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【新説】虹色の鱗【モンスターハンター】
1.
1:◆d2hCxOK7H.
10月01日23時53分09秒 k6ay6MhpO

黄昏の島



大陸に住む者はこの島の事をこう呼ぶ。
美しい夕日が辺りを染め、見る者に感動を与える為にその名が付いた。

しかしある日を境にその風景は、狂気へと姿を変えたのだった。


ある住人が見てはいけないモノを見てしまったのだ。

体長はゆうに10mを超え、その眼は常に獲物を探すように輝いている。

鋭い爪を獲物に食い込ませ、獰猛な牙でその身を引き裂く。


その島の住人は古来から伝わる文章により、その生物が『飛竜』と呼ばれることを知った。


以来住人はその飛竜を恐れ、山へと近付かなくなった。


しかし、それだけでは終わらなかったのである。


飛竜到来から間も無く、突如として小型の肉食竜が姿を現し始めたのだ。

被害は増え続け、時に人を襲い、時には村を襲い滅ぼした。


事態を重くみた当時の統治者は飛竜やその他の竜に対抗すべく『ギルド』を設立し、飛竜討伐に乗り出した。

報酬を払い腕自慢を集め、彼等に島を脅かす竜たちを狩るというものだった。

そのギルドに集う者達は狩る者『ハンター』と名付けられ、時に恐れられ、そして尊敬される『モンスターハンター』へと姿を変えていった。


そして月日は流れ、未だに飛竜を討伐できていないギルドに、ある青年が志願しにきていた。

彼が長年に続く飛竜との戦いに終止符をうつ者になるとは、まだ誰も知らない。


2:◆d2hCxOK7H.
10月02日00時56分50秒 1W5gfzGCO

島には船が泊まる事の出来る港がある。


一日に一回、大陸からくる貨物船だけが島民の物資補給の要となる。

しかしこの島では物資などは必要なく、むしろ目的はハンターの輸送が主であった。日に日に増えていく被害に対して島民だけでは対処しきれなくなった為、このような行為が当たり前のような繰り返されていた。

だがそのほとんでは一攫千金を目当てとしたならず者で構成されていた。



( 'A`)「ん…、いい天気になったな……嵐に巻き込まれた時はどうなるかと思ったが…」



船から降りる人の中に、その青年は居た。
背丈は低く、他のハンターと見比べれば明らかに体格が違っていた。身なりは普通の観光客のようであったが、腰に帯びた剣だけが彼がハンターであると象徴していた。

その目は空を見上げ、眩しく輝く太陽に向かって細めていた。


そんな時であった。



「た、大変だ…飛竜が!!飛竜が飛んで来るぞぉッ!!」



船乗りのあげた一言が、港に混乱を呼び込んだ。
さっきまで和やかに談笑していたハンター達は物陰に身を潜め、島民は近くの建物の中に隠れた。

それは彼も例外ではない。



(;'A`)「んだよ…着いた途端にこの始末かよ…なんなんだよこの運の悪さはッ!?」



そう言いつつ青年は大きなリュックを物陰に置き、すぐさま腰の剣を抜き取った。

そして青年は生まれて初めて飛竜を見た。

翼を広げ、誇らしげに大空を駆けるその姿はまさに『王者』とでも言うべき風格が備わっていた。


飛竜の名はリオレウス



『火竜』の名を与えられた空の帝王である。


3:◆d2hCxOK7H.
10月02日07時40分36秒 qw7wke+FO

火竜リオレウスは港の中心部に降り、二・三度羽ばたきをしてから翼をしまった。
そして辺りを見渡し、敵がいない事を確認してからゆっくりと港の中を徘徊し始めた。鼻息が大気を揺らし、その強大さを見せ付ける。


「飛竜がなんだってんだ…この野郎ッ!!」



一人の勇敢なハンターが、ランスを片手にリオレウスへと特攻を仕掛けた。
いや、勇敢ではなく無謀であった。

一撃だった。


リオレウスはハンターに気付き、素早く体勢を立て直した。そして一瞬、ハンターとは反対側に体を反転させ、その勢いのまま一回転してみせた。

ハンターの体はその凄まじい遠心力により生み出された尻尾の一撃により、数mは吹き飛ばされた。
地面に叩き付けられたハンターは体を痙攣させ、次第にその四肢を硬直させていった。

恐らく即死であろうか。


先程のハンターの特攻でリオレウスは人の存在に気付いた。
低く重い威嚇の唸り声をあげ、気配のする場所へと体当たりを仕掛けた。
その場にあった木箱に隠れていたハンター達の体がふわっと宙を舞い、ある者は海へと放り出され、ある者は壁へと激突し、痛々しい痕を残した。



(;'A`)「このままじゃ全員やられちまう…クソッ、マンドクセェッ!!!!」



青年はリオレウスの隙を見つけて、素早く足元へと潜り込んだ。そして目の前にある巨大な足に対して剣による連撃を繰り出した。
しかし手応えは無く、無情にもその刃は皮膚の手前の鱗に邪魔され、遂には鈍い音をあげて折れてしまった。



(;'A`)「か、堅い…ッ!?」


青年に気付いたリオレウスは後方へと跳び、しっかりと青年を見ていた。
口からは先程と違い、炎らしきモノが揺らめいている。


4:◆d2hCxOK7H.
10月02日08時17分03秒 ai860dH4O

青年は死を意識した。

今、目の前に居る飛竜と目が合っている。それだけの事だけで全身に寒気が走った。ハンターが『狩られる』事もある。
それを見せ付けるかの様な眼差しで青年を見据えた。



リオレウスは大きく息を吸い込み、目だけは青年からそらさなかった。そしてその巨大な口から炎の塊、火球を吐き出した。
凄まじい速度で迫りくる火球に反応しきれず、青年はその場に立ちすくみ、その全身に炎を迎えた。



(;'A`)「ぐわあぁぁぁあぁぁぁぁ…ッ!!!!」



青年は圧力に押され、まるで人形のように簡単に吹き飛ばされた。
それも束の間、リオレウスは青年に向かって突進を仕掛けた。


その鋭い牙、眼差し、爪、全てが青年に向かって突き進む。



その時

カァンという甲高い音がリオレウスの体を貫通した。リオレウスはうめき声をあげてよろめいた。
その腹からは赤い血が吹き出ていた。

何回か甲高い音が続いた後、さらに何かが大きく弾ける音がした。

細かい粒子状の物体が高速でリオレウスの頭に直撃し、血しぶきをあげる。


音が周りの建物に反響し、まるで複数の場所から攻撃しているとリオレウスに錯覚させた。

身の危険を感じたリオレウスは体を一つ揺らし、再び大空へと飛び立った。



惨劇の現場は一気に狂気の宴へと姿を変え、脅え逃げ回る群衆が一目散に港を後にした。その場に残っているのは数々の死体と、黒く焼けた服を身に付けた青年だけであった。



青年は認識した。
そして恐れた。


あれがこれから戦う敵なのだと


5:◆d2hCxOK7H.
10月02日23時20分31秒 J2y/KepKO

(;'A`)「ぅう……い、痛ぇ…」



青年は何とか生き延びていた。が、その身は既に疲弊しきっており、大陸から持ち込んだ唯一の武器『ハンターナイフ』は根元から折れてしまっていた。
青年は辺りを見渡した。
周りにあるもの全てが飛竜の力を示していた。

大陸でも飛竜の噂は聞いた事があった。
しかしその想像を超えるほどの強大さ、絶対的な力の差を思い知らされた。

青年はふと思った。



( 'A`)「そういえばあの音…何かが爆発するような音だったが、一体なんだったんだ…?」



その音とはリオレウスと対峙した時に聴いた甲高い炸裂音だった。
大陸にいた時も似たような音は聴いた事があった。あれは火薬が筒の中で弾けた音だ。



( 'A`)「しかし酷いな…この有り様は……こんな事が毎日起こっているのか…?」



青年が街を見たと同時に、街へと繋がる道から数名のハンターと思わしき人影が港の中へと入り込んだ。彼等は犠牲者の亡骸を確認し、一人一人が担いで台車のような物に載せていく。
無機質な表情から、毎日行っている行為なのだと容易に想像できた。



( ゚∀゚)「……まったく、よりにもよってリオレウスに喧嘩をふっかけるなんて…命知らずもいいとこだぜ…」



その集団のリーダー格であろう青年が小さく呟いた。その胸には一流のハンターの証である『虹色の鱗』が眩しく輝いていた。

青年は壁にもたれ、ズルズルと崩れ落ちた。
リオレウスの火球により受けたダメージが予想以上にたまっていたのである。

そして意識は途切れ、目の前に暗闇が静かに広がっていった。


6:◆d2hCxOK7H.
10月02日23時58分26秒 ai860dH4O

( 'A`)「……ここは…?」



青年が目を覚ました時には、港から少し離れた場所にあるハンターギルド『バリスタ』の中にいた。リオレウス戦で負った火傷の治療もされており、幾分痛みも和らいできた。
青年は壁に目をやった。

そこにはかつて『三戦士』と呼ばれたハンター界の英雄の肖像画が飾られていた。それぞれが自らの武器を持ち、雄々しく胸を張る姿はまさに英雄の名にふさわしいものであった。



( ゚∀゚)「ようやく気が付いたか…小僧?」



青年に声をかけたその男は間違い無く、港で犠牲者を弔う事を指示していたリーダーらしき人物だった。



( 'A`)「…ここは一体…どこなんですか…?」


( ゚∀゚)「ここは『バリスタ』…まあギルドの一つだと思ってもらえれば分かりやすいな…」



( 'A`)「ここが…ハンターギルドなんですか?」



( ゚∀゚)「そうだよ。」



男は近くに置いてあった椅子に腰をかけ、青年の問いかけに答えた。
その側には男の背丈ほどもあろうか、巨大な剣が壁に立て掛けてある。細身ながらもその迫力は他の剣を圧倒するような、魔力に近い印象を青年に与えた。
柄の部分に『神楽』と銘打たれている。



( ゚∀゚)「まったく災難だったな…港に着くなりリオレウスの手荒い歓迎にあうなんてな…」



( 'A`)「リオ…レウス…?」



( ゚∀゚)「君が見たあの飛竜の名前さ。火竜『リオレウス』……この島の森、空の王者と呼ばれている、プロハンターでも狩れないほどの大物さ……。普段は港になんか顔を出さないんだけどな。」



男は話ながら胸にしまっていた短刀を取り出し、手に持っていたリンゴを剥き始めた。



( ゚∀゚)「そういえばまだ名前を聞いてなかったな……俺はこのギルド『バリスタ』の頭を務めさせてもらっている『ジョルジュ』っていうんだ。お前はなんて名前なんだ…?」


7:◆d2hCxOK7H.
10月03日00時56分01秒 tssUAf95O

( 'A`)「ド…クオ…」



( ゚∀゚)「ドクオっていうのか…話は聞いたぜ?あのリオレウスを止めようとしたんだってな、しかもハンターナイフで…」



( 'A`)「何とかしなきゃって思っただけですよ…結局何も出来なかったし、オマケにナイフは折れちまうし……」



その言葉を聞いたジョルジュはドクオに木箱を差し出した。その木箱は頑丈な作りになっており、丁寧に鍵までついていた。
ジョルジュはポケットから小さな鍵を取り出し、木箱の鍵穴へと差し込んだ。カチリッと音が鳴り、その中身が明らかになった。

そこには眩いばかりに輝く一振りの剣が入っていた。刀身は透き通る青色に染まり、ドクオにもただの剣ではない事は理解できた。
これも柄の部分に文字が刻まれていた。だが、この剣に彫られている文字はどうやら古代文字らしく、解読は困難を要した。



( ゚∀゚)「君が目を覚ました時から、この剣が光を放ち始めたんだ……どういう事かは僕にも分からないが、もしかしたら君が来るのを待っていたのかも知れないな…」



( 'A`)「そんな事……この剣の名前とかは…あるんですか?」



( ゚∀゚)「一応な…名前はあるんだ。君もハンターを目指す者なら聞いた事があるはずだ……古より伝わりし神の一振り『オデッセイ』…」



古代神話にて、ある剣士が巨大な炎の化け物を退治する際に使用した伝説の剣である。
その刀身は常に水気を帯びており、刃はまるで薄氷のように鋭く、神々しいまでに光を放っている。



( ゚∀゚)「だがこれはハンター界の至宝だ…簡単に譲る訳にもいかない…」



( 'A`)「はい…」



( ゚∀゚)「そこでだ…君にやる気があるのなら……僕の下について一緒に狩りに行き、この剣を持つにふさわしい男になってもらいたいんだ……今、リオレウスを倒せる武器はコレしか無いかも知れないんだ…ッ!!」


10:◆d2hCxOK7H.
10月05日22時36分55秒 OPudV2w3O

ジョルジュの出した条件とはこうだった。

最近森に大量発生している怪鳥『イャンクック』の討伐、そして奥地にて発見される『虹色の鱗』を持ち帰る事だった。
『虹色の鱗』が発見される場所にはリオレウスの巣を通過しなければならず、まさに死と隣り合わせである。
しかしギルド『バリスタ』のメンバーのほとんどがこの任務をこなしており、一人前のハンターになる為には決して避けられない試練だった。



( ゚∀゚)「無理にとは言わない…だがそれが『バリスタ』の掟だ。従えないならウチには身をおく事は出来ないんだ……掟を決めた俺がそれを破る訳にはいかないからな。」



( 'A`)「あの…それは期限とかはあるんですか…?」



( ゚∀゚)「そうだな…遅くても一ヶ月だな。それ以上は見込みが無いと考えさせてもらう。」



( 'A`)「………。」



ドクオはうつむき、自分の両手を見つめた。

まだハンターを目指してから一ヶ月も経っていない彼が、飛竜の一種である『イャンクック』を狩る事、そしてリオレウスの監視をかいくぐり『虹色の鱗』を手に入れ持ち帰る事…成功率は限りなくゼロに近い。

だがドクオの決意は違った。



( 'A`)「…やります……出来るかどうかわからないけど…やってみます。」



( ゚∀゚)「そうか…厳しいとは思うが、頑張ってくれ。一ヶ月はこの施設を使ってくれても構わない。…君には期待している。」



そう言い残すとジョルジュは部屋を後にした。

ドクオはまず怪我を治すことを考えた。


ハンターになる為の第一関門
無事に成功させる事が出来るのだろうか?


ドクオのハンターになる為の日々が始まる。



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