小さな頃から(↑で読めない方用)
2
『実は昨日文苑女子(高校)の娘に告白されてさぁ……可愛かったし良い娘そうだったから、付き合ってみようと思って……。』
『え……。』
いつものように遊びに行った亮の部屋でいきなり告げられたその言葉に、いつかはこんな日が来る事を覚悟はしていた佑樹だけれど、それでも一瞬、心臓を鷲掴みにされたような感覚に陥った。
『だから、彼女が出来るかもしんないって言ってんの。』
人の気も知らないで、嬉しそうにはにかむ亮がうらめしい。
『そう……良かったじゃん。』
『そうって……冷たいなー。もっと喜んでくれても良いのに……。』
動揺を表さないように出来るだけ素っ気なく答えたけれど、それが気に入らなかったのだろう……亮が佑樹の手からゲームのコントローラーを取り上げた。
『何?俺のが先に彼女出来そうだからって拗ねてんの?』
『違うよ!』
『ムキになってんじゃん。かーわいー。』
からかうように頭をグシャグシャと撫でられながら、佑樹は涙が出そうだった。
親友というポジションで満足しなきゃいけないとずっと思って来たけれど、亮が誰かと付き合う事なんて今までは無かったから、今初めて向き合ってみて、佑樹は自分の気持ちが自分で思っていたよりもずっと大きな物だった事を改めて思い知らされる。
今……自分に触れている亮の指が他の女の子に触れたり、この笑顔をその娘に向ける事に、とても堪えられそうに無かった。
それでも……。
―――友達で、いいから……。
『まだ決まったわけでも無いのに、浮かれてる亮がムカつくんだよ。』
必死に表情を取り繕ってふざけたように言おうとするけどそれは見事に失敗して、顔がヒクリと強張ってしまう。
『そういえば、今日用事があった……俺帰るから。』
―――帰って……頭を冷やそう。そうすれば大丈夫になる筈……。
そう思って立ち上がると亮が手首を掴んで来た。
『何で怒ってんの?』
『怒ってないよ。』
『怒ってる。何年付き合ってると思うんだよ……佑樹の事なら何でも分かる。もしかして……俺に彼女が出来たら遊べなくて寂しいとか?』
『なっ……。』
『心配しなくても、佑樹と遊ぶ時間もちゃんと作るよ……だから……。』
『っ……。』
激しく動揺していた佑樹の心は、亮の発したあまりにも的外れな言葉に、ついに決壊してしまう。
『何にもっ……分かって無いくせに!』
気づけば既に叫んでいて……冷静に考えればずっとひた隠しにしていた想いにノンケの亮が気付くはずが無い事くらい分かっていた筈なのに……その時の佑樹は長年胸の中にしまい込んでいた想いを抑える事が、どうしても出来なくなってしまっていた。
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