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箸が、転がる



「岬君、絶好調だね。」


ライバルで親友で、そんな翼君の屈託のない笑顔が眩しい。


誉められてありがとうって答えても、心の隅はどこか憂鬱で。


それがなんのせいかなんか、解り切ってるのに全く前に進めない。


チラっと様子を窺えば、グローブの手入れをしてる涼しい顔が恨めしくて、でも自分もスパイクの手入れをしているのを棚上げしてる事に苦笑する。


昨日の喧嘩の発端はなんだったっけ?


思い返しても、思い出せない。


きっと些細な事なんだろうと思うと余計に前に進めない自分が、もどかしい。


こんなのは僕じゃない。


よし、スパイクの手入れが終わったら謝ろう。


思いついて顔を上げれば同じタイミングで目が合った。



「ごめんね。」
「すまん。」



同じタイミングに思わず噴き出した僕を、少ししかめ面で見る若林君がまた可笑しくて。


心が晴れたら、さっきの翼君の台詞が改めて嬉しくなって、そんな現金な自分がまた可笑しくて。


案外喧嘩もたまにはいいのかもしれない。なんて懲りずに思った。







end.







この二人は喧嘩しないんじゃないか…サッカー論以外。と思う。



 


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