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【新説】虹色の鱗【モンスターハンター】
5.
54:◆d2hCxOK7H.
11月02日07時08分34秒 SP3ZhX+iO

( 'A`)「えっと…確かこの辺りだって聞いたんだけど……どの店なんだ?」


次の日、ドクオは先日のクエストで折れてしまった剣の修理に出掛けた。
着いたのは何件かの鍛冶屋が軒を連ねる大通りだった。
ドクオはジョルジュの薦める鍛冶屋『渋沢』を探していた。大通りの鍛冶屋の中では一番腕が良く、新たに注文しようものなら三年待ちという状態だった。それほど人気があるのだ。


( 'A`)「早く直してやらないとな…」


ドクオは焦っていた。

ジョルジュの指定した期日まで時間がない。
すでに一週間が経過しているのだ。

それ以上に自分の行動に後悔していた。自らの不注意により剣を折ってしまった事、自分のふがいなさを呪っていた。
あの時、もっと知識があれば自らで研ぐ事が出来たかもしれない。それが出来なかった自分が悔しくて仕方なかった。


( 'A`)「ここか……お、お邪魔します…!!」


店に辿りついたドクオは力一杯に扉を開き、中へと入った。
鍛冶屋と呼ぶには綺麗に整頓されており、頭の中の乱雑なイメージは一瞬で吹き飛んだ。時々風にのって暖かい空気が流れ込んできて、石炭特有の匂いが辺りに漂う。

奥の方から甲高い、金属同士のぶつかる音が響いてくる。


55:◆d2hCxOK7H.
11月03日19時47分51秒 W8Cib2LSO

(´<_` )「兄者、今日は良い素材ばかりを仕入れる事が出来たよ。これなら良い武器が作れそうだ。」


( ´_ゝ`)「おお、凄いじゃないか!!マカライト鉱石に火竜の鱗、それに上竜骨まで…これなら素晴らしい武器が出来るぞ…ッ!!」


( ´_ゝ`)「流石だよな俺達」

(´<_` )「流石だよな俺達」



奥の方で賑やかな声が聞こえてきた。ドクオは工房の奥へと足を運ばせ、内部を覗きこんだ。
そこにあったのは沢山の素材と武器、そして武器を作るために必要な道具が全て揃っていた。
それを囲みながら談笑する二人組、恐らく兄弟だろう。二人は素材を手にしながらそれを吟味し、選別していた。



( 'A`)「あの…すいません。」


(´<_` )「…ん?兄者、どうやら来客のようだが…」


( ´_ゝ`)「うむ、いらっしゃい。ここは工房『渋沢』だ。今店主は留守にしているが、私たちで良かったら話を聞こう。」


57:◆d2hCxOK7H.
11月04日00時40分38秒 lNhB71wZO

兄弟はドクオを中に招き入れると早速、ドクオの持ち込んだ剣を見た。


(´<_` )「ふむ…この剣は……もう…」


( ´_ゝ`)「ああ…ドクオ君と言ったか…君の剣は修復不可能だ。ここまでボロボロの剣を修復する技術を…私達は持っていないんだ…」


( 'A`)「そう…ですか…」


ドクオは必死に溢れる涙を抑えた。少ない、短い期間とはいえ自分の剣の最期を聞かされ、感情を抑えきる事が出来なかった。
それほど愛着のある剣だった。



( ´_ゝ`)「…ドクオ君、こんな事を言うのもなんだが、俺達の作った剣を代わりに使ってみる気は無いか?」


( 'A`)「代わりに…ですか?でも、俺はまだハンターに成り立てで慣れない武器だとちょっと…」


(´<_` )「それはわかってるよ。でも武器が無いと何にも出来ないじゃないか。それに俺達も試作品のモニターをしてもらうと助かるんだ。」


そういうと兄弟は、奥の物置から一振りの剣を持って戻ってきた。
ドクオはその剣の放つ異様な雰囲気に圧され、言葉を発するのを忘れてしまった。


( ´_ゝ`)「これだ…これが俺達の作った試作品『サンダーベイン』だ…なにぶん試作品だからまだ調整は必要なんだが…」


(´<_` )「でも、他の剣の出来には勝るとも劣らないと思う…どうかな?」


(;'A`)「これが…『サンダーベイン』…?」


58:◆d2hCxOK7H.
11月04日00時57分47秒 O+znRCImO

ドクオは恐る恐る剣を取り、まじまじと見つめた。
その剣は異様な雰囲気をかもしだしており、ただの剣ではない事は一目瞭然だった。

ハンターカリンガよりも少し長い刀身、握り締めると掌に吸い付いてくる柄、微妙に黄色みがかった刃、そのどれもが今まで経験した事が無いものだった。


(;'A`)「すごい…何か、内から湧いてくる不思議な力がある……そんな気がします…」


( ´_ゝ`)「だろ?柄の部分には滅多に手に入らないゴム質の皮を使い、刃には特殊な加工を施してある。」


(´<_` )「内容は企業秘密だけど、その刃には微弱な電気が流れているんだ。実験的にしてみたんだけど…それが『試作品』たる所以だよ。」


ドクオはその場で軽く素振りをしてみた。

驚くほど軽い。

今まで数本の剣を持ってみたが、この剣より軽い物は無かった。柄が掌に馴染み、まるで腕の延長のように扱う事が出来た。


( 'A`)「これはすごいな…名刀とは、まさにこの剣の事をいうんじゃないかな…」


率直な感想だった。
だがそれ以前に、この剣を早く使ってみたいという衝動にかられた。
この一週間でドクオは確実にハンターへと進化している、自分でもそう思えた。


59:◆d2hCxOK7H.
11月04日01時29分47秒 kAcI9K4jO

ドクオが工房『渋沢』で剣を振るっていた時、街にある男が到着した。

その男はドクオのように船に乗って、大陸からやってきたハンターだった。


(,,゚Д゚)「やっと着いたのか、まったく遅いじゃないかゴルァ!!」


男は見下すような目線で船員を見て、そう呟いた。
背中に背負った大きな槍が、その男の態度を更に増長させている様に見えた。


(,,゚Д゚)「しかし何だな…港だってのに、まったく賑わってないな…ここは過疎区かよ?」


無理もない。この港は少し前に火竜『リオレウス』によって壊滅寸前までおいやられた場所だからだ。
島の住人は飛竜を恐れ、自分の家から出ようとしない。それが復旧作業の進行を妨げているのだった。

ふと男は山の方を見た。
未だに活動を続ける活火山の向こう、遥か上空に微かに見える小さな影。
それを見て男は武者震いをした。
あれが、今から命のやりとりをする相手……そう頭にいい聞かせると男はそんな自分がおかしくなり、鼻で笑った。


(,,゚Д゚)「まあいい。それよりまずは鍛冶屋を探さないとな……確か『渋沢』とかいう工房だったな…」


男は背中のランスを持ち直し、街の南側、鍛冶屋の並ぶ大通りへと足を運んだ。

これがドクオと後の宿敵となる『ギコ』との初めての対面となる。


60:◆d2hCxOK7H.
11月04日02時03分57秒 /Fhf8CqlO

( 'A`)「…どういう事なんですか?その…環境の変化による飛竜の進化って…」


( ´_ゝ`)「ああ、実は大陸でも飛竜は観測されているんだ…でも街に被害を及ぼす様な事はしないし、それにこの島の飛竜は、他で目撃されている飛竜に比べても巨大化している傾向にある。」


(´<_` )「そこに兄者は注目しているんだ。なぜこの島の飛竜は他に比べて大きいのか…なぜ街を襲ったりするのかを…ね。」


ドクオは兄弟と飛竜について話し合っていた。
しかし話を聞けば聞くほど謎は深まっていき、考えれば考えるほど頭の迷路をさまよっていく。葛藤のようなものもあった。

飛竜にも何らかの事情があるのかもしれない…しかし、ドクオはその飛竜の言葉を聞く事が出来ない。
自分は何を成すべきなのか、ただそれだけを考えていた。


(,,゚Д゚)「…おい、勝手に上がらせてもらうぞ。」


話し込んでいる内に、一人の男が工房へと上がり込んできた。鋭い目付きで辺りを物色し、棚に立掛けてある武器を手にしはじめた。
こういう状況には慣れているのである。


(´<_` )「おや、ギコさんじゃないですか!!これはこれは…お久しぶりです!!」


弟者は深々と頭を下げ、いかにも商売人らしい物腰で男に話しかけた。しかし兄者は男を出迎える様子は無かった。それより眉間に皺を寄せ、ドクオの目の前で唾を吐き捨てた。


( ´_ゝ`)「ふん…また来やがったのか…」


( 'A`)「えと…あの方は一体どなた様なんですか?」


( ´_ゝ`)「あいつはウチの上得意だよ。メンテナンスや修理はいつも親方がしているんだが……あの態度が気に入らないな…」


61:◆d2hCxOK7H.
11月04日07時42分33秒 rX5XKNDGO

(,,゚Д゚)「店主は留守か…おい、頼んであった物はどうなっているんだ?」


(´<_` )「ああ…その件なんですが…」


( ´_ゝ`)「生憎完成してないぜ?なにせかなり無茶な注文だったからな…!!」


兄者が強い口調で言い放つ。元来このような言い方をするような男ではない。
よほどこの男が嫌いなのだろう。


(,,゚Д゚)「ほう…こんなヒヨッコに渡す剣はあるのに、俺が注文していたランスは出来ていない…不思議なもんだな…!?」


男は自前のランスを手に持ち、切っ先を兄者の喉元へと当てがった。鉄特有のひんやりとした質感が兄者の体に伝わる。
一触即発の空気を壊したのはドクオだった。

手にしていた剣『サンダーベイン』で大きなランスを払い除け、刃を男目がけて構えた。


( 'A`)「やめろよ…これだから傲慢な奴は嫌いなんだ…ランスをしまうんだ、早くしろッ!!」


(,,゚Д゚)「貴様…俺に喧嘩を売るとは大したもんだなぁ!!いいぜ、表へ出なッ!!」


( 'A`)「…望むところだ!!」


ドクオは完全に頭に血がのぼっていた。普段の冷静なドクオなら、こんな勝負は受けなかった。しかし男の横暴な振る舞いに我慢できずに、つい剣を向けてしまったのだ。

しかしその心の奥底に、『早くこの剣を試してみたい』という願望もあった。

それがハンターという生き物だからだ。



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