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【新説】虹色の鱗【モンスターハンター】
18.
190:◆d2hCxOK7H.
02月13日00時43分49秒 hFaYufV8O

(;'A`)「でかいな…しかし倒すッ!!」


ドクオは猛然とリーダー格のブルファンゴに向かって走っていった。
それとほぼ同時に、ブルファンゴも突進を仕掛ける。巨体を揺さぶり、砂煙をあげてドクオを標的に定める。


(;'A`)「…ッ!!」


すれちがいざまにブルファンゴの首元に一撃をくわえる。だがブルファンゴの勢いは止まらず、巨体に触れただけでドクオは吹き飛ばされてしまった。


(;'A`)「くぁ…!!こ、こいつ…怖くないのか!?」


川 ゚ -゚)「ドクオ!!気を付けろ、切り返しがくるぞ!!」


( 'A`)「…ッ!!」


空中を舞うクーの声を聞き、再びブルファンゴに目をやる。ブルファンゴは凄まじい勢いでブレーキをかけ、方向転換を試みる。勢いを殺す事無くそのまま向きを変え、再び突進を仕掛けてきた。


(;'A`)「速い…ッ畜生!!」


反応が間に合わず、素早く盾を構える。しかしそれで衝撃は防げない。
巨躯に押し出される形でドクオは吹き飛び、地面に足を着けながらも何間か後退していく。彼自身ブルファンゴとの戦闘は初めてでは無い。しかし今対峙しているブルファンゴは今までの常識を覆すパワーとスピードを備えており、同種族の枠を超えた存在になっていた。

息つく暇もなく攻撃を仕掛けてくるブルファンゴ相手に、ドクオは手詰まり寸前だった。
まず隙が無い動き、そしてブルファンゴ特有の高い耐久力がドクオの邪魔をする。
大技は駆使出来ない。チクチクと攻撃を当て、向こうの体力が尽きるのを待つ、いわゆる消耗戦へと持ち込もうとする。


(;'A`)「しかしそれだと俺の体力がもつかどうか…賭けは嫌いなんだがな…」


しかもドクオは万全の状態では無い。
先程のギコとの戦いで出来た傷がひびいているのか、動きにキレが無い。どちらの体力が先に尽きるか、それは目で見ても明らかだった。


191:◆d2hCxOK7H.
02月13日01時02分26秒 a+LJO1UcO

(#^ω^)「猪の分際で盾つく気かおwwwwwうはwwwwwおkwwwwwwwwww」


ブーンはハンマーを得、いつもの様にトランス状態に変化していた。こうなった時のブーンは普段とは違う一面を見せる。好戦的になり、身のこなしも格段と冴えわたっていく。
ツンの協力もあり、ブルファンゴの群れはあらかた片付き始めていた。


ξ ゚听)ξ「クー!!こっちは任せてくれても構わないわ…今はドクオのサポートにあたってちょうだいッ!!」


(#^ω^)「そうだお!!四人で早く街に帰るんだおwwwww」


(´<_`;)「四人……?」


武器を持たない一名を除き、二人はそうクーに言い放つ。実際二人は頼もしく、勇敢にブルファンゴの相手を続けている。このコンビになら任せても問題は無い。
考えは一瞬でまとまった。


川 ゚ -゚)「…把握した。後は頼んだぞ!!」


剣を納め、クーはドクオの元へと駆け出した。四人で帰る、その約束を果たす為に。


(#^ω^)「お前らのあいてはこっちだおwwwwwこっち見るなwwwwwwwwww」


回転しながらハンマーを振り回し、遠心力を充分に加えた一撃を放つ。頭部に当てる事でブルファンゴの意識を一時的に刈り取り、その隙にツンが数発の弾丸を放っていく。そして再びブーンのハンマーによる追い撃ちにより、相手を殲滅する。
計算されて綿密な連携攻撃により、ブルファンゴは着実にその数を減らしていく。


ξ ゚听)ξ「いけるわ…ブーン、離れてッ!!」


(#^ω^)「言われなくても離れる準備は万端だおッ!!」


ツンが散弾を放った。
細かい粒子が流星のように降り注ぎ、一部に固まったブルファンゴをまとめて蜂の巣にしていく。中にはその一撃で息絶えるものもいた。


(´<_`;)「ちょ…お、俺の避難は済んでいないぞ…あ痛ッ!!!」


二人は次々と敵を殲滅していった。


192:◆d2hCxOK7H.
02月17日07時42分57秒 BSNyi4HaO

ブーン達のいる集団から少し離れた場所で、ドクオは危険な状態に陥っていた。
ブルファンゴの素早い行動の前に、成す術が無くなってしまったのだ。
普段のドクオならば問題無く戦える相手だが、ギコとの戦いで負った傷が予想以上に酷く、逃げまわっている間にいくつかの傷口が開き、赤い体液が吹き出る。


(;'A`)「ちッ!!……だぶって見えてきた…こりゃヤヴァイな…!!」


大量の血液を失った代償だろうか、目が霞み、意識が朦朧としてくる。そんな自分に喝を入れ、なおも隙を伺いドクオは逃げた。
ここで意識が途切れれば、間違い無く殺される。


(;'A`)「……くッ!!」


川 ゚ -゚)「今度は私が相手だ、可愛い猪さん」


一瞬でブルファンゴに詰め寄り、力を込めた一撃を放つ。ドクオは体勢を整え、追撃に向かおうとするクーの姿を確かに見た。ブルファンゴは予想外の方向からの痛覚に戸惑っていたが、瞬時に我を取り戻し高々と垉吼する。


(;'A`)「クー…助かった……」


これ以上は逃げ切れない、そう覚悟していたドクオは安堵の表情を浮かべていた。
そして目の前の状況に見入ってしまっていた。


人の三倍はあろう巨大な猪を相手に、まるで舞を踊る要領でその周りを旋回するクー。その動きは以前見たものより更に洗練され、無駄がなかった。
斬りつける毎にその動きは複雑化され、少し離れているドクオでさえ視覚に取り入れる事で精一杯だった。これが才能なのだろう。

それ以上にドクオは思う。
ただ美しいと、単純に思ってしまった。

緑の大地、生い茂る木々、その風景に覆い被さるように花を散らす深紅の血、その非日常的な風景の中を両手に剣を構え踊る。
表情にはあまり見せないが、彼女は少し笑い、ドクオに目配せしながら戦い続ける。

( 'A`)「さて、良いとこだけもらうとするかな…!!」


197:◆d2hCxOK7H.
02月26日20時20分38秒 YjcxigTpO

少しの合間だった。

ドクオは自らのカバンから研ぎ石を取り出し、素早く手にした剣の刃に当てがう。そして水筒から水を少量垂らし、刀身を十分に湿らしてから刃こぼれした部分を研磨する。
慣れた一連の作業は、あっという間に終了した。

再び鋭さを取り戻した刃には水の影響だろうか、微かに電流が流れているように見える。


( 'A`)「いくぞ…相棒!!」


覚悟を決め、今まで温存していた力を振り絞り、ドクオは踊りの続くステージへと自ら進み出た。


川 ゚ -゚)「ドクオ!!左右に揺さぶって攻撃するんだ!!」


( 'A`)「左右に…?」


注意力の欠如しかけていたドクオは、クーに言われて初めて状況を把握する事ができた。
何故「左右に揺さぶって」と言ったのか、それは相手のブルファンゴを見れば一目瞭然だった。


( 'A`)「なるほどな…そういう事なら!!」


ドクオは力を振り絞り、体を左右に揺らしながらブルファンゴに接近していく。その素早い動きにブルファンゴは対応しきれず、その場で頭を細かく動かした。

右目を負傷している。

そのせいで視野が狭くなり、機敏に動く獲物に照準を合わせる事が出来なくなっているのだ。
片目を失っているか失っていないか、この差は驚く程に大きい。


(;'A`)「でああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…ぁあぁッ!!!」


体から出せるだけの力をもって、剣を頭上に突き出す。
激しく火花を散らす刃をブルファンゴの頭上に向け、垂直に振り降ろす。


……




大した音も無かった。
あるのは微かに刄から漏れ出す電流の音と、頭に剣を食い込ませうめくブルファンゴの断末魔だけだった。
サンダーベインはブルファンゴの左目少し上を見事に捉えていた。頭蓋骨を叩き割り、肉を裂き、刃が脳に達しても尚、剣をその奥側へと押し込んでいく。

時折剣から漏れ出す電流のせいか、硬直した四肢を一瞬だけ動かしたりしたが、それ以上の動きを見せようとはしなかった。

そして森にそびえる肉の塊は次第に角度を変えていき、そのまま草の絨毯へと意識を倒壊させた。

もう荒々しい命の息吹は聴こえてこなかった。


198:◆d2hCxOK7H.
02月27日01時00分17秒 gPmV4rYyO

(;'A`)「ハァ…ハァ……ゼヒ…」


もう足音は聞こえなくなった。

ブルファンゴは顔にサンダーベインを突き刺したまま、生き絶えていた。小刻に体を痙攣させ、それが電撃によるものだと理解するのに、それほど時間はかからなかった。
血糊がべったり付いた剣の柄を掴み、引き抜こうとしてみた。するとサンダーベインは根元から折れてしまい、もはや武器としての命を散らしている事を証明した。


(;'A`)「…使い方が荒かったからな……今までありがとう…」


そう労いの言葉を口にすると、ドクオは握っていた柄の部分をぽんっと放り投げる。その剣の片割れはゆっくりと静かに放物線を描きながら、相方の待つ肉の塊の上に落ちてきた。


川 ゚ -゚)「…これで全て片付いた…か?」


( 'A`)「ブーン達も無事だ…心配するには及ばない連中だからな…」


そういうと二人は、互いの顔を見合わせたまま、笑った。笑うしかなかった。
この二人にとって、笑うという行為はそれほど重要な行為だった。死線を乗り越え、再び同じ時間を共有する事がどれほど大切か、二人はいつの間にか学んでいたのだ。


(*^ω^)「ドクオwwwwwこっちも終わったおwwwwwwww」


(´<_`;)「何もしてない…俺は…何もしてない…」


ξ ゚听)ξ「まったく…私が偶然通りかからなければ、どうなってたか…」


そんな言葉を吐きながら、ブーン、弟者、ツンの三人はドクオのもとへと駆け寄った。


( 'A`)「よく言うぜ…実は後ろからちゃんとついて来たクセによ…」


川 ゚ -゚)「ああ、私も見ていたからな…だから」


ξ*゚听)ξ「ち、ちょっとクー!!それ以上言ったら承知しないわよッ!?」


そこにはいつもと変わらない日常が、ひょっこりと顔を覗かせていた。
ただ違うのは、周りにおびただしい数のブルファンゴの遺体があるだけで、それ以外は何も変わらなかった。

変わらぬ日々を守っていきたい、ドクオは今日初めてその気持ちを知ったのだ。



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