小さな頃から（↑で読めない方用）
10
―――うそ…だ……。
こんな事が起こる筈……無い。
都合の良い幻覚なんじゃないか、と、佑樹は思った。
だけど開かれた瞳には亮の顔が一杯に映っていて……唇に感じる柔らかい感触が、これが夢なんかじゃ無い事をリアルに伝えて来る。
「……んっ！」
優しく触れていたそれがそっと離れてゆく時に、舌先で唇をペロリと舐められて佑樹は思わず小さく呻いた。
「なん……で？」
「……かんねーよ。」
驚きに掠れた佑樹の言葉に唸るように答えた声は、彼の動揺を表すように僅かに震えている。
―――やっぱり、もう……止めよう。
まさかの出来事に、呆けてしまったとでもいうのだろうか……キスをされた事で、何故だか少しだけ冷静な気持ちになれた佑樹はこれ以上彼を混乱させ、困らせるなんて出来ないと改めて思った。
覚悟を決めて臨んだ筈なのに、一度弱気になってしまえば後悔だけが押し寄せて来て……。
「ごめ……もう……。」
―――やめるから……。
そう続ける筈だった言葉は、喉の所で嗚咽に変わった。
今の自分が情けなくて……次から次へと溢れる涙を止める事が出来ない。
言葉にする事が出来ないのなら、せめて彼を解放してあげなければ……そう思った佑樹が腰を持ち上げようとしたその時、状況は急転した。
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