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なかよしこよし
バレンタインデーにそわそわしてる男っているよね
「お願いがあるッス!!」

江戸に来て数日経った頃。
唐突にまた子に頭を下げられた。けど、正直心当たりは全く無い。
何かあったかな、と首を傾げたらまた子が続けた。

「バレンタインッスよバレンタイン」
「バレンタイン?……ってあのバトルロワイアル的なあれですか?」
「全然違う!なんスかそれ!?チョコッスよチョコ」
「チョコを……投げつける祭ですね?」
「なんでそんなに暴力的ィィィィィィ!?」

うん、でもバレンタインってなんだっけ。
あんまり気にしてなかったけど聞いたことあるような気がする。
チョコが……チョコを……無意味に溶かす祭?なにその二酸化炭素を出さないようにしようと呼吸の頻度を抑えるくらい意味のない祭。

「で、そのバレンタインがどうしたんですか?」
「今年は晋助様にあげたいんッス。で、チョコを作るのを手伝ってほしいんス」

………溶かしたチョコを?嫌がらせ?
そうか、最近また子も疲れてきたみたいだし、とうとう人に当たりたくなったのか。
流石の高杉さんでも傷付くだろうし。

「まぁ気持ちを伝えることも大切ですしね」

私も贈ろうかな、とぼそりと呟いてみる。
と、すごい勢いでまた子が反応した。

「梓があげる!?冗談も程々にしてほしいッス」

……そんなに私は高杉さんに従順に見えるのだろうか。
それほど反抗的に見えたわけではないかもしれないけども。

「私があげたら不都合が生じるんですか?」
「そういう意味じゃ……仕方ない」

なんでそこまで嫌そうなのかわからないけど、とりあえず作ろうって話になった。作るっていうか溶かすだけだけど。
実はもう買ってあるのだとまた子が大江戸マートと書かれた袋から板チョコを取り出す。

「じゃあまずチョコを湯煎で溶かして」
「溶かしたッス」
「はい、じゃあ高杉さん呼んできますね?」
「……え?ちょ、ちょっと待てェェェェェ!!!」

なんだろう。トッピング?ラッピング?
ラッピングなんてしなくていいと思うけど。

「梓、アンタバレンタインが何か分かってるッスか!?」
「溶かしたチョコを憎んでる相手にあげる祭典ですよね」
「惜しい!!でも全然違う!!」

それ惜しいとは言わない。
また子は頭が痛い、と言わんばかりに頭を抱えた。

「バレンタインっていうのは、好きな人にチョコをあげるイベントッス」
「好きな人?私高杉さん好きですよ一応。鬱陶しいとは思いますけど」
「好きは好きでも愛の方ッス」
「あ、じゃあ私には無関係ですね」

結論。
なんで私は作ろうとしたのか謎だ。
とりあえずまた子の手伝いだけして結局渡さなかったとさ。




「梓は万斉にあげてないのか」
「え?あ、ハイ。自分は関係ないって言ってたッス」
「……そうか」

また子が高杉さんにチョコを渡しに行ったとき、こんな会話をしたと後日聞いた。
……でもなんで河上さんなんだろう。

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あきゅろす。
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