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【新説】虹色の鱗【モンスターハンター】
16.
173:◆d2hCxOK7H.
02月01日19時50分34秒 7Aq2yI7QO

(;^ω^)「お…あの二人はどこに行ったんだお?奥地へ入っていったのなら危険だお…」


(´<_` )「その点は心配いらないだろう、あの二人はバリスタの中でも実力者だ…問題はここにギコがいたって事だな」


ドクオとクーが奥地へ入ってから、もう20分程が経過しようとしていた。ブーンと弟者はギコによって殺害されたイャンクックの遺体を埋葬し、二人の捜索にのりだした。
森は信じられないくらいに穏やかで、それが二人の神経を緩めていく。まるで嵐の前の静けさ、この言葉が当てはまるだろう。

微かに獣の気配がするが、それもさほど気にはならなかった。


( ^ω^)「早く二人と合流した方が賢明だお、今の状態を飛竜にでも襲われたら……」


(´<_` )「ああ……!!待て、何かいるぞッ!?」


(;^ω^)「…気付いてたお……もう囲まれてしまったお…」


(´<_` )「素早いな…統率もとれている…」


木々の重なる奥、僅かに光が差し込む隙間から、二人を狙う影の正体が姿を現す。
巨大な体をどっしりと揺らしながらこちらを伺い、隙あらば襲いかからんとする猪…いや、もはや猪というレベルではなく、森の主という名詞のほうがしっくりくるであろうか。

姿を見せたのはブルファンゴ、森の中を縦横無尽に駆け回り、危害を加えんとする者を軽く一蹴する森の守り手である。
恐ろしいまでに気性が荒く、熟練のハンターでさえ手を出したがらない厄介なモンスターである。しかし、良質な毛皮を求める者は命を賭けて勝負を挑み、それ以外の者はわざと群生地を避けるようになった。


(;^ω^)「し…しまったお……まさかブルファンゴだったとは…」


(´<_`;)「まずいぞ…二匹とか三匹のレベルじゃないぞ?」


(;^ω^)「こ、これはもうだめかもわからんね」


174:◆d2hCxOK7H.
02月05日02時23分02秒 OJWcgnZBO

硝煙と血の匂いが混ざりあい、鼻孔を刺激する。木々にはえぐり取られたような傷痕があり、そこから新しい高温の命が新たに生まれていた。その高温の命は老木の皮を焦がしつつ、意思を持ったかのように勢力を伸ばしていく。
火の粉が舞い散る森の中、二人の戦いは降着状態へと陥っていた。


(,,゚Д゚)「時間をくっちまったか…今の内に装填しておかなければ…」


( 'A`)「タフだな…ランス使いの体力には底は無いのかよ…マンドクセ」


お互いに距離を置き、次の手を伺う。
ギコは先程まで空になっていた銃身に薬夾を詰め込み、一気に撃鉄を起こす。
ドクオも岩陰に隠れて自らの剣を研磨している。互いの武器が頑丈である為に、その消耗は激しいものだった。


(,,゚Д゚)「この一撃で…終わらせる…!!」


( 'A`)「…次もアイツはガンランスによる一撃を放ってくる…一撃目は避けて、二撃目に賭ける…!!」


頭の中で意見は固まり、武器を掌でギュッと引き絞る。ごたくはいらない、結果はすぐについてくるのだから。


川 ゚ -゚)「ドクオ…ギコ……やめろ、やめてくれ…」


クーの願いも悲しく、再び命を賭けた戦いが始まった。

まず動いたのはギコだった。
岩陰に隠れているドクオに向けて煙玉を放り投げる。美しい放物線を描きながら球体は、吸い込まれるように岩陰へと落ちていった。


(;'A`)「…ッ…しまっ」


気付いた時にはもう導火線が残りわずか、手遅れであった。
白い煙幕が周辺を覆いつくし、もはや自らの居場所でさえ把握する事が困難な状態だった。
ドクオは堪らずそこから抜け出す策をとった。その場にとどまっていても、ガンランスの餌食になるだけだったからだ。

しかしそれこそがギコの思う壺だった。


(,,゚Д゚)「お前ならそうすると思ってたぜゴルァ!!」


煙から抜け出した先にはガンランスを構えるギコの姿があった。まんまと焙り出されてしまったのだ。


(;'A`)「お…おおッ!?」


(,,゚Д゚)「じゃあなドクオ…安らかに眠れッ!!」


175:◆d2hCxOK7H.
02月05日07時27分56秒 p1fm5FRbO

ギコの放った散弾がドクオに襲いかかる。

撃った瞬間に炸裂し、分散された玉の威力は大した事は無かったが、まとめてくらうとダメージが蓄積されてしまう。広範囲を狙いにした弾丸の典型的な例である。
ドクオは発射される瞬間をはっきりと目撃していた。しかし視覚からの情報が体の神経を伝わる事が遅かった。不測の事態に陥ったドクオのとった策、それは「突貫」であった。


(;'A`)「とんだクオリティだよ…難儀な事にさッ!!」


一発一発の威力は大した事無いと睨んだドクオは意を決して飛び出し、銃弾をその身に受けた。手にしてた盾により被害は最小限に抑える事が出来たが、相当量の破片が肉に食い込み血しぶきをあげる。
それでも前に向かって踏み込み、痛みをもろともせず突っ走る。


(;゚Д゚)「な…なんて奴だ!!死ぬのが怖く無いのか…!?」


(;'A`)「怖くないね…今までそんな生き方しか出来なかったからな…でも…」


血が飛び散る空間で、微笑を浮かべながら勢いを殺さず前に進む。もうギコは目と鼻の先だった。


(;'A`)「気付いたんだよ…何もしないで死んでいく事の悲しさに…愚かさになッ!!!」


再び引金が引かれ、銃口からさらなる光のつぶてが飛び出す。その瞬間ドクオは空中へ飛び立ち、銃弾の着弾地点から逃れた。瞬間的な判断としとはこれ以上無い、最善の策だろう。


(;゚Д゚)「し、しま…ッ弾切れか…!?」


(;'A`)「試作品の欠点だな…必要最低限の物以外は省かれている…」


ギコの足元に着地し、腰に装着した剣に手をかける。身体中のバネを最大限にまで引き出し、見事な跳躍で斬りかかる。血朔で手が滑りそうだったが、それでも力を込め渾身の一撃を放った。

その一撃はギコの肩から腰あたりまでを捉え、同時にガンランスを破壊するまでに至った。


(;'A`)「内部の構造が複雑な物ほど耐久性は無いもんだ……悪いがそこを狙わせてもらったぜ…!!」


176:◆d2hCxOK7H.
02月05日07時49分26秒 9Xl1q3AMO

(;゚Д゚)「ガッ…!!ち、畜生…!!!」


ガンランスの砕けた破片が飛び散り、音も無く地上に落下する。正確には音はあったであろうが、砕けた衝撃音の残響にかき消された形となった。

ギコの体からは血が滴り落ち、体が草むらに沈んでいく。辛うじて膝をつき倒れる事は回避したが、それが彼の精一杯であった。彼の体を流れる戦士の血が、倒れる事を許さなかったのである。


(;'A`)「ふぅ……ハァ…ハァ…ッ!!」


ドクオの受けたダメージも相当なものだったが、ギコに比べると幾分か軽度だった為まだ動けた。しかし重傷には違いなかった。


(;゚Д゚)「…やれ、このまま生き恥を晒すくらいなら…この場で首をはねろッ!!」


(;'A`)「…だが断る」


(;゚Д゚)「なッ…貴様、同情なんぞで…」


(;'A`)「同情じゃないさ…正直俺は仕留めるつもりだ……お前の思想は危険過ぎるからな…」



川;゚ -゚)「ギコ…」


ドクオはちらりと後方に目をやった。苦虫を噛み潰した表情を浮かべ、再びギコへと目をやった。その目には悲しみと、例えようのない憎悪が渦巻いている。


( 'A`)「…うちの姫さんがあんな顔してるからな…これ以上手を出すわけにはいかない……クーに感謝するんだな…」


(;゚Д゚)「クー…何で……俺なんかを…」


( 'A`)「…こっちが聞きたいぜ…損な役回りだったよ……畜生ッ!!」


砂を噛むような気持ちでその場を後にするドクオ。
残されたのは満身創痍のギコとクーの二人だけだった。
クーは静かにギコへと近付き、目の前にあたる位置で歩みを停めた。
そして語り始めた。


177:◆d2hCxOK7H.
02月05日08時43分38秒 04JqAbaXO

川 ゚ -゚)「ギコ……」


(,,゚Д゚)「……」


川 ゚ ー゚)「確かに私は…兄に縛られていた……兄が私がハンターになるのを反対してたのも知っている…それを気に病んでいた事も知っている…」


(,,゚Д゚)「ああ、あいつはお前の事を心配していたからな…俺達は無残に死んでいった奴らを沢山見てきた……だから心配だったんだな…」


川 ゚ -゚)「それも理解のうえだ…それでも私は自分の意見を守った…」


一度呼吸を整え、再び話し始める。目に迷いは無い。


川 ゚ -゚)「私は自立したかった…兄に心配をかけないように一人前になりたかった……もう『あの人の妹』と言われたくなかった」


(,,゚Д゚)「……」


川 ゚ -゚)「良家のお嬢さんとか関係無く、一人の人間としての『クー』を見てほしかった。だから私はハンターになり、名を上げようとした……小さな対抗心だったのかも知れない…」


川 ゚ -゚)「でも…後悔はしていない。この島では私は私として生きてこれた。誰の力も借りず、生きる事が出来た……仲間も…大切な人も出来た…」


(,,゚Д゚)「…男か…?」


川 ゚ -゚)「…まだ頼りなくて無鉄砲な奴だが、私はそいつを失いたくは無い…だから私はそいつを守る……それが『私の道』だ…」


(,,゚Д゚)「そうか…もう何を言っても無駄なんだな…」


川 ゚ -゚)「ギコや兄…心配してくれた人には悪いとは思う…でも、これだけは譲れない…譲りたくない…」


数分後、クーはその場を離れた。ギコの傷は致命傷では無いらしく、徐々に回復の兆しがみられていた。
「肩を貸してもらう訳にはいかない」との申し出もあったので、手を出さない事にしたのだ。


(,,゚Д゚)「いつまでもお嬢じゃないって事か……もう妹とは呼べないな…」


悲しそうな顔だったが、どこか気分は晴れ渡っている。そんな気分だった。



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