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過去拍手
醒夏 番外D



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「セイ、さっきの……っ!ちょっ、待て!!」


「待たない」


路地を出て直ぐの所にあったホテルへと連れ込まれ、手慣れた様子でチェックインする聖一に……貴司の心はまたどんよりと重く沈んだ物となった。
部屋に入ったらまずは落ち着いて色々聞こうと思ってたのに、そのままベッドに押し倒されて動きが取れなくなってしまう。


「話があるなら後で聞くよ」


頬をペロリと舌が這う。
両手首は顔の横へと縫い付けられた状態だから、抗う事は難しいが、それでも必死になりさえすれば、話をさせてくれる位にはなると考えた貴司だが、ふと過ぎった光景に……唾をコクりと飲み込んで、体から力を抜いた。


「……分かったから……手、離せ」


自ら顔を少し上げて、彼の唇にキスをする。
軽く触れるだけのそれに、聖一は少し驚いたような表情をしたけれど、抵抗しないと信じたのか……暫しの後、掴んでいる手を離してくれた。


「スーツ皺になるから……脱ぐ間、ちょっと離れて」


「ダメ。俺が脱がせるから……貴司はじっとしてて」


「……っ」


真っ直ぐ自分を見下ろす瞳に思わず見惚れそうになる。
逆らわないと決めた貴司が黙ってコクリと頷き返すと、長い指が首に掛かってネクタイをスルリと外した。


「顔、真っ赤だ……可愛い」


「可愛くなんか……」


手際良く上着を剥がれ、シャツのボタンを外されながら、からかうような彼の言葉に貴司は何とか返事をする。
少しでも羞恥を消そうと視線をウロウロさ迷わせ……普通のホテルと違う内装に気付いて貴司は目を見開いた。


「ここって……」


「ん?ラブホだけど」


「っ!」


聖一の言葉を聞いて、心拍数が更に上がる。


「そっか……貴司初めてなんだ。普通のホテルとあんま変わらないでしょ?」


「で……でもっ」


思わず動いてしまった視線に気付いた彼が低く笑った。


「いいよ。気になるなら全部買ってあげる」


「違っ!そうじゃ無くて……あぁっ」


まだ反論の途中なのに、ボタンを全て外した聖一が、インナーシャツの裾を捲って直に乳首へと触れて来る。


「もう話は終りだよ……愛させて」


「あ……んぅっ!」


その言葉に、貴司は弱い。
どんな言葉でも彼の願いには結局応えてしまうのだけど、今日は色んな事があって、頭の中が混乱していた。


学校では……一緒の女性がとても親し気に振る舞っていて、路地で出会った綺麗な男ともかなり親密に話をしてた。
このホテルだって様子から見て、きっと何度も利用した事があるのだろう。


「やめっ……いたぃ!」


「貴司がよそ見してるからでしょ」


必死に思考を纏めていたら、ピアスを軽く引っ張られた。
鈍い痛みに小さく呻くと今度はそこを労るように、乳首を軽く摘んだ指にヤワヤワ揉み込まれてしまう。


「っ……あぁっ」


「もう、こんなに固くなってる」


刺激を受け、しこった乳首を緩急を付けて弄られて……そこから生まれる甘い疼きに貴司の口から喘ぎが漏れる。


「ん……くぅ」


聖一によって開発された尖りは感度が良くなっていて、淫らに感じる自分の体に貴司はいつも戸惑うが……結局何の手立ても無いまま彼の手管に溺れてしまう。


「このまま、此処で一回イッて」


顔が近付き右のピアスに、カチリと歯が立てられた。


「……っ!?ダメ……ス、スーツがっ……」


「いいよ、汚しても」


「や……止めっ!あっ、やぁ!!」


制止の言葉は聞いてもらえず、金具を歯で引っぱりながらチュウッと尖りに吸い付かれ、反対も爪で摘み上げられて貴司の体がビクビク跳ねる。


「くっ……うぅっ」


それでも何とか踏み止まろうと、爪先をギュッと丸めたのは……僅かながらの反抗心が胸の中に芽生えたから。


「貴司?」


不満気な声に視線を下ろすと、無表情な彼がいて……。


「ごめっ……でも、着替えも無いし……」


本当は、理由は別の所にあった。
聖一の事を信じていない訳じゃ無いが、何だか無性に不安になったりモヤモヤとした気持ちになり、無条件に受け止めたいのに上手く折り合いが付けられない。


―――これは、きっと……。


「へえ、そんな事考えられるなんて……随分冷静だね」


戸惑う貴司の視線の先……整った薄い唇が、ニヤリと綺麗な孤を描いた。





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あきゅろす。
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