三周年記念
7
***
「ん、ふっ……うぅ」
ジュルジュルという唾液の音が、貴司の鼓膜を中から揺さぶる。
口で聖一の前を寛げ、殆ど兆しの無かったペニスへ貴司が舌を這わせてから……十分程が過ぎていた。
聖一のそれは勃ち上がり、口に含むも大変だけど、彼が良いと言ってくれるまで止める事は叶わない。
―――なんで、こんなっ。
「んっ……んふぅっ」
「もっと、奥の方まで咥えて」
始めて少し経った辺りで、口を離して休憩したら、尖りのリングに細い鎖を通されそれを引っ張られた。
「ん、う゛ぅっ!」
少しでも気を抜いたりすれば違う責め苦が待っているから、懸命に口を動かすけれど徐々に顎が動かなくなる。
「貴司、美味しい?」
「ん、んぐぅっ」
喉の奥まで突っ込まれ、それでも貴司は動ける範囲で必死に何度か頷いた。どれだけ自分が聖一を好きか伝える術はそれしかない。
「可愛い。貴司はホント、可愛いよ」
「ん、んぅっ……ふぅっ!」
ピアスの鎖を強く引かれ、ペニスで喉を何度も突かれて、えづいた貴司は頭を振るけど、彼の大きな掌で髪を掴まれてるから動けない。
紡ぐ言葉の穏やかさとは全く逆の行動に……涙が出そうになってしまうが、必死に堪えて貴司は彼の太いペニスに舌を絡めた。
「こういうのも、好きだよね」
「んぐぅっ!」
舐める内、質量を持った自身のペニスを爪先でツンとつつかれて、貴司は腰を引こうとするが、許さないとばかりに股の間に脚が差し込まれ、足の甲を器用に使って尻を手前へと引き寄せられる。
「こっちの孔も、きっとヒクヒクしてるんだろうね」
「んっ、ふぅっ」
抵抗できずに呻いていると、爪先で、アナルをトン突つかれた。
聖一は靴を脱いでないから、ひんやりとした革の感触と、直接的ではない刺激に……貴司の腰は意思に反してゆっくりと動き出す。
「やらしいね。普段は真面目そうなのに……本当は、こんな所にピアス開けられて、ペニスをしゃぶって悦ぶ変態だったなんて……きっと誰も想像出来ないだろうね」
「うっ……んぅっ」
―――違う、こんなの、セイじゃなかったら……。
苦痛なだけだと言いたいけれど、口をペニスで塞がれていては伝える事が出来なかった。
「貴司は何処(どこ)に精液が欲しい?口でいいの?」
「んう゛っ、ふぅっ」
言葉と共にペニスが抜かれて、貴司は肩で息をする。
顎を取られて顔を上げると、聖一の顔も僅かに紅潮していたから……状況を忘れ嬉しいような気持に貴司は包まれた。
「……後ろに、挿(い)れて……ほしい」
「後ろって何処?俺、馬鹿だから分からないや」
「意地悪……言うな」
一緒に暮らし始めた頃はこんなやり取りばかりだったが、最近は影を潜めていたから、改めて言えと命令されると恥ずかしくて堪らない。
「意地悪は……貴司だろ?」
言葉遣いがにわかに変わり、驚きに目を見開くと……咬みつくように口を塞がれて貴司は身体を強張らせた。
「んっ……ぐぅっ!」
―――やっぱり、怒って……。
強引に割り込んできた舌に、歯の裏を舐められて……貴司が身体を引こうとすると、鎖が強く引っ張られる。
「うぅっ……ん、んぅぅ!」
更にはペニスを靴で踏まれ、貴司は痛みに身悶えた。
―――痛っ……痛いっ!
きっと加減はしてくれているし、以前の方が痛かった……と、必死に意識を逸らそうとするが、そんな努力を打ち砕くように圧力が更に大きくなる。
「ふう゛ぅ……ん、うぅっ!」
―――なんで?こんな事しなくたって。
大抵の事は話せば理解出来る関係を築けていたのに、こんなやり方は酷すぎるんじゃ無いかと思った貴司は暴れ、ありったけの勇気を出して彼の舌へと噛み付いた。
「……んうぅっ!」
軽く噛み付いただけのつもりが、血の味が口の中に広がり、動揺した貴司の鼓動がひと際大きく身体に響く。
こうすれば……聖一がすぐに離れてくれると思っていたが、予想は外れて更に奥深く舌が入り込んできた。
「んっ、んぐぅっ……」
角度を変えて舌裏も舐められ、飲み込めない唾液が端から溢れて顎を伝い落ちる。
下肢を苛む脚が外され、乳首に繋がる鎖も放され、チュクチュクというキスの音だけが部屋の空気を震わせて……貴司は自分の背筋が粟立ち、下肢が熱を高めていくのを感じて身体を震わせた。
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