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【新説】虹色の鱗【モンスターハンター】
21.
227:◆d2hCxOK7H.
04月02日12時14分23秒 PkeotxNgO

( ゚∀゚)「……」


バリスタ内・ジョルジュの自室

彼は自慢の名刀の手入れをしていた。無類の刀コレクターでもある彼の日課だ。様々な種類・形状の刀が所狭しと並べられており、その様子はまさに圧巻の一言に尽きる。
その中でもジョルジュはある刀を非常に大事にしていた。丹念に研ぎ、磨き、打ち粉をふるい、その切味を確認する。和紙の様な物を刀の刃のうえに落とすと、その紙は綺麗に分断され、ひらひらとその身を床へと降ろしていった。


( ゚∀゚)「『もしもの時』に使う予定のこれを今手入れしている……飾るだけの物にする気だったんだがな…」


一度も使った事の無い刀を熱心に研ぐ体とは対照的に、ジョルジュの頭の中は恐ろしい程の冷静さを保っていた。
自分は壊れている…ジョルジュにはそういう風に考える時があった。その考えが時に狂暴性を引き出し、事態を最悪の状況へと導いてしまう。それを回避する為に自らを殺し、常にニュートラルな精神で居るようになったのだ。


( ゚∀゚)「昔の話では、鬼は哭くらしい…鳴くではなく哭くんだとさ……お前もそうなのか?」


鬼の哭くとは感情を高ぶらせる事、つまり戦いに赴く際に自らを奮い起たせる為に『哭く』のだと、ジョルジュは刀に語った。これから戦いが起こるという事を、ジョルジュも理解していた。


( ゚∀゚)「正直…何が正しいとかは分からんままだ……だが」


刀を降り下ろし棚に飾られた花瓶を両断する。一瞬の動きだった。
刀身全体が青白く輝き、甲高い声をあげて『哭いた』


( ゚∀゚)「俺の為に哭いてくれるか…?俺の中の『鬼』と共に…」


刀の刃にはこう銘打たれていた。

『鬼斬破』と


229:◆d2hCxOK7H.
04月03日01時55分11秒 dIegcS+2O

ドクオ達はガノトトスの棲み家を離れ、一旦ドクオの家へと向かっていた。道のりの中で話す事は無く、ただ黙って今後の事を考える、それしか出来なかった。
ガノトトスから課せられた余りにも大きな提案に、それぞれが頭を悩ませていた。

暫くすると小さな一軒家が見えてきた。古いログハウス調の落ち着いた雰囲気と、古ぼけたアンティークのような存在感が一際目を引く建物だった。


( 'A`)「とりあえず中に入ってくれ…鍵は開けてあるから」

(;^ω^)「ドクオ…い、いつこんな立派な家を買ったんだお?まさか姉は一級建築士の…?」

(;'A`)「何意味の分からない事言ってんだよ…いいから早く中に入れよ」


中には一通りの家具は揃っており、人が生活していく分には十分過ぎるものだったが、そこにクーは違和感を感じていた。


川 ゚ -゚)「なんと言うか…生活感の無い部屋だな…」

ξ゚听)ξ「ええ…必要な物はあるけど、必要以上の物は一切置かれていない…男の人の部屋ってこういうものなのかしら?」

川 ゚ -゚)「唯一生活感のある物が干してある寝袋だなんてな…なんとも皮肉なものだな」


そんな話をしながら、四人は部屋の真ん中に置かれてある椅子に腰をかけた。対になるようにと買っておいたテーブルの上には赤い林檎があり、そこにだけ色彩が宿っていた。


( ^ω^)「あとは弟者の帰還を待つだけだお…そしたらこれからの事を話すお」

( 'A`)「もちろんそのつもりだったんだが…あまりにも遅すぎる……」


弟者はドクオに「三時には戻る」と言っていた。
現在の時刻は五時、こちらへ向かってきた形跡も無く、どこで何をしているのかも分からなかった。生真面目な弟者にしては珍しい行動だった。


( ^ω^)「…お腹空いたお…」


230:◆d2hCxOK7H.
04月03日18時57分55秒 dIegcS+2O

ブーンはふと窓の外を覗き込んだ。街から少し南方にある山岳地帯、その岩場から細長い煙のようなものが見え隠れしている。光の加減か、火薬の種類の違いか…その煙はどこと無く赤く見えた。


( ^ω^)「あれは…火事なのかお?」

(;'A`)「…!!あ、あの色は……」

ξ;゚听)ξ「赤色という事は…まずいわね、早く行かないとッ!!」

(;^ω^)「え、ええ!?一体なんの話なんだお?」

川 ゚ -゚)「実は弟者には発煙筒を持たせていたんだ…青色なら集合、黄色なら援護求む、赤色なら…」

(;'A`)「…もう事は終わったって事だ…!!」


すぐさま武器を持ち、四人は発煙筒の焚かれている方向へと駆け出した。言いようのない焦りを胸に抱き、最悪の可能性を頭の中から排除する。そうならない事をただ祈りながら目的地へと向かう。


(;'A`)「弟者ぁ…ッ!!」

(;^ω^)「お、おお…」

ξ゚听)ξ「…遅かった…のね…」


赤い煙幕の晴れない岩地では数人のハンターが横たわっており、中には致命傷を負った者もいたが、すでに息を引き取っている様子だった。
大きな剣が岩盤に突き刺さっている。それが弟者の剣だと分かるまで、それほど時間はかからなかった。

だが肝心の弟者の姿はどこにも見当たらなかった。他の遺体の下敷になっているかも知れないと、ブーンとドクオは顔をしかめながら遺体をどけていった。しかし、そこにも姿は無かった。


(;'A`)「どうなっているんだ…?なんで弟者がいない…!!」

( ^ω^)「この剣は間違い無く弟者の物…ここに居たのは確かなのに…」


(;'A`)「……!?…」


(;^ω^)「ど、どうしたんだおドクオ…?」

(;'A`)「こいつぁ臭ぇ…ゲロ以下の臭いがプンプンしやがる……」


ドクオはある破片を手にし、そう呟く。

もう、煙は晴れていた。


231:◆d2hCxOK7H.
04月03日19時26分47秒 dIegcS+2O

(´<_`;)(…ど、どこだここは…?前が…見えない……)


「…ではこいつはどうするのだ?流石にいつまでも隠しておく訳にもいかないからな…」

「その件…関…ては……を通せばも………」


(´<_`;)(誰だ……くそッ、聞き取りにくい…)


「しかし可哀想な奴だよ…俺達に反抗しようとするからこうなるんだ…よッ!!!」


(´<_`;)(……ッ…ぐぁッ!!!こ、こいつ…俺の腹を蹴った…のか…?)


「これでこちらは交渉の手段を得たんだクマー、交換条件ってのも悪くないクマー」


「それはそうだがょぅ、大丈夫なのかょぅあんた……ロサレルョゥ?」

「…奴らにそれ程の使い手はいない……注意するとすればジョルジュ、クー、ドクオの三人……」


(´<_`;)(……!?)


「クーは双剣使い…接近を許さなければなんとかなる相手だ……ジョルジュは大剣使い…振りは大きいが隙は無い、攻めるなら中距離からの牽制からだな……ドクオは…はっきり言って未知数だ…だから戦いを長引かせると不利になる。やるなら速攻が一番効果的だろう」


(´<_`;)(こいつ…バリスタの人間を熟知している…?何故ここまで…)


「囲んでガンランスを放てば問題無く始末できる…それまでこいつは利用させてもらおう…」

「もし歯向かってきた場合は…どうするクマー?」

「…殺れ」


(´<_`;)(こ、こいつは…本当にバリスタの人間なのか…違うのか?いや、違う…断じてバリスタの人間ではない…!!!!)


「…了解した。あと…」

「…なんだ?」

「…こっち見るな」


234:◆d2hCxOK7H.
04月05日20時02分37秒 98A9EN4YO

(;´_ゝ`)「な…弟者が行方不明…!?」

( 'A`)「ああ…山岳地帯をくまなく探したが…姿はなかった」

(#´_ゝ`)「だから勝手な行動はするなとあれほど…あの馬鹿野郎ッ!!」

( 'A`)「…すまない、弟者を一人で行かせたのは俺だ……怒りは俺に向けてくれ…」

(;´_ゝ`)「……あの馬鹿…」


ドクオ達は日が暮れるまで弟者の姿を探し続けた。しかし弟者は帰ってこず、バリスタに戻ったのは彼の愛刀だけであった。兄者が弟者の為に鍛えた、この世でたった一本の剣だった。
ヒビが入れば補修し、切味が無くなれば限界まで研いだ剣だけが、今の弟者の存在を示す物だった。


(;´_ゝ`)「…この刀……犯人は飛竜を襲っている奴らと同一だな…」


兄者は剣を見つめ、冷静にそう判断した。材質が骨で出来ている刀は柔軟性がある反面、すぐに傷付いてしまうといった欠点もある。だかそこに、犯人の手掛りがあるとはドクオ達は思いもしなかった。


( ´_ゝ`)「おそらく仲間がやられた後、一人で奮戦したんだな…でも囲まれて……こいつの餌食になってしまった…か」


よく見ると刀の腹に何か細かい物が無数に埋め込まれている。歪な形をしたそれは骨に食い込み、更にはその奥にある弟者の体にもめり込んだのだろう。返り血が刀身にかかり、うっすらと赤みがさしていた。


(;´_ゝ`)「この傷痕はガンランス…しかも試作型じゃない……兵器として、正式に採用されたものだろう……」

( 'A`)「ガンランス……ギコの使っていたあの武器か?」

( ´_ゝ`)「ああ…あれとは基本的な構造は一緒だ…が、威力・精密さ・再装填の早さが段違いだろうな…」

(;'A`)「これほどの武器を作れる鍛冶屋が…この島にいるのかよッ!?」

(;´_ゝ`)「いや、いない…これはうちの親方でも無理だろう……数人の職人と豊富な資源、それらが無いと不可能だ…このガンランスの量産なんて…」

(;'A`)「…それだけの条件が揃ってるのは…大陸だけなんだぜ?」

(;´_ゝ`)「…ああ…」


235:◆d2hCxOK7H.
04月05日23時58分21秒 98A9EN4YO

ξ゚听)ξ「…ただいま」

(;^ω^)「さ、流石の俺でも岩山を命綱無しは怖いお……」


( 'A`)「ブーン…どうだった?手掛りは見付かったか?」


川 ゚ -゚)「……」


クーはその問掛けに、ただ首を横に振って答えた。弟者の剣を見つけて三時間、流石の三人にも疲労の色が見えはじめていた。


( 'A`)「そうか…お前らは休憩してろよ、今度は俺が探してくるよ」

川 ゚ -゚)「なら私も行こう…今一人でいるのは危険すぎる」


そういうと二人は武器とカンテラを手に持ち、夜の闇へと消えていった。夜は視界が悪い為、ツンは二人に発光弾を持たせた。用途は発煙筒と同じ、緊急時に場所を知らせる為である。


ξ゚听)ξ「……」

( ´_ゝ`)「……」


部屋の中に、居心地の悪い静寂が広がった。
疲れや心労もあったが、彼等の胸中は別の事を考えはじめていた。疲れているから頭が冴えるという不自然な覚醒状態に戸惑いながら、ブーンは静かにその口を開けた。


(;^ω^)「これは…拉致って可能性は考えられないのかお?」

( ´_ゝ`)「…それは俺も考えていた。俺が相手なら、あの場で弟者を殺しているはずだ……だが、奴らはそれを実行していない」

ξ゚听)ξ「なぜ…二人はそう言い切れるのかしら?」


( ^ω^)「…『遺体』なんだお…あれだけ乱雑に遺体が置かれていたのに、ご丁寧に弟者だけが見当たらない……むしろ最期まで抵抗していたのなら、必ず血痕かそれに繋がる何かが残っていないとおかしいんだお…」

( ´_ゝ`)「付け加えると、現場に弟者の剣が残されていたのが…違和感を感じるんだ。なんで犯人はわざわざ弟者の剣を岩肌に突き刺したのか……まるで生かしているというメッセージのようにも受け取れる……あくまで想像の範疇を超えないけどな…」


236:◆d2hCxOK7H.
04月06日00時41分50秒 hdxoFCsoO

( ゚∀゚)「……」

/,'3 「行ってしまうのか?お主の生き方は賢いとは言い切れんぞ?」

( ゚∀゚)「…馬鹿でいる方が性に合ってるんだよ……変に意地を張り続けるよりはずっとマシな選択さ…」


二人は街外れの公園からバリスタの灯りを見下ろしていた。他の建物は既に消灯されており、その一部分だけが別の空間のように思えるほど明るかった。
ジョルジュは肩に荷物と大振りの刀を提げ、街の様子に目を細めていた。


( ゚∀゚)「…荒巻さん、弟者の事なんだが…」

/,'3 「仕方あるまい…あやつがそれを選んだ……それが弟者の運命なら、それは仕方のない事なんじゃ…」


( ゚∀゚)「……」


/,'3 「本気でやるんじゃな……手強い相手になるぞ?」

( ゚∀゚)「覚悟は出来た…俺は自分の道を行く……あいつらは俺の仲間…だった奴らだ……信頼できるな…」

/,'3 「その為に友人を裏切って…でもか?」


( ゚∀゚)「…それが俺の人生なら…仕方のない事だ」


最後にそう告げると、ジョルジュは身を翻し歩き始めた。それは明確な「ドクオ達との別れ」を意味していた。
彼は誓った。修羅の道を行くと。
その言葉を胸に刻み、ジョルジュは独り、荒れ果てた道を行くのだった。


/,'3 「…次に会う時は…全てが終わっている頃だろうな…」


ジョルジュの後ろ姿を確認してから、荒巻もまた身を翻し街へと消えていった。

そうして、二人がバリスタに戻ってくる事は、二度となかった。



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