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【新説】虹色の鱗【モンスターハンター】
26.
298:◆d2hCxOK7H.
07月20日07時11分08秒 btHRcJEuO

( 'A`)「…いない……」

川 ゚ -゚)「いや居るはずだ…もうすでに解放されたなんて事はないはずだ」

( 'A`)「……」


目の前にはからっぽになった部屋しかなかった。

弟者救出に乗り出した二人は予想外の展開に、ただ唇を噛み締めるしかなかった。
戦いの最中までは確かに居たはずだ。
それが今はもぬけの殻、誰も、何も残ってはいなかった。


( 'A`)「とにかく…弟者の身の安全が最優先だ、手分けして」


その時、外から大勢の悲鳴が聴こえてくる。
悲鳴は大きな波となり、衝撃が壁を隔てて二人の鼓膜を直接刺激する。


川 ゚ -゚)「この声は…なんの騒ぎだ?」

( 'A`)「わからんが、のんびりしてる暇は無さそうだな…!!」


303:◆d2hCxOK7H.
07月24日00時38分03秒 wBOw/iKnO

ドクオとクーは建物を抜け、大通りに面した細い脇道へと飛び出す。
しかし、そこはすでに阿鼻叫喚の地獄画図だった。


(;'A`)「こりゃ…一体どうしたってんだよ…」

川 ゚ -゚)「ドクオ、あれを見るんだ」


二人が目にしたのは、とても信じられない光景だった。

住人が次々と大剣の餌食となり、石の床に点々と赤い雫を撒き散らす。
そしてその剣を振り回しているのは見間違えようもない、弟者であった。


( <_  )「ぶるああぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」


彼は兄者の打った会心作「ジークリンデ」を振り回し、街を駆け抜けていった。
その禍々しい様相はまさに「悪魔」と呼ぶにふさわしいものであった。

ジークリンデは横幅の広い大剣で、その重厚な造りから扱える者が限られている代物だった。
この剣を作った渋沢本人でさえ「使い手のいない最高傑作」と評するほどであった。

しかし、それは扱える者がいれば話は別である。


(;'A`)「あいつ…早く止めないと…ッ!これ以上、被害を出すわけにはいかない!!」

川 ゚ -゚)「ああ、弟者を止めるんだ!!」


二人は同時に武器を抜き取る。
ドクオはオデッセイを、クーはギルドナイトサーベルという透き通った細身の双剣を互いに構える。


304:◆d2hCxOK7H.
07月26日01時23分39秒 ywd0u2dbO

( 'A`)「クー、お前は街の人達を避難させろ…それが終わったらバリスタにいってジョルジュに報告してくれ」

川 ゚ -゚)「それは…『弟者はまかせろ』という意味か…?」

( 'A`)「そうだ、弟者は住人達に危害を加えた…それがどんな理由であれだ。だからバリスタやジョルジュの力が必要になってくる……根回しってやつだな」

川 ゚ -゚)「…弟者は明らかに正気ではない……おとなしい気性の弟者がこんな…」

( 'A`)「その原因も俺が片付ける…頼んだぞ!!」


そつ告げるとドクオはクーに背を向け、弟者の居る噴水のある広場へと駆けていった。
クーはその背中を見送ると気持ちを切り換え、住人達を避難させるべく人波へと向かい走っていった。

互いのすべき事を見い出した二人の行動に迷いは無く、それを完遂させようと自分に出来る最大限の事を成そうとしていた。

剣を握る手に力がこもる。
それは弟者を救えなかった悔しさ、街の人々を守れなかった無力感、非道を尽す者達への怒りにうち震える魂の叫びなのかもしれない。
柄がギリギリと軋む音が聴こえてくるようだった。


( 'A`)「やってやるさ…俺が、やってやるさ!!」


305:◆d2hCxOK7H.
07月26日01時44分15秒 ywd0u2dbO

噴水の広場


身の丈程もある大振りの剣を両手で掴み、その双眸は次の獲物を探すように、虚空を睨み続けている。
抵抗された住人により負った傷なのか、右肩から腕にかけて浅い切傷があった。
その傷から血液が重力に従い流れ、数滴の雫となって石畳に赤い模様を描いてゆく。


( <_  )「うぅぅぅぅあああああぁぁぁぁ…ッ」


苦悶の表情を浮かべ、ヨロヨロと広場をさまよう弟者に、もはや自我などは存在しなかった。
時折自らの頭を掻きむしり、何かに抗おうとするしぐさを見せるが、それだけであった。


( 'A`)「よお弟者…揉め事か?」

( <_  )「ド…クオ……」

( 'A`)「……へ…俺はさ、てっきり心配しちまったぜ……?また弟者がヘマしたんじゃないかなってさ……」


そこに現れたドクオは瓢々とした態度で弟者に近付き、わざと神経を逆撫でするような言葉を発した。それにより自我を取り戻す事が出来るのではないかと、淡い期待を抱いていたのかも知れない。


( <_  )「ドクオ…目障りな奴……!!何をするにも!!お前が色々と指図する!!…少しくらい出来るからといって調子に乗りやがって…ボス面しやがってッ!!!」

( 'A`)「お前も今はボスじゃねえかよ……誰もお前の後ろにゃついていないがな…w」


( <_ #)「ドクオオオオォォォォォ━━━━ッ!!!」

(#'A`)「『さん』を付けろよ、このブラコン野郎ッ!!!」


互いに同時に距離を詰める。
そして手にした剣を擦り合わせ、激しい火花を発生させる。

それが戦いの合図だった。


306:◆d2hCxOK7H.
07月26日06時52分09秒 ywd0u2dbO

大剣の質量を活かした一撃は、想像を絶する破壊力がある。
斬ると同時に『叩きつける』その威力は、岩盤などをいとも簡単に打ち砕いてしまう程であった。

そして使い手に躊躇の二文字がなければ、それは十分に一撃必殺の武器への姿を変えてしまうのだ。

そんな一撃を紙一重で避けながら、自らの攻撃の機会を、ドクオは注意深く伺った。
非力な自分が躊躇の無い弟者の大剣に勝つ為には、身軽さを活かしたフットワーク以外にはなかった。

靴底と石畳の摩擦が起こす砂埃が空中に舞い、剣の交わる火花がその場に彩りを与えていく。


(;'A`)「ふッ…!遅い遅い…丸見えだなぁ!!」

( <_ #)「このおおぉぉぉぉッ、ビチクソがあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


緩急つけた動きで弟者の斬撃を次々とかわす。
かわす以外の選択肢は無かった。剣で受け止めればその衝撃で自身の体が後方によろける。
それは決定的な隙で、すなわち死を意味している。


(;'A`)「ほらほら…どんどん避けるぞ?どんな事しても避けてやるぞ!?」


ドクオは弟者に隙が生まれる瞬間を狙っていた。しかし大振りな斬撃とは裏腹に、弟者は全く隙を見せなかった。
攻撃は最大の防御というように、斬撃の弾幕を形成しドクオに一歩踏み込むタイミングを与えない。

それどころか逆にドクオは攻撃出来なくなり、精神的にも肉体的にも徐々に追い詰められていく。


どちらの糸が切れるか、勝負の分かれ目はそこだった。



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