キス☆キス 2 「宍戸さん!お疲れ様です!!」 長太郎は、休憩の合図が出たまさにその瞬間に、宍戸の元へ駆け寄った。 いつものボトルをしっかりと手にして。 そう、まず第一段階の『間接キス』をこなそうとしているのだ。 「はい、宍戸さんっ」 上機嫌で差し出すと、宍戸はそれを何も気にせずに手に取る。 「お、気がきくな。サンキュ」 無駄に笑顔の長太郎。その笑顔を無駄にするどいまなざしで見る跡部。 跡部は必死にインサイトをしようとしていた。 そんな周りの様子など気にするはずもない、宍戸は喉を鳴らしながらおいしそうに飲んでいく。 まだ成長し切れていないのど仏が、リズムよく動く。 その動きに促されて、喉を走る汗。 太陽の日差しが眩しいのか、目は閉じられている。 なんか、宍戸さんエロイ… 長太郎の喉が1回、大きく動いた。 「ぷはー!!やっぱ、キンキンに冷えた水はうまいな!生き返るぜ!!」 口の端からこぼれた水を拭う仕草が、これまたなんともエロイ。 そんな長太郎の目は、ボトルの飲み口に注がれる。 つ、ついに宍戸さんと間接キス!!!! 「あ、すいません。自分の分持ってくるの忘れたので、少し貰っていいですか?」 いつも失敗したときの様に、長太郎は頭をかいた。 何気なく、何気なく…そう心の中で唱えながら。 「わりぃ、全部飲んじまった」 へへっと、笑う宍戸。 まさかの人並みはずれた一気飲みに、長太郎の作戦は早くも失敗に終わった。 が、こんなところで諦める長太郎ではない。 「あ、じゃあそのボトル貸してくれませんか?それに新しく水汲んでくるついでにのんでくるので」 心がけていたように、さりげなくいい後輩を演じつつ、作戦強行に挑む。 「鳳、その心配はねぇぞ。俺様が新しいボトルを持ってきてやったからな」 そう言って、渡される新しいボトル。 ボトルの周りにつく水滴が、中の水の冷たさを表している。 「お、今日は跡部まで気が利くじゃねぇか。長太郎、せっかくだからもらっとけよ。俺はあとで自分で取りに行くから」 「……ありがとうございます」 全く思っていない言葉を、あからさまな態度で零す。 その態度に跡部は満足そうに笑った。 「よし!生き返ったし、後半の練習も頑張るか!」 そう言って、元気よく立ち上がりコートに走っていく宍戸の後姿を見て、長太郎はため息をひとつ零した。 作戦、その1、早速失敗に終わる。 続く |