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【新説】虹色の鱗【モンスターハンター】
8.
97:◆d2hCxOK7H.
11月20日21時30分33秒 nBMq04i9O

兄者は長く伸びた髪の毛をかきあげた。そこには痛々しい傷痕が残っていた。
恐らく鋭い爪でひっ掻かれたのだろう。肉はえぐれ、皮膚は引き裂かれ、その傷の深さを物語る。


( ´_ゝ`)「数年前…俺が友人のハンターと狩りに出掛けた時に出来た傷だ……あの時もヤツがいた…あの蒼いイャンクックが…」


( 'A`)「あのイャンクックは何なんだ?あんな種類もいるのか…?」


( ´_ゝ`)「いや、あれも普通のイャンクックだよ。長い生存競争に打ち勝つ為に進化した、いわゆる『突然変異』ってやつだな…」


手には折れたピッケルが握られている。ピッケルだけでも十分強力な武器となる。
だがこうなってしまえば、ただの棒切れに過ぎない。


( ´_ゝ`)「普通のイャンクックならダメージ位は与えられたさ…しかしヤツには通用しない……これが証拠だ」


兄者は手にしていた木の棒を放り出した。乾いた音が空間内に響きわたる。


( ´_ゝ`)「ヤツの特徴は獰猛、堅い鱗、人知を超えた脚力だ…厄介な飛竜を見付ちまったもんだな…」


兄者は軽いジョークを言いながら、己の境遇を嘲笑した。

しかし、いつかは決着をつけなければならない…

そうも考えていた。


101:◆d2hCxOK7H.
11月27日08時00分52秒 b7YBVEzBO

どれくらい時間が経ったのだろうか…四人は雨音の鳴り始めた洞穴の中、静かに時を待っていた。

雨音の中に時折、衣擦れと砥石が心地好いリズムを奏でる。黙々と作業を続ける兄者の横顔はいつもとは違い、別の人格が乗り移っているとさえ思える程であった。彼の愛刀「フロストエッジ」が、徐々にその輝きを増していく。



( ´_ゝ`)「…ここに置いてて良かった…また、こうやってアイツと対峙できるなんてな…」


剣を研ぐ手に一層力がこもる。フロストエッジは特殊な剣で、その性質上出来るだけ早く研いでやる必要があった。刃に宿る微かな冷気が水分に反応し、表面に薄い氷の膜を形成してしまうからだ。

弟者は普段と変わらぬ表情でパンをかじっている。
肝がすわっているのだろうか、ウロウロと席を立つブーンをなだめている。

ドクオは黙ってあぐらをかいでいた。手をヘソの辺りで握り、目を閉じ、まるで僧侶が瞑想するような形をとった。
しかし彼の脳内は決して穏やかではない。


( 'A`)「…ただイャンクックを狩りに来ただけなのにな…まさか、こんな騒動に巻き込まれるなんてな……」


( 'A`)「それに…ガノトトスとか言ったか……あの竜はこちらを攻撃する素振りは見せなかった…単に見逃したのか、それとも別に考えがあったのか……」


( 'A`)「まあいいさ…俺はただ、あの蒼いイャンクックを狩る…それだけだ……あとの事は考えるだけでマンドクセ…」


そして再び自身に冷静さを取り戻させる。それだけしか出来ない。

その夜、四人が眠りに就く事はなかった。


102:◆d2hCxOK7H.
11月27日21時25分32秒 1QaQC/KJO

( ゚∀゚)「……」


ジョルジュは街から山火事の様子をじっと見ていた。



( ゚∀゚)「…どこかのハンターの不始末か、それとも別の要因か……どちらにせよ、俺達がでない訳にはいくまい…」



彼は気付いていた。
最近になって頻繁に見られるモンスター達の異常なまでの狂暴性、それにいち早く気付いていた彼はこうして毎日の監視を怠らない。

『バリスタ』設立にはそういった目的もあった。
ただモンスターを狩るだけの集団に非ず、時に飛竜を保護し、時に自然を守る、レンジャーのような存在だった。


ξ ゚听)ξ「相変わらず…山ばかり見ているのね、呆れた…」


( ゚∀゚)「ツンか…それが『バリスタ』の仕事だ、部外者になったお前が口を挟む事じゃない…!!」


ξ ゚听)ξ「本当に…相変わらずね……私はあなたに伝える事があったから来ただけよ、それ以外の何でも無いわ…!!」


二人の間に異様な空気が流れた。
かつての仲間である二人は互いに尊敬し合い、互いに憎しみ合っているのだ。

ツンは構わず話を続けた。
森の異変、蒼いイャンクックの出現、そして消息を絶っているドクオ・ブーン・流石兄弟の事を。


(;゚∀゚)「あの馬鹿…昨日あれだけ『森には近付くな』と言っておいたのに…ッ!!!!」


ξ ゚听)ξ「どうする気…?」


( ゚∀゚)「…無論、助けに行くさッ!!ツン、お前は街に行って『クー』を連れてきてくれ!!」


ξ ゚听)ξ「なんで私が…あんたが行けば良いでしょう!?私は部外者なんだから…ッ!!!!」


(;゚∀゚)「一刻を争うんだよッ!!俺は他のハンターに協力を要請してくる…頼むぞッ!!」



街は一気に混乱状態に陥った。
ジョルジュはバリスタに協力的なギルドを回り、ドクオ救出に必要な人員を集めた。

述べ30人

バリスタに対する信頼がこれだけのハンターを集めた。

あとはただ、無事を祈るだけだった。


103:◆d2hCxOK7H.
11月27日21時53分16秒 /yiR4DM5O

夜が明け、空に眩い光を放つ太陽が昇る。
早朝から森の奥地では死闘が繰り広げられていた。

四人一組の隊列をとりながら、襲い来るイャンクックを次々と討伐していく。

ドクオ達であった。


(;'A`)「奴の嘴には気を付けろよ!!あんなのモロに喰らったら…一撃であの世行きだぞッ!?」


( ´_ゝ`)「ふん…まだお前に言われる程、鈍っちゃいないさッ!!」


先頭を走るのは兄者だった。そのすぐ後方をドクオが追走し、最後尾はブーン、弟者が固めている。
イャンクックは脚力が発達しており、対峙するうえで注意すべき点は『背後を取られない』事なのだ。故に後方の守りを固め、先頭が前方の、真ん中にいる者は上空を警戒するこの隊列は、まさにイャンクック向きとも言える。


(;^ω^)「うはwwwwwこいつらガチで速いおwwwwwwwwww」


(;´_ゝ`)「とりあえず落ち着けブーン!!一匹一匹を確実に仕留めるんだッ!!」


豪快にハンマーで攻撃するブーン。彼が仕留め損ねた獲物を、弟者の正確な攻撃でフォローする。
ドクオは兄者のすぐ後ろを追走し、時に即興とは思えない見事な連携を見せていた。これには兄者も驚き、『ドクオの才能』を改めて評価した。

だが、今はそんな事を話してる暇など無い。


(;´_ゝ`)「この先を抜ければあの『蒼いイャンクック』の巣があるはずだ…そこで一気にケリをつける!!!!」



森を抜けた所にある高台、彼等はそこをただ目指す。兄者は何か考えがあるような顔をして、三人に笑顔で話しかけた。


(;´_ゝ`)「お前ら…高台に到着したらまず、『蒼いイャンクック』を狩れッ!!!」


兄者は攻撃の手を休め、何かを丁寧にこね始めた。
それの手助けをするように今度はドクオが先頭に立ち、イャンクックの相手をしている。
生き残る為に、兄者の策を必ず成功させなければならなかった。


105:◆d2hCxOK7H.
12月05日07時42分53秒 myfd3+3gO

(;'A`)「兄者ッ…危ない!!」


間一髪のところでドクオは兄者をイャンクックの嘴から守った。その隙をついて更に三匹のイャンクックが四人を取り囲んだ。
まともに相手をしている暇がない、まさに追い詰められてしまったのだ。


(;'A`)「し、しまった…!!」


(;´_ゝ`)「ここまでか…クソッ、あと少しだってのに…!!」


四人全員が覚悟を決め、各々が思うように戦おうと再確認した。
玉砕覚悟であった。

しかし突然、巨大な水柱がイャンクック達を襲い、甲高い鳴き声をあげながら霧散した。

後ろには昨日のガノトトスがこちらを睨みつけている。
その目はドクオ達に「先へ進め」と催促しているようだった。


(;^ω^)「き、昨日のガノトトスだお!!ブーン達の事を助けてくれたのかお!?」


(;'A`)「それは考え過ぎかもしれないが…何にせよチャンスだッ!!一気にここを抜けるぞ!!」


ガノトトスが見守るなか、ドクオ達は蒼いイャンクックの巣穴へと全力で駆け出した。ここまで来たら、後はやるだけであった。
細長い巣穴へと続く道を通り抜け、ひたすらに直進を続けると広い高台に出た。

緊張が最大限まで高まり、四人は息を整える暇も捨てて辺りを見回した。

そこには確かに居た。
兄者の視力を奪い、我がもの顔で高台に巣食う蒼いイャンクックの姿が。


( ´_ゝ`)「やっと見付けた…今日、ここで!!全てを終わらせてやるッ!!!!」


106:◆d2hCxOK7H.
12月07日20時55分31秒 f6yV37RFO

(;゚∀゚)「おーい、ブーン!!ドクオー!!!!」


ξ ゚听)ξ「こっちには居ないみたいね…一体どこへ行ったのかしら…?」


川 ゚ -゚)「…焦っても仕方ないから、とりあえず奥地へ進んでみよう…もしかしたら遭難しているだけかもしれない…」


ジョルジュ達のグループは湖の辺りを探索していた。背後には焼け野原が広がり、ジョルジュ達に余計な焦燥感を植え付ける。


/,'3 「ふふ…若い内に無茶はしとくもんじゃ…ただ、今回は『無謀』極まりない行動じゃが…」


( ゚∀゚)「荒巻殿…申し訳ない、うちの若い連中の為に一肌脱いでいただいて…」


/,'3 「なぁに…隠居した身とはいえ、まだ腕は錆び付いておらんよ……もっとも、これ以上脱いだら風邪をひいてしまうでな…」


軽い口調で冗談を口にする初老の男性。
彼の名は荒巻…『バリスタ』設立に貢献し、数年前に突如としてギルド界から足を洗った彼は、グループの先頭に立ってジョルジュ達を案内し始めた。


川 ゚ -゚)「荒巻老…それより早く先へ進もう…日が暮れてくると捜索が難しくなるからな」


彼女は『クー』
ジョルジュ、ツンが共に一目置いているフリーのハンターである。その素晴らしい功績が認められ、世界で屈指のギルドから常に声がかかる程の有名人である。
とある事情によりこの島にたどり着き、以来この島での生活に順応していった。

二人とも特殊な形状をした『双剣』を操り、その世界では敵無しと言われている強者だ。


( ゚∀゚)「ひとまず奥地へ行ってみよう…このままじゃラチがあかないからな…」


107:◆d2hCxOK7H.
12月12日20時23分56秒 6KVx9ODBO

(;'A`)「でやぁあぁぁぁ!!」


俊敏な動きでイャンクックを翻弄しようと、ドクオはその足下に潜り込み攻撃を続けていた。蝶のように舞い蜂のように刺す、とはこの事だろう。
勇猛果敢に攻撃を続けるドクオを嘲笑うかのように尻尾を振り回し、逃げようとするドクオに追撃をかける。


(;'A`)「ぐあぁ…ッ!!!」


辛うじて盾でその攻撃を防いだが、体格の差は歴然である。小さなドクオはその勢いに押され、大きな杉の木に体を叩き付けられた。


(;'A`)「い、今だ…やれぇ!!!!」


(;^ω^)「合点承知之介だおwwwwwおkwwwwwwwwww」


ドクオの合図と共に三人、ブーン・兄者・弟者が一斉にイャンクックへと襲いかかった。


( ´_ゝ`)「このぉ…しぶとい奴だなッ!!」


(´<_` )「兄者、奴の弱点を分析するんだ!!奴の反応を見逃してはいけない!!」


(;^ω^)「それは無理だおwwwwwもはやファビョってるおwwwwwww」


しかしそれも虚しく、ブーン達の放った攻撃はことごとく弾き返される。
だが、兄者の一突きが戦況を覆した。

兄者は渾身の力を込めて、薄い水色に輝くフロストエッジをイャンクックの首に繰り出した。
すると堅い皮を突き破り、刃の切っ先が首の肉へと吸い込まれていった。

痛みに強烈な叫び声をあげるイャンクックを見て、兄者の予想は確信へと姿を変えた。


( ´_ゝ`)「やはりか…ブーン、ドクオ!!首だ…首を狙って全力で斬りつけろ!!!」


(;'A`)「首だと…!?」


(;´_ゝ`)「そうだッ!!首の方が比較的肉質が柔らかい…そこを狙うんだよッ!!!」


110:◆d2hCxOK7H.
12月17日01時56分09秒 jHwFn/BLO

兄者のアドバイスを聞いたドクオはすぐさま駆け寄り、イャンクックの首目がけて飛びかかった。
刃はなんの抵抗も無く皮膚を貫き、同時にサンダーベイン特有の強い電撃がイャンクックを襲う。傷口からは血が噴き出す。

暴れまわるイャンクックに弾き飛ばされたドクオはその現状を見て、体の芯から溢れる震えを抑えた。
まだ終わってはいない。


(;'A`)「よし…今のうちに追撃を……なッ!?」


(;^ω^)「ああ…な、なんて頑丈なんだおぉ!!!!」


(;´_ゝ`)「く…ッ!!しまった…!!」


ドクオ達が安堵した次の瞬間、傷付いたイャンクックは空高く飛び上がり、更に奥地へと姿を消した。
逃げられてしまったのである。


(;´_ゝ`)「まずいな…これ以上奥は……この面子じゃ無理だろ…」


兄者は絶望した。
宿敵である蒼いイャンクックを逃がしてしまった事に対してである。
奥地へ追い掛ける事も出来たが、そこには他のハンターが恐れる「リオレイア」のテリトリーになっているのだ。

「リオレイア」はあの「リオレウス」と並び称される火竜であり、熟練のハンターでも迂濶に手を出せない怪物である。


(;´_ゝ`)「くそッ…あと少しだってのに…」


( 'A`)「今は悔やんでも仕方ないだろ…とりあえず生きていただけでも幸いだろ…?」


そう兄者を落ち着かせながら、ドクオは地面に座り込んだ。立っているのもやっとのダメージを受けていたのだ。


(´<_`;)「ふぅ……しばらく休息をとろう、追撃するにしてもこの体力じゃあな…」


111:◆d2hCxOK7H.
12月18日07時48分59秒 rB2ghQzMO

「お前達、一体何をしているんだッ!?」


突如、静寂を切り裂くような怒声が響きわたった。座っていた者達が一斉に立ち上がり、武器を手にとった。安心しきっていた為、急な判断が既に出来なくなっている。


( ゚∀゚)「…ドクオにブーン、それに流石兄弟まで……」

( 'A`)「ジョルジュ…さんか…ッ!?」


( ゚∀゚)「かって…見れば分かるだろ?注意力が散漫になっている証拠だな…」


草むらの向こうから顔を出したのはジョルジュ率いる捜索グループの面々だった。
叱るジョルジュの顔にも安心感が広がっており、急にドクオ達は肩の力が抜けたように倒れこんだ。


ξ゚听)ξ「ちょ…大丈夫なの!?」


(;^ω^)「し、しばらくは無理そうだお…体中がバラバラになりそうだお…」


川 ゚ -゚)「とにかく無事で何よりだ……ひとまず近くのキャンプを借りて休むとしよう」


/,'3 「ふむ…この辺なら第三キャンプが一番近いだろう……そこまで歩いて行こう、傷の手当てもせんといかんしな」


荒巻が先頭に立ち、八人は一路キャンプを目指し歩き始めた。既に満身創痍な彼等には大変な作業であった。
ドクオはクーと荒巻の肩を借り、ヨタヨタとふらつきながらもしっかりと地面を踏みしめながら歩いていく。流石兄弟はダメージが少なかったので自力で歩いている。共に支えているのだ。ブーンはジョルジュの肩を借り、武器をツンに預けて歩き始めた。

なぜ生き残れたのか、それが不思議で仕方なかった。



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