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三周年記念
6



強引なのはいつものことで、出来る限り受け入れたいと思っているのも本当で……。


―――けど、だけど……。


「直ぐに返事をしろって言うなら……ごめん。俺、今の会社辞めたくない。だから……」


言いながら、それも違うと貴司は思う。
聖一が、二十歳にして起業したのは驚きだが、それを凄いと素直に思うし手伝いたいとも思っている。


―――じゃあ、この気持ちは?


「分かった。それなら俺が何とかする」


穏やかな、静かな声音に背筋を冷たいものが走った。


「セイ」


怒らせたかもしれないと思い貴司は体を強張らせるが、彼の瞳に怒りの色は一つも浮かんでなんかいない。


「ちょっと予想外だったけど、貴司がそうしたいなら、それでいい」


『だから怖がらないで』と続いた言葉に目の奥の方がツンとなった。


―――そうじゃない。俺はただ……。


こんな時、自分の気持ちや、やりたい事を、考えたり……伝える努力を怠っていた今までの自分が恨めしくてたまらなくなる。


受け身でいるばかりじゃなく、与えたいと思っているのに、どうしてこんな大切な時に、心がぼんやりするのだろう。


「俺は……」


「貴司、脱いで」


額にキスを落とされて……話はここで終わりとばかりに聖一がそう囁いた。
見下ろしてくる彼の瞳に体の奥が熱を帯びる。


「……分かった」


ジャケットは既に脱いでいたから、ワイシャツのボタンを外して前をおずおず寛げると、アンダーシャツの裾を掴んでゆっくりと引き上げた。


毎日やってる事だけど、首の後ろがゾクゾクする。


「これ、大丈夫?誰にも気づかれたりしてない?」


「冬だから、ジャケット脱いだりしないし……だから……んっ」


リング状のピアスを摘まれ軽く上へと引っ張られ、思わず小さな声を上げると彼が喉でククッと笑った。


「やっぱり、リングの方がいいね」


夏は棒状の目立たぬピアスを嵌められていたけれど、それでもいつバレてしまうか心配で堪らなかった。


「やめっ、早く取っ……」


「ダメ。今日は俺のお祝いだから、好きにさせてもらう」


「そんな」


いつも好きにしている癖にと喉元まで言葉が出るが、口を噤んで貴司は彼の頬へと指で軽く触れる。


「ごめん、セイ……おめでとう。凄いよ、大学生なのに、社長なんて」


「そんな事無い。資本と少しの知識があれば、誰でもなれるよ。問題はこれからどれだけの利益を上げて行けるか……だね」


「誰でもなんて……あっ!」


「この話はここでお終い。貴司、自分で全部服を脱いで、それから俺のを舐めて」


話の途中でピアスを引かれて貴司が身体を反らせた途端、そう命じる声が聞こえて思わず瞳を見開いた。


「え?」


「だから、裸になって、フェラしてって言ってるんだけど……出来ない?」


やはり、彼は怒っていたと茫然として貴司は思うが、その表情や雰囲気からは負の感情は伺えない。


ペニスを舐める事はあるが、こんな風に自分だけ……裸になった事はなかった。


「分かった」


彼の言葉に逆らえなくて、コクリと小さく唾を飲む。上衣はすでに脱いでいるから、ズボンと下着を手早く脱ぎ去り、羞恥に身体を赤く染めながらソファーの前に跪いた。


そうすれば、聖一からはあまり見えないと思ったから。


「手、使わないで出来る?」


「それは……」


「して」


「え?……セイ?」


ネクタイを取った聖一が……貴司の身体を抱き締めるように腕を背後に回してきて、抵抗する暇も与えず、両手首を背中で括った。


「怒ってる?」


「残念だとは思ってるけと、怒ってなんかいないよ」


「じゃあなんでこんなっ……」


久々に腕を拘束され、動揺した貴司は彼に縋るように問い掛けるけど、優しい手つきで頭を撫でられ混乱は更に酷くなる。


「今日は俺の好きにするって言ったよね」


微笑む姿に邪気は無く……言葉に嘘は見いだせない。だから、自分が負い目を感じているからそう感じてしまうのだ……と、貴司は思う事にした。



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