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その想い、虚となりて





淡い想いは儚く散って。



屋敷にいた頃、俺の世界には三人しかいなかった。
その中の一人がガイ。
いつも隣にいて、言葉を教えてくれて、一緒に遊んでくれて。
俺の一日はガイで始まりガイで終わっていた。喩えなんかじゃない、本当にそうだったんだ。

頭を撫でて誉めてくれるのが嬉しくて、歩くのも喋るのも頑張った。
夜一人で寝るのが淋しくて、我儘を言った事もある。

俺はガイが好きだったんだ。





『失望させないでくれ』


アクゼリュスで全てに絶望して、『ルーク』を作り出して。

それでも、ガイだけは完全に捨てきれなかった。
タルタロスで俺を置いていったけど。俺が代わった事に気付かなかったけど。
一番に俺を俺だと言ってくれたのはガイだったから。

だけど。




『ガルディオス家の嫡男』
『ホドの生き残り』

『一族の仇』


“ルーク”に聞かせたくなくて入れ代わっていた俺に告げられた真実。
あの屋敷で頭を撫でてくれた手も、包んでくれた腕も、向けられた笑顔も。

全て偽りだった…?


後の事はあまり覚えてない。いつの間にか話は終わり、いつの間にか“ルーク”と入れ代わっていた。





ダアトで。

俺の告げた真実に驚くガイを見て、心底笑いたくなった。
俺達は始めから終わりまで偽りだらけで、結局どっちもどっちだったんだな。




俺の存在をもってしてガイにつけた傷が、一生塞がらなければいい。
一生俺の事を思って、感じて、後悔すればいい。


さよならだ、ガイ。













ごめん、ごめんなさい。
本当は偽りでも何でもいい。あの頃に、ガイとあの狭い庭で遊んでいた頃に帰りたいよ。
俺にとってあの頃が一番幸せだった。

それは絶対叶わない儚い夢だけど。







あきゅろす。
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