見上げた空は
【1】
暗い雲に覆われた空の下。
相川梓は屋上に出ると、フェンスに寄りかかって空を見上げた。
6月の風は少し湿っぽく、肌にまとわりついてくるようだ。
左手に視線を落とす。
そこには銀色に光る、指輪。
今日、6月7日は梓にとって特別な日だ。
自分の誕生日。
そして……大切な人が、死んだ日。
梓には小6から高1の5年間付き合っていた彼氏がいた。
親同士の仲が良く、小さい頃からよく遊んでいて、いつの間にか好きになっていた。
彼の方から告白してくれた時には、嬉しくて思わず泣いてしまった。
大好きな彼。
ずっとずっと、一緒にいられると思ってた。
その日は梓の誕生日だったから、2人でお祝いを兼ねてデートをするという事になっていた。
──いつもよりリッチに決めてやるよ。
それが最後に見た、彼の笑顔。
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