【新説】虹色の鱗【モンスターハンター】
23.
252:◆d2hCxOK7H.
05月01日01時08分44秒 pfOoc2uiO
(´<_`;)「……」
薄暗く、カビ臭い。
まるで数年間掃除していない倉庫のような臭いが、弟者の鼻孔を満たしていく。
目は未だ布で覆われていたが、それにも慣れてきている。
それもどうなのかと、弟者は苦笑いを浮かべた。
「……どうだ、この生活は…?」
またあの声が聞こえてきた。
聞き覚えのある声。
その声が弟者に問いかける。
(´<_` )「…快適なわけ無い…むしろ年代物の壺になった気分だ……早く外気に触れたいね」
「ふふん…情けない事を言う……あの兄者なら、弱音を吐く事も無いだろうに…」
(´<_` )「ふ…基本はそうだが、兄者もああ見えてヘタレだからな……いざという時には弱音も吐くさ…」
言い終わると、弟者の腹に衝撃が走る。
恐らく何かで殴られたのだろうが、彼にそれを確認する術は無い。
ただ抗わず、その慈悲の無い行為を受け止める。
(´<_`;)「おぶ…ッ!!?」
「ははぁ…!!無様だね……バリスタの一員が、こうも無惨に虐げられている…非常に滑稽だ…!!」
(´<_`;)「うぐぅ……あ、あんたの方が…よっぽど滑稽だけどな…」
言い終わるのを待って、再度暴力が再開される。
それを見て笑う男は顔を歪ませ、ただ笑っていた。
狂っている…その表現が一番適しているのだろう。
(´<_`;)「ご…ぁ……お、俺がどうなっても…あいつらなら…ドクオ達なら…なんとか……してくれるさ…」
「そうだと良いな…あいつらを殺すのは少々心が痛むが……それも仕方ないか……」
弟者は目を覆っている布がずれているのに気付いた。
なんとか身を揺すり、相手の顔を確認しようとした。それが脱出した時の決定的な決め手になると考えてたいたからだ。
そして弟者は見た。
信じられない光景を。
/,'3 「心配しなくともいい……お前はその前に、あの世に送ってやる……ふふ……楽しみにしているんだな……くかか…ッ!!!」
253:◆d2hCxOK7H.
05月01日02時10分27秒 pfOoc2uiO
( 'A`)「……は?」
川 ゚ -゚)「ジョルジュ…お前、自分が何を言っているのか……」
( ゚∀゚)「…充分に理解しているつもりだ…馬鹿げてると思うのも無理はない……だが事実だ…」
そう言うとジョルジュは傷だらけの体に鞭を打ち、すぐ側の本棚からあるノートを取り出した。
まだ新品の香りがするノートには「竜撃隊について」と銘打たれていた。
( ゚∀゚)「ここに…俺の調べた全てが書かれている……お前らも目を通すといい…」
その内容は信じられないものだった。
荒巻スカルチノフ
19×年生まれ
幼少よりハンターである父に剣術を教えこまれ、15歳にしてハンターになる
一流ハンターの父の英才教育の甲斐あってか、なみいるハンターを押し退け、最年少で『勇者』の称号を得る
ドスガレオスの討伐、フルフルの討伐等の輝かしい戦績をもつ
その腕を見込まれ、設立間も無い『竜撃隊』に引き抜かれる
そこでも卓越した強さを誇り、わずか一年で竜撃隊のトップに君臨する
そこから、彼の奇行が目立つようになる
( 'A`)「これは……!?」
( ゚∀゚)「独自に調べあげたデータだ…本島にいる友人に聞いたり記憶をたぐり寄せたり……そんな感じで調べたんだ…」
川 ゚ -゚)「なるほど……素行調査か……」
再びノートに目を落とす。
そこから、彼の奇行が目立つようになる。
・絶滅危惧種の乱獲
・街の住民への暴行
・仲間への暴行及び殺人未遂
・支援金の無断着服
これらの行為が日常茶飯事に行われる
その後、責任を取り辞職
顧問として竜撃隊に籍を置く
新たな資源・素材を得るために遠征隊を編制
自らの意思で島に潜入・調査
時期を見て遠征隊を招き入れる
( ゚∀゚)「ここまで調べる事が出来た…だが、決め手に欠けるんだ……こんなノートじゃ…荒巻を捕える事は出来なかったんだ…」
254:◆d2hCxOK7H.
05月01日02時33分35秒 pfOoc2uiO
ドクオは読み終えたノートを、乱暴に床へと叩きつけた。
(#'A`)「あんのじじい……今まで騙してやがったのか…!!」
川;゚ -゚)「にわかに信じられないな……これが事実なら…とんでもない事だぞ…!?」
( ゚∀゚)「……だから俺は焦った…その結果が、今の俺だというわけだ…」
包帯を撫でながら、ジョルジュは笑った。
乾燥した笑いが、今回の事態の重大さを告げている。
( ゚∀゚)「クエストに出る前…俺は荒巻に会った……今思えば、あの時に仕留めておけばよかったんだ…」
( 'A`)「……」
( ゚∀゚)「でも出来なかったんだ……甘かった…俺が、あの人を信じたかったんだ……甘かったよ…」
川 ゚ -゚)「他の者は…?」
( ゚∀゚)「知らないさ…今初めて打ち明けた……他には誰も知らない…」
ドクオは混乱していた。
今まで自分の危機を助けてくれていた人物の裏切り、それは思った以上の傷をドクオの胸に刻んでいた。
クーもドクオと同じようだった。
その表情は冴えず、呆然としている。
( 'A`)「……伝えた方がいい…だろうな…。俺達だけじゃ荷が重すぎる…」
川 ゚ -゚)「そうだな…信じる信じないかは別として……事実として伝えた方がいいのだろうな…」
困惑した表情を浮かべる二人。
だが目には覚悟の炎が宿っており、意思の強さが滲み出ていた。
彼が敵ならば、自然に害を成す者ならば…戦わざるをえないのだから。
( ゚∀゚)「見ての通り、俺はしばらく戦線には出る事が出来ない…だからドクオ、お前に『代行』を頼みたい…」
( 'A`)「代行…?」
川 ゚ -゚)「つまり、ジョルジュが復帰するまでは…ドクオがリーダーという事か…?」
( ゚∀゚)「そうだ……ドクオ、任せられるか?」
( 'A`)「……」
川 ゚ -゚)「ドクオ…」
( 'A`)「…戻るまでだぜ…?戻ったら即、代わってもらうからな…?」
256:◆d2hCxOK7H.
05月02日00時10分41秒 b/6fwkghO
( 'A`)「……」
寒空の下、彼は煙草を吹かしていた。
初めて味わった煙草の味は複雑で、頭の中をぐちゃぐちゃに掻き混ぜていく。たまに吐き気に襲われたが、知らない間に慣れていた。
そして今は落ち着く為に、この一本に火をつけている。
(;'A`)「…ッ…げほッ、ごほッ……!!……ま、まだ…煙たいな…」
公園のベンチは冷たかったが、その冷たさが今日は心地好かった。
自然と頭がすっきりとしてくる。それがどんな物のせいかは本人すらも分かっていない。
( 'A`)「……どうしたよ、後ろから見られてもいい気はしないもんだぜ…?」
( ^ω^)「…そんなつもりはなかったんだお……ブーンも散歩の途中だお…寄り道しただけだお…」
( 'A`)「…くふッ…よく言うよ…」
堪えきれずに吹き出す。
見え見えの嘘だったからだ。
( ^ω^)「…クーから話は聞いたお……全部…包み隠さず……」
( 'A`)「…そか」
( ^ω^)「どうするつもりだお…?話だと弟者は…荒巻さんに…連れ去られたという事になるお…」
( 'A`)「ま、そういう事になるわな…」
再びポケットから煙草を取り出し、火をつける。
紫色の煙が漂い、風に流され薄れていく。
ブーンは彼の行為を咎めようとはせず、ただ隣で星を見ていた。
落ち着くまでの時間、ドクオに一番大事なものを彼は知っていた。
( 'A`)「竜撃隊を……潰す」
( ^ω^)「…お」
( 'A`)「そして…荒巻さん……いや、荒巻を…倒す」
( ^ω^)「…そうかお…」
ドクオは乱暴に煙草を消した。
地面に半分まで減った煙草を投げつけ、足で踏みつける。火種が完全に消え去り、吸い殻がその場に残る。
それが決意の証だった。
( 'A`)「…バリスタ頭首代行…ドクオの名において……荒巻を裁く…ッ!!!」
( ^ω^)「わかりましたお……ブーン達バリスタの一員は…頭首代行について行くお…絶対に…!!!」
257:◆d2hCxOK7H.
05月06日23時45分26秒 3WaCi1UXO
( 'A`)「…これで全員か?」
後日、ドクオはバリスタに所属する人間を集結させた。
ドクオ、ジョルジュ、兄者、ブーン、ツン、クーの六人。荒巻と弟者を除く全員が集まったのだ。
( ゚∀゚)「…全員だな…では話を始める。ドクオ…」
ジョルジュは先日の傷が癒えておらず、松葉杖を突きながらの出席となった。
よって話の進行を委されたのは代表であるドクオであった。
( 'A`)「では…まずは現状について話をしたいと思う。事前に配ってある資料を見てくれ」
その資料は数十枚にも及び、内容は飛竜乱獲の推移、その実行者、メンバーの概要が詳しく書かれていた。
そのメンバーリストには先日の騒動の主犯格と、彼等の指導者として『荒巻』の名が刻まれていた。
(;´_ゝ`)「これは…事実…なんだな……」
( ^ω^)「……」
ξ;゚听)ξ「実際に見ると…信じられないわね…」
川 ゚ -゚)「……」
各々が資料に目を通し、驚愕の表情を浮かべている。
それほどまでにその事実は衝撃的で、特に兄者の落胆は見ていて痛いくらいだった。
それほど荒巻の存在は大きく、影響力があったのだ。
( 'A`)「その資料の内容が全てだ、変更は無い。そして…もはや一刻の猶予も許されない状況になっているのは、火を見るより明らかだ」
川 ゚ -゚)「つまり…荒巻は竜撃隊側の人間で、今までの計画は全て漏れていた…というわけか?」
( 'A`)「…そう捉えてもらっても構わない。事実、弟者はそのせいで拉致されているのだからな」
(;´_ゝ`)「…荒巻…さん……まさかあの人が…」
( 'A`)「事実だ、受け入れろ」
ドクオの言葉は冷たく、語尾の強さは明らかな敵意を表していた。
( 'A`)「…認識を改めるんだ。荒巻は敵だ、もはや手加減をする必要は無い……見つけ次第、連行する」
更にメンバーに釘を刺す。
それは明らかな拒絶の言葉。『連行』という言葉を選んでも、その意志だけは隠しきれなかった。
258:◆d2hCxOK7H.
05月07日01時13分19秒 wrDgnW4oO
(;´_ゝ`)「『連行』か……それは…『生かして連行』って意味なのか?」
( 'A`)「……」
(;´_ゝ`)「どうなんだ…そうすると弟者の身柄は…どうなるんだよ!?」
( 'A`)「荒巻の生死は問わない、それは弟者に関しても同等だ…」
ぐいっと胸ぐらを掴まれる。そして間髪入れずに右の拳がドクオの頬に叩きつけられた。
(#)A`)「ぐはッ…!!!!」
(#´_ゝ`)「お前は…お前と言う奴はッ!!立てよ、こんなもんじゃ済まさねぇぞ!!!」
川 ゚ -゚)「兄者、やめろ!!落ち着くんだ!!」
(#´_ゝ`)「いや、勘弁ならねぇ…弟者は俺の…血を分けた兄弟だ!!それを…それを…ッ!!!」
クーの制止を振りほどき、更に拳をドクオに叩きつける。容赦無い攻撃に場は騒然とし、残った全員が兄者の仲裁に入った。
(#)A`)「…なんと言われても変更は無い!!不服なら…他の策を考えてみろよ!!」
(#´_ゝ`)「この…!!弟者は俺が助け出す!!その後に荒巻をどうにかすれば良いさ…!!」
(#)A`)「お前じゃ無理だな!!あんたの力量じゃ弟者を助け出すどころか、逆に捕えられてしまい、俺達の負担になるだけなんだよ!!それに気付けッ!!!」
売り言葉に買い言葉。
お互いを罵る声が部屋に響きわたり、その場はもはや収拾のつかない事態に見舞われていた。
それでもお互いの意見をぶつけ合い、感情を爆発させ、時には暴力に訴え、その全てを出しきろうとしている。
(#´_ゝ`)「貴様…ッ、だったら何が良策と言えるんだ!?ならば誰が、弟者を救うと言うんだッ!!?」
(#)A`)「俺が救う!!!!」
( ´_ゝ`)「……何?」
(#)A`)「弟者は俺が救う!!必ず救う!!だから…皆は、俺の指示に従ってくれ!!!!…必ず成功させる…だから!!俺を信じてくれ!!!」
(;´_ゝ`)「お前…な、何を世迷事を…!?」
(#)A`)「勝算はある!!弟者を助けだし、荒巻を連行する…それを成功させる手だてはあるんだ!!!だから…だから…ッ!!!」
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