションなんだよっ!!!!


あー萌えねぇ〜〜。



「まっ、拉致って行くのもアリだよね?」

「ナ、ナシでしょ、全力で抵抗しますよ、俺。」

「俺の実力はすげぇよ。ギャップ萌えでリクちゃん惚れ直すかも。」

「直す前に惚れてないんすけど」

「ツンだなぁ、本当。可愛いぞ。でも聞き分けない子はこーだ。」

「・・・・・えっ?ちょ・・・・・」


――鈍い痛みと共にそこで途切れた俺の意識。


気が付いたら、薄暗い部屋にカラフルな頭と心配そうなシンゴの顔があった。

可愛い攻めはどうした!!と絶叫しつつご丁寧に嬉しそうに俺を抱えてる先輩を殴ったら、『副総長が怒らないっっ!何者だ、あいつ。』と下っぱがざわめいた。

見たいのは王道なんだ、俺は!!!!!




◇◆◇◆
気絶させて拉致る・・・・立派な犯罪だろっ!!





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あきゅろす。
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