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【新説】虹色の鱗【モンスターハンター】
7.
79:◆d2hCxOK7H.
11月14日00時54分19秒 QuIHCet4O

イャンクック

この島に棲む飛竜の中では比較的小型な系統に入る飛竜である。
おとなしい性格をしており、縄張りを荒らさない限り向こうから攻撃してくる事は無い。

彼等の習性は鳥によく似ている。

その大きな嘴で虫等の小動物を食す。聴覚が発達しており、天敵が迫ると逃げ出すという意外に臆病な面も見せる。

しかし、この島のイャンクックは少し違っていた。

凶暴化している、とでも言えばいいのだろうか。
時に集団で行動し、時には小さな集落を襲い、人に害を及ぼしていた。

そんなイャンクックを狩るのは新米ハンターの役目だった。
街を守るという意味もあるが、飛竜の中でも弱い分類に入るイャンクックを倒せない者が、後々飛竜を狩れるはずもなかったからだ。

一種の『登竜門』のようなものだった。




( 'A`)「遅いな…何してんだよ、アイツは…」


ドクオはバリスタで待機していた。

ドクオが初めて飛竜と出会ってから三週間が過ぎようとしていた。ジョルジュに定められた期限の日まであと一週間。内心ドクオは焦っていた。

流石兄弟に授けられた剣『サンダーベイン』にも慣れてきた。
街の人々との交流も増えてきた。

しかしそれだけでは一人前のハンターにはなれない。

バリスタに籍を置く以上、イャンクック討伐と『虹色の鱗』を採取して帰る事、これは絶対条件だった。


(;^ω^)「すまんおwwww酒場の渡辺さんと話してたら時間忘れたおwww」

バリスタの中に入ってきたのは、あの時ドクオと共にドスランポスと戦った青年『ブーン』だった。

彼は所属していたギルドを抜け、バリスタに参加していた。
本人曰く、居心地が良いからだおwwwww
だそうだ。


(#'A`)「お前…またあの『あれれ〜?』の子の所に行ってたのか……呆れるよ。」


(;^ω^)「ガチですまんこ…それじゃ作戦会議をはじめるお!!」


80:◆d2hCxOK7H.
11月14日06時35分00秒 LMVizXoDO

( ^ω^)「まずはコレを見るお……この街の裏にある森の地図だお。」


( 'A`)「…で、この二枚ある映画のチケットはなんなんだ…?」


(;^ω^)「そ、それは…気にしたら負けかなっと思っている…」


ブーンはチケットをしまいながら、地図の説明を始めた。この森全域には『ブルファンゴ』と呼ばれる狂暴な猪が生息している。
迂濶にテリトリーに入ってしまうと、あとはブルファンゴ達の餌食になってしまう。それを防ぐ為に前もって計画を立て、森の奥地へと進む必要があった。


( ^ω^)「この前のクエストで確認できたのはココ、ココ…あとココだお。」


( 'A`)「この辺りは霧が濃いからな…入り込んだらそれで一貫の終りだな…」


( ^ω^)「そうだお…そこで僕の考えたこのルートを使うんだお…」


ブーンは地図に自身の人指し指を載せ、一直線に見えない道をなぞった。
その道はブルファンゴのテリトリーをかすめ、その先にある「ヴェノアの丘」に向かう最短ルートだった。


( 'A`)「なるほど…しかしこのルート上には確か『ブルファンゴの巣』があったはずだ……リスクが大きすぎるな…」


( ^ω^)「確かにこのルートにはリスクがついて回るお…でも、この方法なら確実にイャンクックのいる奥地にまで辿り着けるお……僕の情報を信じてほしいお…?」


( 'A`)「ふ…ん…」


85:◆d2hCxOK7H.
11月14日22時46分35秒 odNf8iBCO

( 'A`)「仕方ないな…そのルートを使うか…」


( ^ω^)「そうくると思ってたおwwwwwじゃあ早速準備に取り掛かるおwwwwwwww」


ブーンとドクオは同時に席を立ち、各々の持ち物をチェックし始めた。
ドクオのカバンの中は思ったより整頓されており、乱雑さの微塵も無かった。内容は傷薬、食糧、研石など実用的な物ばかりだった。

対してブーンはといえば…


(;'A`)「おま…こ、これは一体…」


( ^ω^)「冒険に出るには欠かせない物ばかりだおwwwwwwww」


ポテトチップス、コーラ、液体ムヒ…今から命を賭ける戦いが始まるというのに、まるで必要無いものばかりであった。


(;'A`)「……」


(*^ω^)「あとみたらし団子とwww東鳩2とwwwwwあと…」


( 'A`)「置いてこい」


( ^ω^)「…え、でも…」


( 'A`)「置 い て こ い」


(;^ω^)「…わ、わかったお…だからそんなに睨むなお…」


お互いの荷物をチェックし終えたあと、二人はバリスタを後にし、森へと向かって歩き始めた。
ドクオは腰に流石兄弟から譲り受けた『サンダーベイン』を、ブーンは背中に大きなサボテンを背負い、意気揚々とイャンクック狩りに出掛けた。

そして二人の長い戦いが始まった。


86:◆d2hCxOK7H.
11月15日22時49分40秒 zXFbwVtwO

( ^ω^)「そういえばドクオ…」


( 'A`)「…なんだよ?」


( ^ω^)「昨日ジョルジュさんは何を言っていたんだお?…会議休んでたから聞いてないお…」


( 'A`)「確か……忘れた。」


くだらない話を繰り返しながら、二人は森の入り口へとやってきた。青々と生い茂る草木、太陽の光を反射する湖、平和に日々を暮らすケルビの群れ、今日もそれを見るはずだった。
しかし、状況は一転していた。

そこには美しい景色は無く、ただの焼け野原が広がっているだけだった。


(;'A`)「も、森が…燃えている…ッ!!!!」


(;^ω^)「何で…なんでだお!?昨日までは普通だったのに…一体何があったんだおッ!!?」


(;'A`)「俺に聞くなよッ!!と、とにかく…原因を探るぞ!!」


ドクオとブーンは二人で無惨な情景に見いっていた。ブーンが昨日見た親子のケルビは炎に焼かれ、もはや動く気配は無い。
辺りの木々は焼けただれ、残っているのは黒く焦げた草と、地面を濡らす大量の水だけだった。


(;'A`)「水…なんでこんなに…?…誰か消火しようとしたのか……」


(;^ω^)「ドクオ!!は、早く逃げるおッ!!見付かったお…!!!」


(;'A`)「見…付かった?」


ドクオ達が見たもの、それは群れをなすイャンクックと、その先頭に起つ蒼い体を持つ飛竜だった。

見た目はイャンクックだが普通のイャンクックよりも大きく、目の醒めるような蒼は燃え上がれ炎を背に一層映えている。


(;'A`)「蒼…い……イャンクック…?」


87:◆d2hCxOK7H.
11月17日08時08分21秒 BAQN5J0sO

(´<_` )「時に兄者……兄者はもう…剣を握るつもりは無いのか…?」


( ´_ゝ`)「何を今更…そんなつもりはないさ…」


街の裏側を通る細道、森を抜け奥地の鉱山を目指す二人は静かに語り合っていた。
腰に差した剣に手をかけ、弟者は更に問いつめる。兄者は手にしたピッケルを眺め、一つ溜め息を吐く。


( ´_ゝ`)「…俺はもうロートルだよ…昔ほどの力も、技も、知恵も無い……そんな男が今更ハンターに戻れる訳無いだろ?」


(´<_` )「しかし…同い年のジョルジュは未だ現役…兄者もまだ」


( ´_ゝ`)「くどいぞ弟者!!俺はもうハンターじゃないんだ…未練などあるはずも無かろう…!!


兄者は弟者を横目で見ながら吐き捨てるように言った。

兄者は昔、ジョルジュと肩を並べる程のハンターだった。しかしある事件をきっかけに、兄者はハンターを辞めた…辞めざるを得なかった。
それは精神的なものだった。


(´<_` )「兄者…相も変わらずウソが下手だな…」


弟者は心の中で囁く。
弟者は気付いていた。

鉱物の為とはいえ、なぜこんな山奥にまで鉱石を採りにくるのか、なぜ一本で十分なのに剣を二本持たせるのか…答えはわかっていた。


(´<_` )「…兄者が一番思っているんだ…ハンターに戻りたいって……何故無理をするんだ…?」


またも声にはならない声を出し終わってから二人は先へと進む。
しかし、いつもと雰囲気が違う。
そう思った時、大きなイャンクックが頭上を飛び去った。そしてそのイャンクックは、ある一点を目指してその場を離れていく。

向かっている場所には山火事で出来た大きな焼け野原が広がっている。


(´<_`;)「な、なんだ…あんな大きなイャンクックが…存在するのか!?」


(;´_ゝ`)「嫌な予感がする……弟者、あそこに向かうぞ!!付いてこい!!」


(´<_` )「承知」


二人は急な勾配の崖をすべる様に下っていく。

兄者の胸にある記憶が蘇ってきた。
自身がハンターを辞めるきっかけとなった、あの忌まわしい風景を…


88:◆d2hCxOK7H.
11月17日20時50分12秒 SfEW5z2DO

崖を滑り降りた兄弟が見たのは群れをなすイャンクック、その先頭に立つ蒼いイャンクック、そしてそれに囲まれている見た事のある顔…ブーンとドクオの姿だった。

ブーンとドクオはイャンクック相手に善戦していた。しかし数が数だ…そう長くはもたないだろう。


(´<_`;)「あ、兄者!!ドクオ達のピンチだ…早く助けよう!!?」


(;´_ゝ`)「悩んでいる時間はないか…!!行くぞ弟者ッ!!」


(´<_`;)「承知!!」


二人は矢よりも早く飛び出し、ドクオ達の救出に向かった。

兄者はピッケル、弟者はマスターカリンガを手にイャンクックの群れに突撃した。


(;'A`)「くそぉ…キリが無いぞこの数はぁぁあッ!!」


(;^ω^)「ふぉーwwしんじゃうwwwしんじゃうおwwwwwwww」


(;'A`)「うるせぇ……黙って手を動かせッ!!!!」


焼け野原にドクオの怒号とブーンの奇声がこだまする。

二人は湖を背にして戦っていた。四方の逃げ場は奪われ持久戦を強いられたドクオ達は、まさに絶体絶命だった。
情け容赦なくイャンクックは攻撃を続け、徐々にドクオを消耗させる

リーダーらしき蒼いイャンクックが空高く舞い上がり、ドクオ達目がけて急降下を始めた。
流石兄弟はそれを阻止しようとしたが、間に合わない。


(;´_ゝ`)「ブーン!!ドクオ!!逃げろぉぉ…ッ!!」


89:◆d2hCxOK7H.
11月17日22時01分22秒 SfEW5z2DO

蒼いイャンクックはドクオに狙いをつけ、空高くからの攻撃に出た。

そのスピードは人間の想像力を超え、不覚にもドクオは反応する事さえ出来なかった。
気付いた時には、もはやイャンクックは眼前にいた。


(;'A`)「!!!!…ッあ…」


(;^ω^)「ドクオぉぉぉぉおぉぉぉッ!!!!」


鋭い嘴がドクオの胸に襲いかかる。その時である。


湖の表面が激しくしぶきをあげ、波紋が湖全体に広がってゆく。
まるでスコールのように降り続く水面の向こうにそれは居た。

イャンクックの三倍はゆうに超える巨体を持ち、その姿はまさに『水の神』を彷彿とさせる。
神々しい光を放つ瞳は全てを映し出し、敵意を剥き出しにしている。


魚竜『ガノトトス』


初めて見る魚竜に、ドクオは圧倒的な何かを感じていた。


(;'A`)「こいつは……でかいなんて代物じゃないぞ…」


(;^ω^)「あばばばばばばばば…爪が、爪がブーンの顔と同じ大きさだおwwwwwwwww」


(;'A`)「そりゃ…でかいな……」


ふと気付いた。

ドクオに攻撃を仕掛けた蒼いイャンクックは、ガノトトスの圧倒的な威圧感に気おされ、空中で哭きながら漂っている。

ガノトトスは眼前の情景をくるりと見渡した。

焼け焦げた木々の匂い。
普段は森の生物の憩いの場となるべき湖畔の風景が一変し、ガノトトスは茫然としていた。


と突如、ガノトトスが低い唸り声をあげて体を揺すり始めた。
目の色が輝くような金色から赤い血のような色へと変化していく。体の鱗を逆立たせて怒りを露にするガノトトス。

そして一閃


凄まじい水の束を口から吐き出し、イャンクックをまるで虫けらのように蹴散らしていく。


90:◆d2hCxOK7H.
11月18日07時29分54秒 LgUBLG15O

激しい水流がイャンクックを襲う。
その凄まじい衝撃を真正面から受け意識が途切れるものまで出ていた。


(;'A`)「なんて風圧だよ…こんなんありかよッ!!!」


( ´_ゝ`)「ドクオ!!ブーン!!こっちだ、早くこっちに走るんだ!!!」


(;^ω^)「あ、兄者さんかお!!でも…こんな水鉄砲が直撃したら…」


(´<_`;)「そんな事を気にしている場合かッ!?いいから早く逃げるぞ!!」


兄者達に促されるようにドクオ達は一目散に高台へと逃げ出した。
水砲によって吹き飛ばされたイャンクックがドクオ達の目の前に落ちてきても、かまわずに走り続けた。

小型とはいえ人間の数倍の体積をもつイャンクックが直撃すれば、ただでは済まない。

なんとか高台まで逃げる事の出来た二人は、そこから現状を把握しようとした。


十匹は超えるであろうイャンクックの群れに、ガノトトスはなおも水砲を放つ。
敵意を剥き出しにして、目の前の敵を薙払うその姿はまさに『水竜』の名を語るにふさわしいものだった。


(;´_ゝ`)「こっちには…気付いていないようだな…、今の内に逃げるぞ…」


(;'A`)「逃げるって…一体どこに逃げるんだよ…」


(´<_`;)「ここから南に歩いた所に俺達専用の採掘場がある…そこならば奴らの目からは逃れる事が出来そうだ…」


( ´_ゝ`)「そういう事だ…ついて来い!!」


イャンクックに見付からないように、静かにその場を離れるドクオ達。

ふとドクオが後ろを振り返ってみた。

ガノトトスの眼だけが、こちらの様子を伺っていた。


91:◆d2hCxOK7H.
11月18日07時55分54秒 Z9L0XtGBO

険しい獣道を抜け、四人は流石兄弟の採掘場へとやって来た。

なるほど、生活に必要な道具は全て揃っている。それどころか、あらゆる所にトラップが仕掛けられており、これなら他者の侵入を許さない。


( 'A`)「いい所だな…今日はココで様子を見るか…」


持参した干し肉にかぶりつきながらドクオは喋った。途中、何を言っているのかわからない部分もあったが、どうやら礼を言っているらしい。


( 'A`)「モグ…ッ!!ゲホゲホッ…」


( ´_ゝ`)「しかし幸運だったな…まさか『ガノトトス』に救われるとは思わなかったよ…」


(;^ω^)「なんだったんだお…あのバカでかい魚は一体なんだったんだお?あッ、穴子かお…穴子なのかおッ!!!!」


( ´_ゝ`)「ぶるぁぁぁ!!……違うぞ、奴は魚竜『ガノトトス』…この辺一帯の水源に棲む竜だ…」


即席で作ったコーヒーを飲みながら兄者は語る。

なんでも魚竜『ガノトトス』は古くからこの地方の守り神なのだという。太古の時代より存在し、水中の生活に適応するために魚のような姿になってしまったのだと言う。


( ´_ゝ`)「…だからガノトトスを見れた俺達はまさに『幸運』だって事さ…!!」


(´<_`;)「しかしあのイャンクックの群れは…一体何なんだろうか…?あの数は異常だ…それに、あの蒼い奴は何なんだッ!?」


( ´_ゝ`)「うろたえるな弟者!!…蒼いイャンクックなら過去にもみたことがある…」


兄者が自らのポケットをあさり始めた。
中から取り出したのは、虹色に輝く何らかの鱗のような物だった。


( ´_ゝ`)「蒼いイャンクック…奴は数年前、当時ハンターだった俺の視力を…右目を奪った張本人だ…」



あきゅろす。
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