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【新説】虹色の鱗【モンスターハンター】
25.
267:◆d2hCxOK7H.
05月11日20時04分41秒 wAAVhsF+O

ξ ゚听)ξ「まったく…ドクオも呑気よね?こんな時に『いつ死ぬか分からんからデートしてくる』なんて……絶対あいつ空気読めないわね…」


( ^ω^)「…それは違うお」


ξ ゚听)ξ「なによブーン、あんた何か知ってるの?」


いつもの巡回コース、ツンとブーンは二人で見廻りに出ていた。
大量に持ち込んだ食糧や傷薬は、もし巡回中に傷付いた飛竜を発見した場合に使われるものだった。
それを指示したのは他でもない、ドクオだった。


ξ;゚听)ξ「なッ…!?あ、あの二人は弟者さんを助けに…!?」


( ^ω^)「そうだお…どちらかと言うとツンの方が、空気読めてn」

ξ;゚听)ξ「あ…あの、危ない!!かえるがッ!!!」


メメタァ


ξ ゚听)ξ「…よかったわ…かえるが無事で…ッ…本当に……!!」


(#)ω^メ)「……」


更に二人は歩く。
目的地は最近乱獲が頻繁に起きている『嘆きの森』だった。

昔、森のそばには集落があったが、村の権力者の死、原因不明の疫病によって壊滅してしまった。それから数十年は立ち入りを禁じられており、最近になってようやく立ち入りを許可された場所だった。

村の壊滅原因を調べようとあらゆる賢者が調べたが、結局は分からなかった。
最も有力とされているのが「毒による壊滅説」であったが、その信憑性は低かった。


ξ ゚听)ξ「…そして毎夜、無念のうちに死んでしまった村人の怨霊が闊歩し、無念を嘆く…そんな伝説があるから『嘆きの森』…」


(;^ω^)「…恐ろしい話だお……やっぱり帰った方がいいお?怨霊に連れていかれて消えてしまいそうだお…」


ξ ゚听)ξ「そうね…もう少ししたら帰りましょう…そうね……」



このひぐらしがなき終わるまでに終わらせましょう


268:◆d2hCxOK7H.
05月11日20時30分57秒 wAAVhsF+O

しばらく集落あたりを見回したが人影はなく、耳が痛くなるほど静かだった。

生存者などいるはずが無い。いたとしても数十年前の話だ、現在も健在とは考えづらい。


ξ ゚听)ξ「…やっぱり異常は無し……じゃあ帰りましょうか?」


( ^ω^)「おっおっおww帰って早くメシにするおwww」


ξ;゚听)ξ「…あんたね、ドクオの事は心配じゃな………ッ…!??」


さっきまで鳴いていたひぐらしが、いつの間にか鳴きやんでいる。

そしてツンは、ある音を耳にした。まるで人間が跳び跳ねるような振動と音。


どん、だん、どん、だん



それに気付き音のする方を見てみたが、そこには誰もいない。いるはずが無いのだ。


ξ;゚听)ξ「気のせい…かしら……ブーン、あんた何かした?」


( ^ω^)「……お?」


ブーンは何も聴こえていないのか、いつもの阿保面で返事を返した。
ブーンの表情から、本当に悪戯では無いと判断する。

では…一体誰が…?


ξ;゚听)ξ「考えても仕方ないわね…帰るわよ、ブーン?」

(*^ω^)「とりあえず風呂、メシ、疑似セクロスの順でいくおwwwww」


ブーンが何を言っているのか分からなかった。
その言葉でツンの頭に再び疑惑の念が浮かんだ。


ξ゚听)ξoO(違う…さっきのはブーンじゃ無かったの?なら誰が、こんな悪戯……ッ、ダメだツン!!落ち着け…COOLになれ、ツン!!…ブーンを疑っちゃだめ……それこそどん底になってしまう…!!でも…でも、なら誰が…!?)


考え事をするツンの隣で、ブーンは今まで以上に弾けてみせた。
酷く落ち込んでいるツンを励まそうと、彼なりに一生懸命なのだ。

しかしそれは効果が無く、街に帰れば少しは落ち着くのだとブーンは考えた。

そして二人は仲良く並びながら街を目指す。



ガッ…ガッ…ガッ……ペタ


ξ ゚听)ξ「……?」


ガッ…ガッ…ジャリ……ペタ


足音がひとつ、余分に聴こえる。


273:◆d2hCxOK7H.
05月16日20時07分24秒 6JnP89erO

ξ;゚听)ξ「……ッ」


(;^ω^)「ちょ…ツン!?い、一体なんのつもりだおッ!!?」


ツンがボウガンを向けた相手は、なんとブーンだった。
すでに弾は込められ、引き金を引けばブーンの頭が消し飛ぶくらいに銃口を近付ける。

ブーンは信じられない光景を目にし、自衛手段としてハンマーを取り出した。

一触即発、その空気をこわしたのも、ツン本人だった。


ξ;゚听)ξ「ブーン、伏せてッ!!!」


(;^ω^)「…ッ!!!?」


銃口から散弾が放たれた。
それよりも早くブーンは身を伏せ、ツンの放った弾は空中へと霧散した。
ブーンはそう思っていた。

しかし弾は何かに当たっては弾け、キンキンと硬い音色を奏でていた。


(;^ω^)「…!?…な、なにが…」


「く、く、くけけけけけけけけけけけけけけけけけけ」


それは人の笑い声のようにも聴こえた。
しかし真実は、まったく違う事態を映し出していた。


(;^ω^)「む、紫の…飛竜…!?」


ξ;゚听)ξ「こいつは…『ゲリョス』ッ!!」


紫色の硬い皮膚を持ち、引き締まった肉体を二人の前に晒す。
頭部のトサカが怪しく輝き、その不気味な存在感をより一層引き立たせる。

毒怪鳥『ゲリョス』
その亜種であった。


「くけけ…な、な、な、縄張りに入った、入った!!お、お前らはもう、い、い、生きては帰さないッ!!!」


突然の襲来に、ツン達はかなり戸惑っていた。
ブーンに至っては腰が抜け、まともに立つ事も出来ないほどであった。

それでも持てる力を総動員して、ゲリョス相手に向き合った。


(;^ω^)「む、無理な相談だお!!帰って…温かい食事にありつくまで、死ぬわけにはいかないんだおッ!!!」


「ぐぎょぎゃぎょぎょ……し、死ね、死ね、死ね、死ネ、死ネ、シネ、シネ、シネ…」


ξ;゚听)ξ「なんなのこいつは…声にノイズがかかって、何を言ってるのか分からないわ…!!?」

(;^ω^)「とりあえずは敵って事だお!!ツン、援護を頼むおぉぇッ!!!」


274:◆d2hCxOK7H.
05月16日20時56分28秒 6JnP89erO

「ぐぎょぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ…!!!」


ゲリョスは反動無しで、凄まじい跳躍を見せた。
その勢いのままブーンに向かって突進を敢行する。音も無く近づく相手にどうやって太刀打ちすればいいのか、ブーンは知らされていなかった。


(;^ω^)「な、…あ、足音が…聴こえないッ!!?」


戸惑うブーンを尻目に、ツンは新しい弾を装填し始めた。
ゲリョスに有効な弾を探していたが、それでは間に合わない。取り出しやすい散弾を次々と装填していく。


(;^ω^)「お、おおがあぁぁぁぁぁッ!!!」


辛うじて突進を回避する事は出来たが、素早いゲリョスに対しての攻撃手段が思い付かない。
ハンマーでの攻撃は動作が遅い。そこを狙われてはひとたまりもない。


(;^ω^)「どういう…、全く足音が聴こえないんだおッ!!?」


ξ ゚听)ξ「ブーン、落ち着いて!!そんな事は無いはずよ!?」


(;^ω^)「あ、あぅあぅ……わあぁぁぉぉッ!!!」


もはや平常心を失っているブーンには、その言葉は届かなかった。
このままではブーンが危ない、そう判断したツンは駆け出し、ゲリョスとの距離を一気に縮めていく。その表情に躊躇などは無かった。


ξ;゚听)ξ「退きなさい、ブーンッ!!!」

(;^ω^)「あべしっ!!!」


尻を蹴り、ブーンをゲリョスの目から外すと同時に、自分を標的にしようとわざと大きな声を出し、注意をこちらへ向ける。


ξ;゚听)ξ「…くらえッ!!」


超至近距離からの一撃でも、ゲリョスの体を貫く事はできなかったか。硬い皮膚が銃弾を全てはね返してしまう。


ξ;゚听)ξ「ブーン、早く立ちなさい!!ブーンッ!!!」


(;^ω^)「おああぁぁぁぁぁお……あれ?」


ブーンは耳に手をかざす。
そして、そこから「耳栓」を取り外した。


(;^ω^)「わ、忘れてたお━━━━━ッ!!!!」


ξ#゚听)ξ「だから言ったのに…馬鹿…!!」


275:◆d2hCxOK7H.
05月17日07時01分43秒 W+ELNz+HO

( ^ω^)「でもこれで足音も聴こえるお!!反撃開始だおぉぉッ!!!」


ブーンはゲリョスに向かって走りだし、構えたハンマーを力いっぱいに降り下ろした。
ハンマーは足に当たり弾かれたが、衝撃は十二分に伝わったようだった。
体勢を崩すと、それを狙ったかのようにツンが銃弾の雨を降らせた。


ξ;゚听)ξ「落ちなさい…落ちてしまえぇッ!!!」


銃弾はゲリョスの装甲にめり込むと、瞬時に赤い炎をあげながら派手に炸裂する。

もちろんただの銃弾ではない、火炎を纏いながら飛行するその姿は、まさに火炎弾と呼ぶにふさわしかった。

ありったけの火炎弾を次々と装填し、休む暇を与えずに次々と連射する。


「ぐきゃぎょ…無駄、無駄、無駄な事だッ!!!」


ゲリョスは垂直に飛び上がり、火炎弾を避けた。ズンと地面に衝撃が広がり、ツンの照準を微かにだがずらす。
そして頭部のトサカをカチカチと鳴らし、そこに光を蓄えていく。


(;^ω^)「おおおああぁぁぁぁぁぁぁ、させるかおおぉぉッ!!!」


空気の抵抗を感じさせない鋭い一撃をゲリョスに向けて放つブーンだったが、そうして近づいたのが彼の不運だった。


「し、し、し、氏ね!!!」


カチンと無機質な音が聴こえる。
次の瞬間、森の中に眩いほどの閃光が走り、二人はそれに目を奪われた。

それは紛れもない光であったが、暖かい光ではなく、敵意を剥き出しにした。


    「おあああぁぁぁぁぁぁ、目が…目がああぁぁぁぁぁッ!!?」


    「ぶ、ブーン!!駄目、早く逃げてぇッッ!!!」


ツンの呼び掛けも虚しく、直後凄まじい激突音があたりに響きわたる。
そして聴こえる、これはブーンの声だろうか。


    「あべしッ!!!」


    「ぶ、ブーン…!!!!」


276:◆d2hCxOK7H.
05月22日20時07分57秒 oEAODsPvO

光が薄くなり始め、ツンはようやく辺りの状況を掴む事が出来た。
が、それは意味の無い事だと、すぐに気付く事になる。


ξ;゚听)ξ「アッ…!!」


そこにゲリョスの姿は無かった。
あるのは倒れているブーンだけで、その他には何も見当たらない。見失ってしまったのだ。


ξ;゚听)ξ「ど、どこに……」


軽いパニックに襲われたツンは冷静な判断が出来なくなり、銃口をアチラコチラと振り回す。不測の事態にツンは動揺し、消えたゲリョスを探そうと躍起になっているのだ。

ブーンの怪我はそれほど酷くなく、すぐに立ち上がるまでに回復した。
が、彼もまたツンと同様、冷静な判断力をなくしていた。


(#^ω^)「あ、あのう○こゲリョスめ…不意打ちなんて卑怯だお、常識的に考えてッ!!!」

ξ;゚听)ξ「すっかり忘れてたわ…ゲリョスの閃光を…」

( ^ω^)「ゲリョスの閃光…?」


ξ ゚听)ξ「ええ、彼等ゲリョスは頭部にある器官を摩擦する事によって光をそこに蓄え、一気に放出する事が出来るのよ……ゲリョスは非常に臆病な性格、だからこんな進化も出来たんでしょうね…」


( ^ω^)「確かに…それは言えてr



(;^ω^)「ツ、ツン…!!避けるんだおぉぉぉぉッ!!!」

ξ;゚听)ξ「…え」


ツンの頭上、木々の間を縫うようにして彼女の上空で飛行するゲリョス。
それに気付き、ツンは避けようとしたが、もはや手遅れだった。

ゲリョスは口内から紫色の液体を、ツンに向けて吐き出した。
ツンはそれを頭から被り、その勢いに押されて地面に強く叩きつけられた。


ξ;゚听)ξ「ああ、あぁぁぁああ…ッ!!?」


(;^ω^)「ツ、ツ━━━ン!!!」

ξ;゚听)ξ「う、…大丈夫ゃ!!それより、ブーンはゲリョスを…」


倒れながらツンはブーンにそう言った。
その言葉にブーンの意識は一気に覚醒し、同時になにかの『スイッチ』がONになった。


(#^ω^)「こ、この……よくもやってくれたおおおぉぉぉぉッッ!!!!」


278:◆d2hCxOK7H.
05月23日19時49分52秒 uC4CDPRCO

(#^ω^)「ぶち殺してやるおお、ゲリョスの糞野郎があぁぁぁぉおおおッ!!!」


ブーンは懐に潜ませていた栄養剤の瓶を取り出した。
表面には『や ら な い か』と銘打たれたラベルが貼ってあった。

その瓶を開け、中の液体を一気に体へと流し込む。


(#゚ω゚)「ふ、ふおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ…!!!!」


飲み干すと、なんとブーンの筋肉がみるみるうちに肥大していく。
即効性の劇物か何かであろうか、飲み干してすぐにブーンは見違えるほどの肉体に変化した。

これは一般的には『鬼人薬』と呼ばれる薬物で、使用を制限されている代物だった。


(#゚ω゚)「おーよよよよよよよ、あば、あばばばばばばばばばばばばば…!!!!」


制限されるのには訳があった。それは『服用後の自我の崩壊』が起きてしまうからだ。
しかも効果が切れた後の反動もあり、多くのギルドは鬼人薬の使用を禁止していたのだ。


ξ;゚听)ξ「ブ、ブーン…今……援護を…ッ!!」


震える手で薬筴を詰め込もうとするが、上手くいかない。
目の前が360度回転し、もはや何をしようとしているのかさえ分からなくなっていた。

ゲリョスが吐き出したのは即効性のある毒液だった。
触れた者の毛穴、皮膚、呼吸、あらゆるものを伝って対象の体力を奪っていく。

それは毒に対して何も用意していなかったツンにもいえる事であった。


ξ;゚听)ξ「か…はッ……!!?」


喉が詰まる。
呼吸しようとしても、体が思うように動かない。

なるべく毒気を抜こうと大きく深呼吸しながら、荷物に埋もれていた水で体を洗い流す。まずは皮膚からの浸透を食い止めようとしているのだ。


ξ;゚听)ξ「う…こ、この程度の毒で……うっく…」


震える手で銃を構え、ゲリョスに銃口を向ける。
ただ、ブーンに当たらない事を祈るしかなかった。


287:◆d2hCxOK7H.
07月11日20時42分11秒 RXZadI0tO

(#^ω^)「め…め……メメタァ!!!!」


溜めきった力を一気に解放し、ゲリョスの脚を打つ。
その衝撃でゲリョスはよろけはしたものの、決定打には程遠かった。発達した脚の筋肉が鎧のように形成され、衝撃を無効化してしまうのだ。

そしてブーンに生まれたスキを、ゲリョスが見逃すはずはなかった。


「ぐげげげげ…ぎゃぎょぎゃぎょ…!!!!」


鋼のように研ぎ澄まされた嘴で、ブーンに対して連打を放つ。
力を解放し尽したブーンに避ける術はない。ただ吹き飛ぶくらいしかさせてもらえなかった。


(;^ω^)「お、おおおおぉぉぉぉッ!!?」

ξ;゚听)ξ「…ッ!!い、今だッ…!!」


ブーンが吹き飛ぶと同時に、凄まじい轟音が森の中に響いた。
音は白い霞の軌跡を描きながら、なだらかに、そして狙いを定めたようにゲリョスの額に突き刺さった。
熱い血液が空中に舞う。


ξ;゚听)ξ「それで…くたばりなさいよッ…!!!」


時間を置いて突き刺さった物は火花を散らし始め、時間差で大爆発し始めた。
ゲリョスの頭は炎に包まれ、悶え苦しむ声をあげた。
トサカの部分にあった発光器官は粉々に破壊され、もはやその機能は失われているように見えた。


ξ;゚听)ξ「ブーン…頼ん…だ……わよ…?」


288:◆d2hCxOK7H.
07月11日21時01分43秒 RXZadI0tO

(;^ω^)「ツン……絶対…絶対に助けるお!!お、お前のいない日なんてつまらないだけだおぉッ!!!」


額に衝撃を受けよろめくゲリョスに向かって、ブーンは走り出した。
ただ一分でもいい…力を、ただ一秒でもいい…力をと、その胸に願いながら。


(#^ω^)「おあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぉッ!!!」


ブーンの降り下ろした鎚は綺麗な曲線を描き、吸い込まれるようにゲリョスの頭を撃ち抜いた。
体液が飛び散り、酷い声をあげる。

それでもブーンは止まらなかった。
わずかなスキも作らず、間髪入れずに次の行動へと移る。
額には玉のような汗が溢れるように吹き出てきたが、今はそれも全く気にはならなかった。

脚、翼、首、再び頭と、手を休める事なく撃ち据える。
その光景はまさに芸術、悲惨なまでに暴力的な、美しい光景だった。


「が、が、が、ががががあぁぁぁ!!!!」

(#^ω^)「うおおぉぉぉ、……汚い脳奬をぶちまけて、死に絶えろぉぉぉッ!!!」


そして渾身の一撃。
今までとは違う、凄まじい衝撃音を放ちながら、ゲリョスは意識を虚空の彼方へと放った。
それは明確な「終わり」を告げる音だった。


289:◆d2hCxOK7H.
07月11日21時16分48秒 RXZadI0tO

激しく揺さぶられた巨体はふらふらと地表を舞い、なんの拍子もなく地面に倒れこんだ。
その様子は痛々しい限りで、息をしている事すら拷問ではないかと思えるほどであった。


(;^ω^)「ゼェ…ヒィ…ゼェ…ッ!!!」


「………」


ブーンは手に仕留めたという確証をもっていた。
今までに無かった感触が、掌を伝って脳髄へと駆け上がる。

ブーンはゲリョスが動かないのを確認すると、手の鎚を放り出しツンの元へと駆け付けた。


(;^ω^)「つ…ツン…!!?」

ξ;ー匆)ξ「はぁ……はぁ……んぐッ…ゲホッ!!」


毒が体全体に回りかけている。もはや吸い出せるレベルの話では無くなっていた。

ブーンは足元の草むらを掻き分け、かすかな記憶を頼りに毒消し草を探し出そうとしていた。
しかし都合よく見付かるはずもなく、ほんの気休め程度の量しか見つける事が出来なかった。

それを持参していた解毒作用のある茸と混ぜ、簡易な解毒剤を調合する。


(;^ω^)「と、とりあえずこれでもたせるお…ツン、これを飲むんだお…」

ξ;ー匆)ξ「う…っ………ん…苦い…」

(;^ω^)「ご、ごめんだお…ツンは苦いの嫌いだったんだお……忘れてたおww……」


しかし事態は深刻だった。
早く治療をしないと命に関わる、それほどの緊急事態だった。


293:◆d2hCxOK7H.
07月13日06時57分59秒 xh1AStbDO

解毒剤を与えても、ツンの容態に変化は無かった。強力な毒を全身に浴びたせいか、進行が恐ろしいほど速い。
辛うじて症状を緩和する事は可能であるが、それでも解消まではいかなかった。

次第に体力を削りとられ弱っていくツンを、ブーンはただ見ている事しか出来なかった。


(;^ω^)「ツン…今……今、助けてあげるからお!!だから死ぬんじゃないおッ!!!」


返事は無い。
呼吸が乱れ、身体中に汗が吹き出る。
もはや一刻の猶予も無い。

ブーンはハンマーを放り投げ、草むらに横たわるツンを両手で抱えあげた。

軽い。

彼女は想像していたよりも華奢で、少し力を入れれば折れてしまいそうな印象を受けた。
この体で、こんな華奢な体で彼女は今まで戦ってきたのだ。


( ;ω;)「ウグッ…絶対に助けるお……いつもブーンの事を気にかけてくれたツンを、死なせはしないお!!」


その時、上空から突風のように滑空する影が現れた。
影はブーン達の目前にゆったりと着地し、そして二人に近付いてくる。


「…背中に乗れ、街まで送っていってやる」


その姿は紛れもない、ゲリョスそのものだった。
黒く鈍い光を放つその皮膚は森の中に自然に溶けこみ、しかし雄大に二人をまっすぐ見つめている。


(;^ω^)「お…せ、背中に…乗るのかお?」

「早くしろ、その子を死なせたいのか?」


294:◆d2hCxOK7H.
07月13日07時25分40秒 xh1AStbDO

言われたようにツンをゲリョスの背中に載せ、自身もその背中に跨る。広い背中は二人載っても多少の余裕はあり、それがこのゲリョスの大きさを顕著に表していた。

二人がちゃんと載ったのを確認すると、ゲリョスは初速から最大のスピードで街へむけ走り出した。
風と風の間、空気の縫い目を選びながらの走りは、他の飛竜では考えられない程のスピードと力強さを兼ね備えていた。


(;^ω^)「おぉおぉ…!!ちょ…し、振動が激しすぎるお!!病人が乗っているのだから、もうちょっとゆっくり走ってもらいたいお!!」

「時間の猶予はない、このまま…突っ切る!!」


木がゲリョスを中心にして、綺麗に湾曲していくように見える。
上から見ていたブーンからすれば、まるで木が避けているようにも見えるのだろう。


(;^ω^)「すごく…速いです…」


「すまなかったな」

( ^ω^)「うえお?」


突然ゲリョスの口から発せられた言葉は、謝罪の言葉だった。


「あいつは昔から気性が荒くてな…ある日、あいつは何かにとりつかれたかのように凶暴化したんだ……私達では止める事は出来なかった…」


「あいつ」とは恐らく紫色をした、先程のゲリョスの事なのだろう。

突然変異種は時として、従来の同種を遥かに凌駕する力を持って産まれてくるという話は聞いた事があった。
その存在は種族のバランスを崩し、自然界のルールすら簡単に打ち破れるのだという。


297:◆d2hCxOK7H.
07月19日20時27分39秒 6GD9vZeZO

「しかし…彼がおかしくなったのは、それだけの理由じゃないはずだ…恐らくは何らかの力が働いたとしか…」

( ^ω^)「なんらかの…力?」


そこでゲリョスは口を閉ざす。
その空気がブーンにも伝わり、それ以上は聞こうとしなかった。
いずれ分かる、そう目で訴えられている気がしたからだ。


「…もうすぐ街だ、人間の中には『医者』という便利な人種がいるのだろう?着いたら早く連れて行くんだな」

( ^ω^)「おk、把握したお」

「そうだ、お前に…これを託しておく…」


ゲリョスは頭のトサカ部分から、ある物をブーンに取るように命じた。
渋々ではあったが、それを手に取り確かめる。

それは青く、透明な石だった。
その青さは見るものの心を静め、その透明さはヒトの魂を吸い取るような魔力めいたものがあった。


( ^ω^)「これは…」

「数多の飛竜が、人間との契約に用いる石…因みにこれは「ライトクリスタル」と呼ばれる代物だ」

( ^ω^)「…綺麗だお……」

「それは人間と飛竜の絆、共存する為に必要な証…大事に持っておけ、いずれ役に立つ」



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