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三周年記念
9



「これ、解いてくれるか?」


抱き締めたくて堪らないから貴司がそう声にすると、聖一の腕が前へと動いて脇下に手が差し込まれる。


「なっ……セイ?」


そのままヒョイと持ち上げられ、膝の上へと引き上げられた。


「解かないよ。貴司がうん≠チて言うまで……今日はいかせてあげない」


「なっ……そんな無茶苦茶なっ、だってお前、今、俺の意志を尊重するって……」


「気が変わった。だって貴司、迷ってたろ?今うん≠チて言わせなかったら、ダメだって思ったから」


唇に薄く笑みを湛(たた)えて、そう言い放った聖一に、先程まで表れていた迷いを帯びた色はない。


「どうして……お前は、そう極端なんだ」


「貴司が甘やかすからだよ」


腰を抱くように腕を回され、尾骨の辺りを指が這う。


そのまま割れ目をツッとなぞられて痺れたように背筋を反らせば、無防備になった喉にキスをされ印が付く程強く吸われた。


「あ、ぅっ……セイ、待て……だったら……こんな事、しな、で……話、すればいい」


快楽に流される形で貴司がイエスと言った所で、きっとお互いわだかまりが残ってしまう事だろう。


「自分の事は分からないけど、貴司の事は良く分かるよ……こうやって体に聞かないと、なかなか本音を話してくれない。前は、俺が望む言葉を言わせる手段でしか無かったけど……今は、ちゃんと見えるから」


「それはどうい……」


「貴司は考え過ぎるって事」


「んっ……んぅっ」


反論する暇(いとま)も与えず今度は口を塞がれた。
何を切っ掛けに彼がいつもの調子を戻したかは知らないが、こうなってしまえばもう、抵抗なんて無駄なだけだ。


―――考え過ぎるって、確かに……そうだけどっ。


「うっ……ふぅっ」


キスに翻弄されながら、素肌に触れる彼の腕や手が、まだ僅かに震えているのに気付いて貴司は驚いた。


―――ああ、そうか……お前は……。


『撫でられた時の感触は、今でも良く覚えてる』


聖一が放った言葉が頭の中で木霊する。


あれ程の出来事が、幼い子供のトラウマにならないなんて絶対に無い。
多分、聖一自身も気付けていないだろうけれど、幼い彼はきっと両親の愛情が欲しかったのだ。
例え歪んでいようとも、撫でられた記憶が今も消え去ってしまわない程に……。


―――似てるんだ……俺たちは。


与えられて当たり前の愛情を与えられずに育ち、心の奥では欲しているのに声に出しても無駄だと悟り、更にはそれから目を逸らして無くても平気と虚勢を張る。


可哀想だと思われるのも、同情に媚びを売る事も……潔しと出来ないから、だから平気な振りをする。


―――でも、きっと、誰より……。


「ん……ふぅっ」


慣らされていないアナルに指がギリギリと入り込んで来て、痛みに貴司が小さく呻くと、一旦口を離した聖一がそのまま体を抱き上げて……部屋を移動し始めた。


「セイ、腕取って……お願いだからっ」


「ダーメ」


逃げたりなんかしないのに、きっと分かってる筈なのに……どうしてそんなに頑ななのか貴司にはそれが分からない。


「セイっ……あっ」


懇願するよう呼びかけた途端、ベッドに体を放られて、起きあがろうと動いた所でうつ伏せのまま両足を掴まれ、引き摺るように聖一の肩へと太股を担ぎ上げられた。


「まっ……やめ……離せっ」


アナルが丁度彼の目前に、晒されるような体勢に……慌てて貴司は体を捩るが大した抵抗にはならない。


「あ、やっ……ああっ」


無言のままの聖一の舌がアナルの縁をベロリと舐め、その感触に貴司の背筋がゾクリと痺れて総毛立った。



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