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【新説】虹色の鱗【モンスターハンター】
27.
320:◆SKMlSPfKqU
10月10日20時02分02秒 daXRGqifO

('A`)「さて、お遊戯もこれくらいにしておくか?…あんまりのんびりもしてられないんでな」

(´<_` )「……」

二人は距離をとり、互いに牽制しあった。目付きが急に鋭くなり、その視線が相手を刺し抜き、そして沈黙させる。
未だ惨劇の舞台に上がっている二人はまさに、死闘に決着をつける為に選ばれた優れた役者なのだ。

('A`)「狂っちまったお前を見るのは忍びないしな…次で終わらせてやるよ」

(´<_` )「…狂っているのは…この世界だよドクオ……俺達は最大限の努力をした…いや、しているつもりだった…」

('A`)「……」

(´<_` )「しかし現実はどうだろうか…正しきは裁かれ、悪しきは栄える…こんな矛盾した世界なんて……」

それは静かな告白。
自らの胸の内を隠す事無くさらけ出している、弟者の告白だった。

彼もまた、心の奥では葛藤していた。
飛竜を守り、自然を守り、島民を守る。それが彼の誇りだった。
しかし度重なる裏切りと失意を味わった彼にとって、今その使命は他のどんなものより重く、とてつもない程に意味を持っていた。

(´<_` )「今もそうだ…お前らに迷惑ばかりかけている…俺は……無力なんだよ…だから」


殺してくれ


321:◆SKMlSPfKqU
10月10日20時19分31秒 daXRGqifO

('A`)「弟者…」

(´<_` )「……」

('A`)「…甘えるなよ、このブラコン野郎…ッ!!」

ドクオの咆哮が誰も居ない街に木霊する。それは魂の叫び、どんな声よりも尊く、どんなものよりも崇高な言葉だった。

('A`)「確かに最大限の努力をしている…しかし、足りないんだよ!!全然足りてないんだよッ!!」

(´<_` )「……」

(#'A`)「なら弟者は全てやりきったか?本当に最善を尽くしたのか?命を削る程の何かを成し遂げたなかよぉッ!?」

(´<_` )「…お前と俺とは」

(#'A`)「違うって言いたいのか?ポテンシャルが違うとでも言いたいのか?…甘ったれんのもいい加減にしろよッ!そうやってお前はただ逃げてるだけ、避けてるだけ、一歩踏み出すのが怖いだけの臆病者なんだよッ!!」

(´<_` )「…そうだ、俺は臆病者なんだよ…皆と一緒に戦っているふりをして、ただ皆の影に隠れていた臆病者でしかないんだよ」

(#'A`)「てめぇ…なら前に出ればいい!!隠れていないで出てくればいい!!自分も俺達の仲間なんだと、胸を張ればいいッ!!!それをしないで、何が殺してくれだ?自分で死ぬ勇気もないくせに…なら一歩踏み出して、足掻いて、泥まみれになって、血を流して…そして死ねッ!!!」


324:◆SKMlSPfKqU
10月11日00時15分36秒 kgQQLgCEO

最後にそう叫ぶとドクオは鋭利な切っ先を弟者に向け、ゆっくりと地面を踏みしめる。その低く雄大な構えはまさに狩る者、野性の血をたぎらす猛獣のようだった。

('A`)「もう…これ以上の言葉はいらないだろ……来いよ」

(´<_` )「……」

弟者も剣を構える。
両手で柄を握り締め、頭上高くに剣を振り上げる。
斬るというよりは叩き砕く、そんな形容の似合う凄まじい風貌であった。
しかし心は驚く程落ち着いていた。

(´<_` )「…俺が死んだら…兄者によろしく頼むよ…」

('A`)「…知るか、自分で伝えろよ…根性無しが…」

空気が張り詰める。
痛い程の緊迫感が場を支配する。触れれば斬れてしまいそうな二人の視線が交わう瞬間、その瞬間からこの場は二人だけの舞台となった。

まず動いたのはドクオだった。低い姿勢を保ったまま地を這うような速さで弟者との距離を一気に詰める。
体を軽く捻り、その反動を利用して横一文字に斬り払う。
しかし弟者はそれより速く、振りかぶっていた大剣を真下に叩きつける。まさに刹那の瞬間の出来事だった。

そして決着も瞬きの間の出来事だった。


325:◆SKMlSPfKqU
10月11日00時48分19秒 kgQQLgCEO

ドクオの放った剣は虚しくも空を斬っていた。反射的に身を引いた弟者の機転が、最高の一撃を完全に無効化してしまったのだ。
しかし、その代償もあった。無理な体勢で薙ぎ払いを回避したせいか、次の行動に移るまでに少しの隙が出来てしまっていた。

しかしそれも時間にしてみれば、ほんの僅かな時間であった。

(;'A`)「…ッ…く、この…ッ!!」

ドクオはその僅かな時間を最大限に活かす。見つけた隙に向かい体を押し出し、弟者への体当たりを実行した。

普段の弟者ならなんとでも無い体当たりだった。身体的にも劣るドクオにはあるまじき行為だった。
しかしそれは現状では最も効果的な牽制になった。不安定な体勢ならば少しの衝撃であったとしても、その行為は絶大な効果をもたらす。それが重量級の武器を持っている者ならば尚更である。

(´<_`;)「く、ああぁぁぁぁぁッ!!!」

(;'A`)「そこだあああぁぁぁぁぁぁぁ…ッ!!」

微妙なバランスを保っていた体が浮わつき、体勢を完全に崩してしまった。
そこを狙い、再びドクオは刃を走らせる。閃光の如き一撃が弟者の死角、脇腹へと切っ先を滑り込ませた。

それが、決着だった。


326:◆SKMlSPfKqU
10月11日01時11分17秒 kgQQLgCEO

鮮血が辺りに飛び散る。
まるで絵の具かペンキをぶちまけたかのように地面が朱色に染まり、鮮やかな色彩をもたらしていた。

('A`)「……」

(´<_` )「……」

沈黙が続く。
耳に聞こえてくるのは、血の滴る水音だけだった。

互いの武器は既にその役目を終えていた。
ドクオの剣は空中で静止し、弟者の剣は地面に突き刺さっていた。違いといえば、ドクオの剣に付着している大量の血液だろうか。

('A`)「…馬鹿野郎…」

(´<_` )「…ああ…俺は、馬鹿野郎…だよ…」

そのままドクオにもたれかかり、弟者は剣を手離す。脇腹からは大量の体液が流れだし、一筋の川を作り出している。
致命傷とまではいかないにしろ、相当なダメージを受けているのは明白だった。

そして弟者は意識を失い、ズルズルと地表へと崩れ落ちていった。差し伸べる手など、誰も持ち合わせていなかった。

(#'A`)「…んだよ…初めて死ぬ気で斬ったのが…仲間かよ……なんだよ、なんなんだよッ!!畜生ッ!!!」

悔しさが込み上げてくる。何故こんな事になったのか、何故弟者と殺し合いをしなければならないのか、そんな思いが胸を駆け巡り、吐き気となって体に襲いかかってくる。
味気の無い唾が口の中を満たし、それを不恰好に吐き出す。

それでも気持ち悪さは消えなかった。


328:◆SKMlSPfKqU
10月12日01時43分30秒 LtFebARaO

血の匂いがする。乾燥していた空気が、生臭い瘴気に包まれる。
朝までの街の景色は無く、血で汚れた街路樹が痛々しく見える。

(;^ω^)「こ、これはなんだお…一体何が起こったんだお!?」

ブーンはツンを担ぎ直し、目の前の光景に絶句した。
それはにわかに信じられない光景、平和だった街が狂気に染まった絶望の世界だった。

とりあえずブーンは医者を探すために街を徘徊する。ツンの容態は重くは無かったが、大事である事には違いなかった。
しかし人影など見当たらず、当然の事ながら医者なども見当たらなかった。
仕方なくブーンはツンを寝かせ、解毒薬を飲ませる。だいぶ息が整ってきていたので、一先ずは安心だろう。

ふと周りを見渡す。
人気が完全に無いわけではなかった。ポツポツと疎らではあるが数人の人影が見えた。そこは噴水のある公園で、人々の憩いの場所だった。
そこに佇む見知った影が二つ、互いに寄り添いながらその場に崩れ落ちた。

( ^ω^)「……?」

よく見ると公園の木々には真新しい鮮血が飛び散り付着しており、緑に赤色が映えているように感じる。
しかし妙な違和感。
その血はあの二人を中心にして広がっている。

( ^ω^)「ドクオ…弟者?」




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