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【新説】虹色の鱗【モンスターハンター】
4.
41:◆d2hCxOK7H.
10月23日01時06分57秒 kgp9gheYO

( ゚∀゚)「…そんな事があったのか、それでドクオ君はボロボロなのか…把握。」


(;'A`)「え、ええ…色々とありましたから……」



ドクオは『バリスタ』に戻り、久々のまともな食事をとっていた。目の前に並ぶ料理に舌鼓をうちながら、今回のクエストであった出来事をジョルジュに報告している。
もちろんあの青年も同席していた。


(;^ω^)「いやwwwガチでやばかったおwwwwどうなる事かと思いましたおwwwwww」


( ゚∀゚)「だろうね、君達の様なハンターになりたての人間がドスランポスと出会えば混乱するさ。それよりも…まさか初めてのクエストでドスランポスを仕留めるなんて…ビックリしたよ!!」


(;'A`)「いやいや…俺達も夢中で…よく憶えていないんです。」



ドクオは謙遜せずにありのままを話した。
だが素人ハンターが初めてのクエストでドスランポスを倒す、この事態にジョルジュは驚きを隠せなかった。
ドスランポスはクエストに慣れたハンターでも苦戦するような強敵である。
ジョルジュでさえ気を抜けば負けるかもしれない程の相手である。今までに数人のハンターがドスランポスの牙にかかり、その命を落としている。


( ゚∀゚)「それと…さっきの話に出てきた若い女性、耳に鱗のピアスを着けていなかったか?」


( 'A`)「鱗の?……つけていたかもしれません。何せ遠かったし、ドスランポスを倒した時にはもう居ませんでしたから…」


( ゚∀゚)「…そうか。」



ジョルジュは少し思い悩むような顏をして、椅子にもたれるようにした。沈黙を挟み、再び口を開いた。



( ゚∀゚)「恐らく彼女は『ツン』と言う名のハンターだろう…腕の立つガンナーで、俺も何度か共にクエストした事がある…しかし……」


44:◆d2hCxOK7H.
10月28日17時00分09秒 ytwLwSMHO

( ゚∀゚)「彼女は元々この『バリスタ』に所属していたハンターだった。だが、ある出来事が彼女を変えてしまったんだ…」


( 'A`)「ある出来事が…?」


( ゚∀゚)「ああ…」



ジョルジュはその出来事を淡々と話し始めた。

彼女は当時、名のあるハンターだった父親と母親、それとハンターを目指す弟と四人で暮らしていた。父親は伝説の飛竜『モノブロス』と戦い、無事に生きて帰ってきた程の強者だった。

一家全員がハンターという、まさに血統書付きのサラブレットだった。



( ゚∀゚)「彼女の父親は俺の恩師でもある。俺のような孤児にも剣を教え、文字も教えてくれた…出来た人だったよ……」



しかし突如としてその平和な日々は崩れ去った。

ある日のクエストの時だった。
ツンの父親はまだ見習いの弟とジョルジュを引き連れ、いつもの様に砂漠へと赴いていた。その地でツンの父親は決してしてはいけない過ちを犯してしまった。

ある飛竜の子供を惨殺してしまったのだ。

飛竜の子供の鱗や皮は裏の世界では莫大な金額で取引されている。彼はその事を知っていたのだった。
慣れた手つきで剥ぎ取りを行う彼を止めようとしたが、既に彼は狂気に染まっており言葉を聞こうとはしなかった。


( ゚∀゚)「そして俺達は見つかった……黒い肌を持つ二角の竜に……」


46:◆d2hCxOK7H.
10月28日17時37分23秒 u8JlfLOSO

不気味に輝く黒い肌、常に獲物を探しギラつく瞳、そして天に向かって雄々しく伸びる二本の角…今まで見たことも無い程の大きさの飛竜だった。

三人は何とか逃げようとしたがそれも虚しく、まずは弟が飛竜の餌食となった。
ランスと呼ばれる槍を構え、足止めをしようと突撃をかけた。しかしそれに気付いた飛竜はその大きな角で対抗し、易々と弟の体を貫いた。

上半身と下半身が空中で分離し、嫌な音をたてて地面に落下した。

それに対してツンの父親は考えられない行動に出た。

自らの息子の亡骸を飛竜に向けて投げ、その隙をついて逃げ出そうとしたのである。



( ゚∀゚)「…ハンターとしても、人間としても考えられない……本当にこの人が俺の恩師なのか…?」


( 'A`)「……」


( ゚∀゚)「俺は…自分の目を疑ったよ。あの光景は今でも忘れられない…」


47:◆d2hCxOK7H.
10月28日23時04分03秒 6mbsnXblO

だがそれでも飛竜は彼等を追うのを止めなかった。むしも更に激昂し、執拗なまでに二人を追い詰めていく。口から黒煙を吐き、充血した眼で二人を始末しようとしていた。

飛竜にも感情はある。

我が子が殺されれば怒る、それは生物として当然の行為である。

だがツンの父親は違った…いや、以前はそうだった。しかし今は自分の利益を考え、自らの息子を盾に生き延びようとしている。

生物として「生きる事」への執着心は必要である。
しかしあまりに醜い、自分勝手な振る舞いだった。


( ゚∀゚)「俺は吐きそうになりながらも走ったよ…でも、金に目がくらんだあの人は……俺まで…ッ!!」



ツンの父親はジョルジュまでもをイケニエにしようとした。
わざとジョルジュに足をかけ、つまずかせたのだ。もはやそこには『英雄』などはいなかった。

しかし飛竜はジョルジュを見ようとせず、一直線にツンの父親の元へと走った。
そして一撃…その一撃で彼の命は宙に舞い、二度と帰ってくる事は無かった。



( ゚∀゚)「俺は必死で逃げて…この街へとたどり着いた。そしてその時起こった事の…ありのままを話したんだ。」


( 'A`)「けど彼女は信じなかった……いや、信じようとはしなかった…か?」


( ゚∀゚)「その通りだ…彼女は『父親は勇敢に戦って死んだ』と思っている。俺の言う事に耳を貸さなかった。」


(;^ω^)「まさか…そんなことがあったんですかお…」


( ゚∀゚)「その事件が原因で彼女の母親は倒れ、今も寝たきりだ……母親を養うために『バリスタ』を離れ、高額な稼ぎのあるフリーのハンターになったんだ…」


52:◆d2hCxOK7H.
11月01日20時17分56秒 b57hhAkcO

( 'A`)「なんだかな…複雑な気分だ…」


( ^ω^)「あの人にそんな過去があったなんて…」



二人は肩を落とし、『バリスタ』をあとにした。人間の醜さを目にしたような、何とも言い難い絶望感が心を覆う。

仕方が無かった

その言葉で終わらせるのは簡単な事である。しかし二人はどうしても割り切る事が出来なかった。
二人の良心がそうさせるのだろう。


( 'A`)「お前は…これからどうするんだ?フリーのハンターだろ、行くあてはあるのかよ……」


( ^ω^)「僕は…ひとまず宿に戻るお。戻って、ゆっくりして、それから考えてみるお。」


青年は手に、あの時拾ったサボテンを持ちながら答えた。どうやら余程気に入ったらしく、街に戻ってからもそれを手離そうとはしなかった。

このサボテンは僕の命の恩人だお!!簡単には手離せないお!!


そう言っていた。



( 'A`)「そうか…そういや自己紹介がまだだったな…。俺は『ドクオ』、お前は何ていう名前なんだ…?」


( ^ω^)「内藤ホライゾン…みんな何故か『ブーン』って呼ぶおッ!!」


( 'A`)「そうか…また会おうぜ。それまでにお互い、一人前のハンター目指して頑張ろうぜ…!!」


そういうとドクオは右手を差し出し、ブーンに握手を求めた。
彼等ハンターには暗黙の了解がある。その一つが『握手』である。
右手での握手は『仲間』と認める、左手での握手は『敵』であるという意思表示であった。
無論、一人前のハンターを目指す二人もその事を知っていた。


( ^ω^)「ドクオ…君なら僕より早く一人前になれるお……でも、僕も負けるつもりは一切無いおッ!!」


ブーンが差し出したのは、紛れもなく『右手』だった。

二人は固く手を握った後体を反転させ、それぞれの歩む道へと進んでいった。
振り返る事はしない、また会えるという思いを胸に抱き、二人は前だけを見て歩いて行った。

この二人が、後に『竜騎士』の一員として世界に名を轟かせる事になる。

だが、それはまだ数年後の未来の話である。



あきゅろす。
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