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【新説】虹色の鱗【モンスターハンター】
6.
62:◆d2hCxOK7H.
11月04日08時14分07秒 hBOgnlUiO

表に出たドクオと傲慢な男は、大通りのど真ん中で対峙していた。

おい、なんか決闘をするらしいぞ!!大陸から来た新しい奴で、相手はあの「鉄騎槍のギコ」だってよ!!


そんな噂が瞬く間に広がり、沢山のギャラリーで側道は埋め尽されている。

鉄騎槍のギコといえば大陸でも名の通っている凄腕のハンターの一人だった。その槍捌きは大陸では『鬼神』の称号を与えられるほどのものだった。

風切り音をたてながら槍をしごくギコをよそに、ドクオはただ大通りに座り込んでいた。


(;´_ゝ`)「やめろ、お前が敵う相手じゃ無いんだ!!決闘なんかしてみろ…それこそ再起不能にされちまう!!」


( 'A`)「……」


ドクオは開き直った。
もうここまできたら、後は実力をだしきるだけだ…そう考えていた。
プロのハンターと比べて、自分は今どの位置にいるのか…どれほど強くなっているのか試したくなっていた。


( 'A`)「大丈夫ですよ…僕は…負けません!!」


確かな自信があった。

それは手にした『サンダーベイン』の魔力によるものなのかもしれない。


64:◆d2hCxOK7H.
11月04日18時40分08秒 yr71vqK2O

(,,゚Д゚)「時間は無制限、どちらかが気を失うか負けを認めるか…それでいいな?」


( 'A`)「ああ…わかった。」


二人の間に緊張が走る。
息がつまりそうになる。
ドクオは大きく深呼吸して、体の重心を下に持っていった。足を踏ん張り、腰を曲げ、まるで獲物を狙う虎のような格好でギコを睨む。
対するギコもドクオの行動を察してか、同じく身を低く屈めてランスを構える。


( ´_ゝ`)「用意はいいか…?いくぞ…ッ!?」


( 'A`)「……」


(,,゚Д゚)「……」


二人は黙って頷いた。
兄者は手にしたボウガンを空へと向け、耳を塞いだ。

( ´_ゝ`)「……スタートッ!!」


そして甲高い爆発音と共に、二人の意地を賭けた戦いが始まった。

先手をとったのはギコの方だった。

流れる様に地を這い、ランスの切っ先をドクオめがけて突き進む。一瞬の間に間合いを詰め、すぐにギコの制空圏へと追い込まれた。


(,,゚Д゚)「どうした…懐に空き巣が入っちまうぜ!!」


重いランスを持っているにも関わらず素早い動きを見せるギコに、ドクオは戦慄した。
切っ先が触れるか触れないかのところでランスを避け、何とか反撃しようとした。が、振り降ろした剣は分厚い盾に行く手を阻まれ、それ以上は先へと進まない。

これがランス使いの戦い方なのだ。

ランスを扱う者が手に入れる恩恵は、鋭い切っ先から繰り出される攻撃ではなく、むしろ何者の刃も通さないその『防御』にあった。


66:◆d2hCxOK7H.
11月04日19時04分24秒 N3//cqfjO

ランスを持ち、身を低く屈めるという行為は理にかなっていた。
重心を低くする事で敵の攻撃にも耐える事が出来、更に次への攻撃にも移行しやすい。だが、ランスを扱うには相当の訓練、経験、筋力がなければならない。

その点でギコはまさに『プロのハンター』だと言えるだろう。


(;'A`)「このッ…いい加減に…しろぉッ!!!」


盾に邪魔され、思うように攻撃出来ないドクオはその場で回転しながら跳びあがり、ギコに対してあびせ蹴りを繰り出した。不意を突いた攻撃だった。

想定外の出来事にギコは怯み、そこに一筋の隙が見えた。


( 'A`)「そこだろッ…逝っちまえよッ!!」


ドクオの怒涛の反撃が始まった。

体を捻りながらあらゆる方向から斬撃を繰り出し、ギコに息つく暇を与えない。
ギコも盾で攻撃を防ぐ事だけで精一杯だった。


(;,゚Д゚)「うおぁ…て、てめぇ舐めてんじゃねえよッ!!」


ギコは盾を前面に突き出し、剣による攻撃を防ぐと同時に前へと突進した。
ドクオの体は後ろへと流され、弾き飛ばされてしまった。

体勢を崩したドクオは自分のペースを見失い、後はギコの独壇場だった。
鍛えぬかれた肉体と、研ぎ澄まされたアイアンランスがドクオに牙を剥く。


68:◆d2hCxOK7H.
11月07日01時01分13秒 GeuZpz4VO

ギコのアイアンランスが火を吹いた。

畳み掛けるようにして突きを繰り返す相手に、ドクオはもはや戦意を失いかけていた。
プロのハンターの洗礼、ドクオは心の中で「出来るだけの事はやった」という微かな満足感に浸っていた。

ふと、大陸での自分を思い出していた。

何事にも無気力で無関心、誰にも認めてもらえず誰も近付けない。一人は嫌で、独りを好んだあの日々。
そんな自分を変えたくて、ドクオはハンターへの道を歩み始めた。

あの頃とは何一つ変わっていない自分がそこにいた。


(;'A`)「いやだ…変わるんだ、俺は……変われるんだぁッ!!!!」


隙の無い突きを繰り出すギコに、ドクオは驚くべき行動に出た。
連続する突きの先端、ランスの中心部に向けて凄まじい速さの突きを放ったのだ。

その瞬間、刃から強力な電流が流れ、鉄という媒介を伝ってギコの体にまで到達した。


(;,゚Д゚)「な…なんだと……ッぐわあぁぁぁあぁぁぁぁあああぁ…ッ!!!!」


ドクオの剣には細工が施されていた。ある一定の速度で剣を振るうと空気との摩擦により静電気が発生し、それを増幅させ刃に電流を纏わせる。
その刃で斬りつけられた相手は強力な電撃により重大なダメージを負い、体の神経が麻痺する。
それは飛竜も、そしてギコも例外ではない。


( ´_ゝ`)「あいつ…発動させやがった……!!」


(´<_` )「兄者…!!ついに完成したねッ…!!」


( ´_ゝ`)「…あの剣はただの素人ハンターに扱える代物じゃない……プロのハンターですら電流を起こす事ができないんだが……これは嬉しい大誤算だよ…ッ!!」


77:◆d2hCxOK7H.
11月13日21時33分20秒 NjEGJefhO

アイアンランスを伝い流れる電撃は、ギコの運動中枢を麻痺させる程であった。
もとはと言えば「対飛竜戦」の為に作られた武器だ。人間がその電撃を喰らえば勿論、ただでは済まない。


(;,゚Д゚)「うががあぁああぁぁぉおお…ッ!?」


白眼をむき、喉の奥から声にならない声をあげるギコは、その「対飛竜用兵器」の威力を自らの身で実感していた。いや、もう意識は無くなっていた。
だが止むことのない激痛が神経を伝う度、ギコは獣の様な叫び声をあげた。


(;'A`)「こ、これがサンダーベイン…今までの武器とはダンチだ…ッ!!」


ドクオはその凄惨な光景を間の辺りにし、小刻に震えていた。剣を持つ手に力が入らず、剣が地面に落下してもなお、その場に立ちすくんでいた。

その間およそ五秒、そしてギコはようやく地面に倒れこんだ。

今は起きる気配すら無い。


( ゚∀゚)「ふむ…ギコを倒したか…、なかなかやるようだな……ドクオ君。」


( ´_ゝ`)「お前は…ジョルジュか…そうか、お前の弟子か何かなのか?」


ジョルジュは旧友である兄者に話しかけた。二人は昔、共に戦った仲間でもあった。


( ゚∀゚)「いや、俺は何も教えちゃいないぜ?俺の性格は、お前だって知っているだろ?」


( ´_ゝ`)「確かに。お前は昔から一匹狼だったからな…そう、昔からな…」


( ゚∀゚)「……」


そんな二人が見守るなかギコの体は動かなくなり、ドクオの勝利となった。
一斉に歓声があがり、ドクオを讃える民衆がまるで波のように押し寄せてきた。新米ハンターがベテランのハンターを倒す、そんな有り得ない事態が起こってしまえば混乱は避けられないだろう。

民衆はドクオを担ぎ上げ、空に向かって胴上げを始めた。


(;'A`)「ちょ…や、やめろ!!俺は早く宿に帰って痛い痛い痛い痛い痛いッ…か、髪の毛を引っ張るなッ!!」


ドクオは少しうんざりした表情を見せながら、勢いよく空へと舞い上がった。

これがギコとの出会い、そしてこの後に続く悲しい物語の序曲であった。



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