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偶然という名の運命





「私はフランツ・アーノルド。階級は大佐です。以後お見知り置きを」


ルークは膝をつき恭しく一礼した男、フランツを見下ろした。
空みたいな青い目、一つに結ばれた金髪(いい年した男だろうにリボンで結んでいた)、健康的な少し黒い肌に人当たりの良さそうな笑顔。
マルクトの軍人なのだからここは警戒すべきなのだろうが、どこかガイに似た空気にルークは好印象を持った。


今どうしてこんな状況にあるかというと、ルークがリンゴを盗みかけ(買い物の仕方を知らなかった)漆黒の翼と間違えられ、村の代表であるローズの家へと連れてこられたのだ。
そこにいたマルクトの軍人であるフランツ、チーグルの毛を見つけてきた導師イオン、後から入ってきたこれまた軍人のジェイドによって無実を証明されたのはいいが、この目立つ髪だ。結局正体がバレてしまった。


「これは事故で…!決して敵対行動では…!」

慌てて弁解しようとしたティアを、フランツが制した。

「公爵の御子息は軟禁状態にあると聞いた事があります。それが貴公はここにいらっしゃる…緊急事態なのでしょう?丁度、私共もキムラスカへ行くところです。お屋敷までお送りましょう」

マルクト兵がキムラスカへ行く、と聞いてルークとティアは顔を見合わせる。
そこに、にこやかな笑みを浮かべたイオンが進み出た。

「心配しなくても大丈夫です。僕達は和平交渉に向かっているのですから」
「ルーク様の事はすぐにキムラスカ側へ通達しましょう。屋敷まで護衛もいたします。その変わりと言っては何ですが…キムラスカ国王へ我々を取り繋いでもらいたい」

こちらも急いでいて伝達等上手くいってないのです、と自嘲気味に笑うフランツにルークは頷く。


「わかった、約束しよう」

隣でティアが安易すぎないか、と尋ねてきたが、このまま二人旅というのもキツいものがあるし、ここまでしてくれるのだ。
それにフランツは信用できる、と何故か感じた。


「ありがとうございます」

導師が微笑み、二人の大佐が一礼する。


「ただし、条件がひとつ」

ルークがそう言えば三人が顔を見合わせた。

「俺は敬語とか苦手だ。普段の口調でいい。ルークと呼んでくれ」

堅苦しいのは好きじゃない。
そう言うと、フランツがにっこり微笑んだ。



「それじゃあルーク、よろしく」


それが俺とフランツとの出会い。







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