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過去拍手
醒夏 番外E



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普段は割としっかりしていて固いイメージの強い貴司が、こんな風に甘えて来るのはセックスの時くらいだが、今日は朝の事件のせいか何時もに増して艶っぽい。


「ゴメン、止まんなくて……痛かった?」


背中に回った貴司の指が震えているのを感じ取って、きつく身体を抱き返しながら彼が落ち着くまで待った。
一度欲望を叩き付けたからそれ位の余裕はある。


「セイ、もう……」


胸に密着してる貴司が、頬をそこに何度か擦り付け瞳を潤ませ見上げて来る。


「ん?」

「大丈夫……だから」


『抱いて』の形に口が動く。
腹に当たる貴司のペニスは萎える事なく昂っていて、無意識にそれを擦り付けられれば聖一だって堪らない。


「自分で入れる?」


「……できなっ」


意地悪をして尋ねると、みるみる内に耳まで真っ赤に染まる貴司のアンバランスさが、聖一を更に駆り立てて……常ならばここで彼の懇願を切り捨ててしまう聖一だが、せめて今日は優しくしたいと思い直して華奢な身体を包み込んでから横たえた。


「ふっ……うぅ」


首筋に痕を幾つか付け、上がる吐息を飲み込むように唇をそっと重ね合わせると、舌を使って縮こまっている貴司の舌を搦め捕る。


「んっ……」


同時に鬼頭を軽く擦ると気持ち悦さげに喉を鳴らし、聖一の背を掴んだ貴司が腰を緩く揺らし始めた。





半年間……時には貴司を縛りもしたし、不安な気持ちをぶつけるように酷く嬲った事もある。
なのに彼は全てを受け入れその上で、嫌な事は嫌だと言い、常に自分を愛していると言葉に出して伝えて来た。


変わろうとしている姿に、聖一自身も変わりたいと思えるようにはなったけど、貴司だけを求める気持ちは絶対に変えられない。


―――離せない。


彼を知れば知る程に、思いは大きくなる一方でそれは留まる事がない。
だけど……同じように求めて欲しいと思っていた昔とは、今は少しだけ違っていた。





****





包み込んでくる体温が、暖かくて心地好い。


「……ん…セイ?」


目覚めると……既に暗くなっていて、淡いライトが向かい合わせの聖一の顔を映し出す。


「目、覚めちゃった?」

「うん、今……何時だ?」

「多分八時位かな」


額にチュッと口づけられて顔に熱が集まった。
何回も求められた後……汚れを落とすと風呂に連れられ、そこで更に挑まれた後の記憶が全く残っていない。


「ごめん、俺……」


いつも殆ど行為の途中で気を失ってしまうから、彼を最後まで満たす事が出来ない自分が情けない。
貴司が謝罪を口にすると、優しい腕があやすように背中をトントン叩いて来た。


「無理させてるの俺だから……今日は、優しくしたつもりだったんだけど……ね」


微笑む顔にドキッとする。
最近は良く垣間見る事が出来るようになったけど、影を帯びないその表情を見る度貴司の心の中は、愛おしさで包まれる。


「いいよ、今はちゃんと、分かってるから。それよりセイは……」


言いかけて言葉に詰まった。
僅かずつの変化から、聖一が自分の事を信じようとしてくれてるのは間違いないと思っている。
だけどそれを尋ねる勇気が持てずに今まで来てしまった。


今日が区切りになるのなら、思い切って聞いてみたい。


「少しは俺を、信じてくれてる?」


声に出すだけで喉が渇く。
聖一の吐いた小さな息に後悔がすぐに押し寄せて来て、身体をピクリと震わせると、背中から動いた片手が貴司の顎を掬い取った。


「ホントはさぁ、ずっと鎖に繋いで……貴司の中を俺だけで一杯にしたい。けど……貴司が好きだから、望むようにしてあげたいって、今は思ってる」


「……それって」


「信じるとか信じないとか、そうゆうのは分からない。ただ……大事だから大切にしたい」


眦にキスが落とされる。
確りとした答えじゃ無いけど、だから余計に真実味を帯び彼の心の変化が分かって目の奥がツンと痛くなる。


「……でも、もし貴司が離れたいって言っても、放す事は出来ない」


そこは明確に断言され……どこかちぐはぐな彼の言葉に、貴司は一瞬目を丸くするがすぐに笑みを取り戻す。


「ありがとう。俺もセイが、大切だよ」


『望むようにしてあげたい』
の範疇は、だって自分も同じたから。


「きっと、セイが思ってるより……俺はセイが好きだ。だからこれで繋がれてないと……不安でたまらなくなる」


自分の指で尖りのピアスをそっと摘んで持ち上げると、顎を掴んだ聖一の指に僅かに力が込められた。


「就職決まったら、夏になっても見えないような方法、考えないと……んぅっ」


恥ずかしい事を言ってしまったと逸らそうとして紡いだ言葉は、終わる寸前に聖一の口でそっと優しく塞がれる。


「んっ……ふぅ」


チュッ、チュッと音をさせながら啄むようなキスをされ、ピアスを摘む指を上からキュッと掌で握り込まれて羞恥に頬を朱く染めると、一瞬口を離した彼がまた
「可愛い」
と、囁いた。


「俺はっ……ううっ」


反論を試みたものの、再度塞がれた唇からは呻き声しか出せなくて……。


「んっ」


同時にクイッとピアスを引かれて、身体まで熱を帯び始める。
明日に響くと思いながらも彼をそのまま受け止めるのは、貴司自身がそれを強く望んでるからに他ならない。





『明日からも、よろしく』


……と、本当は今日言いたかったがこの状況では難しいから頭の隅に追いやった。


聖一は大学へ行き、貴司も上手く就職できれば二人で過ごす時間もきっと、変化して行くのだろう。

不安はある。

だけどそれより期待の方が少し大きく膨らむのは、聖一と自分の距離がまた縮まった気がするから……。


「ふぅ……んっ」


貴司がそんな気持ちを込めて自ら舌を差し出すと、まるで意図を汲み取ったように舌先へ軽く噛み付かれる。
その甘く、切ない痛みに胸の奥が満たされて……貴司は小さく身を震わせると彼の腕へと全てを委ねた。



end

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あきゅろす。
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