名もない話5
なんだか嫌な予感がしていた。それは昨日まで続いていた天気予報の晴れマークが一転して雨マークに変わったからだとか、しかもその雨マークが週末まで続くからだとか、そんな表面的なものではなくて、こう腹の底からもやもやと沸き上がって来るような何とも言えない不安感に不快感。
宍戸は一階に続く階段を降りながら、無意識に腹を摩った。それから昨日の夜ご飯を思いだそうとする。
「カレーか…」
特に胃もたれするものでもないな、とまた腹を摩った。やっぱりもやもやする。
「はよー」
「あら、珍しい。あんたが休みの日にこんなに早く起きるなんて」
からかうように言われたその台詞に『悪ぃかよ』とだけ返して、目の前にコトリと置かれた皿を見遣る。
「…サラダ?」
朝に珍しいと母親の方を見ると、自然と足元の段ボールが目に入った。
「隣の佐々木さんがくれたのよ。田舎から野菜が沢山送られてきたんですって」
段ボールからのぞくキャベツにレタスにトマト。それから人参にキャベツ。見事な野菜セットだ。
「今日はサラダ記念日ね」
ゾワッとした。以前にも似たようなフレーズを聞いたことがある。いや、まさかな。
「それでは、聞いて下さい。鳳長太郎でサラダ記念日」
そういうなり首元を掴み、ベリッと顔面を引きはがす。現れたのは言葉の通り、前に悪夢を生み出した張本人。映画かアニメでしか見たことがないその光景に宍戸の口はポカンと開いたままだ。
あなたをサラダに例えよう
中華?和風?洋風?
あなたをサラダに例えよう
レタス?トマト?きゅうり?
どれでもないよ ラララン
だってあなたはあなた
どれにもなれない ラララン
だってあなたはあなた
単品でもいいけれど
レタスに巻いてペロンチョ
単品でも魅力的です
だけどトマトとペロンチョ
ラララン ラララン
トマトをかじって下さい
レタスを舐めて下さい
キュウリをくわえ
「だぁぁぁああぁ!やめろ!それ以上を言うな!」
発狂し、サラダの入ったボウル皿を勢いよくひっくり返すつもりが…指先の角度を間違えたのか、ボウル皿は上に飛んだ。それから緩い弧を描き、まるでそれが当然の様に宍戸の頭へ。サラダまみれの宍戸。
長太郎がにやりと笑った。
サラダなあなたを食べる
そう、サラダ記念日!
ラララン ラララン
いただきます!
一応完結してるけど、内容がひど過ぎてあげるのをしぶっていた話。こいつはずっと準レギュラーかもしれないww
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